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31話
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ひたすら那月が打ち明けた話に、日陽はポカンとしながら聞いていた。
那月が言った話がじんわりと浸透する。スラスラではなく少々たどたどしささえありながら那月が言った、日陽を独占したいという気持ちも智充への嫉妬も、何もかも――それらは裏を返せばとてつもない熱烈な愛告白、宣言じゃないのかと思った。日陽は思わず真っ赤になって言葉を失う。
確かに度を越した愛情表現だとも思う。普通ならそれらを聞くと引いてしまうのだろうか。日陽は素直に嬉しかった。自分でもよくわからない。那月の部活が終わるまで健気に待っていられないくせにと思う。だが嬉しいと思う。もちろん、実際に閉じ込められるのは御免だが。
「那月。謝るな。嫌いになんてなれないよ。なれるわけない」
日陽が静かに言うと、那月は濡れた目で少し怪訝そうに日陽を見てきた。嬉しい、と言えばいいのだろうか。それで伝わるだろうか。
日陽は少し困惑した。今までもつき合ってから好きだという気持ちを隠してきたことはない。なのに那月は自分の深い思いを嫌悪さえしながらこっそり抱え込んでいたように思える。
もっと……もう少し……日陽ができる範囲でしか無理ではあるが、違う面から伝えてわかってもらったほうがいいのかもしれない。
那月はやたら智充を気にしているようだった、と日陽は口を開いた。
「なぁ、那月。お前と智充は違うだろ? あいつは確かに俺の小さい頃からの幼馴染で親友だ。だから仲もいい。でも俺からしたらあいつは完全に家族みたいなものだからさ」
上手く伝わるといい、と願いながら言葉足らずかもしれない気持ちを日陽は声にする。
「どうしたってそれ以上でもそれ以下でもないよ。家族な。夫婦とかそういう家族じゃないやつ。那月が親を大事に思っているのと同じかどうかはわからないけど、俺は智充が幼馴染として大事だよ。でもそこに他の感情は今後も湧かない」
那月は目に涙を溜めたまま、黙って日陽を見ている。
「でもさ、お前は俺の友だちであって恋人だろ? も、もしかしたらその後……あの、そういう意味での家族になれたらって思うかもだけど、その、と、とりあえず恋人だろ」
恋人と言った後で浮かんだ状況をつい口にしてしまい、日陽は少し焦ったように再度恋人と口にする。聞いていた那月が少し目を見開いた。
「俺にとってずっとこれからもそばにいたいと思うのは那月だけなんだよ。幼馴染で家族みたいに育ってきた智充と俺はもしかしたらすごく距離が近く見えるかもしれない。というか実際近い。でもお前とのつき合いと一緒にするな。お前のことも中学の時からの大事な親しい友だちだと思ってたけど、今はかけがえのない大好きな存在でもあるんだ。お前は俺に嫌われたくないって言うけど、それを言うなら俺だって嫌われたくないのは那月だけ」
ちゃんと、伝えられているだろうか。伝わっているだろうか。こういう時に何でも調子よく口の回る智充が日陽は少し羨ましくなる。いつも煩いくらいだが、智充はそれでも物事の本質を見抜いて上手い言葉を、時に刺さる言葉をさらりと、いやむしろもういい、と言いたくなるくらい言ってのけるだろう。
日陽も口下手というほどではないが、今まであまり真剣に誰かと向き合ってきたこともなく、智充のように調子のりでもないので上手い言葉が見つからない。
「……ちゃんと、伝わってる? 上手く言えなくてごめんな。でも嘘は一個もないからな。今までマジあんま誰かとちゃんとつき合ってきたことないから、こんなに向き合って考えたり伝えようとしたりすんの初めてなんだよ。でもそんだけ那月のこと、思ってる、ってこと、だから」
「は……るひ」
「だからさ、そんなに不安になるなよ。そりゃつき合い始める前に冗談みたいな流れで一度寝てしまったりもしてるけどさ、でも俺、お前といい加減につき合ってるつもりないし、お前のその熱烈な感情を告げられたって引かないよ」
那月の手が少し震えながら日陽に伸びてきた。
「那月。俺、ちゃんとゆっくりお前との時間、大事にしたいと思ってんだ。焦りたくない。だからちゃんと思ってることは言え。俺も言ってるつもりだけど、もっと言うし」
「っありが、とう」
伸ばした手で日陽を引き寄せると、那月はぎゅっと日陽を抱きしめてきた。何度もありがとうと言いながら、強く強く抱きしめてきた。泣きながら少し笑ってありがとうと告げる那月を見て、日陽はようやく那月の本当に笑った顔を見たような気がした。
結局昼休みどころか気づけば五時間目の授業はずいぶん前に始まっている時間になっていた。サボってしまったわけだが、どのみち那月の目は真っ赤で腫れぼったくなっており、出るのは難しかっただろうと思われる。
そして日陽にとっては久しぶりに満足した時間だった。沢山泣きながら笑ってお礼を言ってきた那月はその後ホッとしたのか、日陽にもたれるようにして子どものように眠っていた。その呑気な寝顔を見て日陽は苦笑する。
那月のことが知れてよかったと思う。ニコニコしながらもどこか物静かに感じていたのは、こういう感情を人に見せないよう秘めていたからなのだろうかなと改めて思った。
もしかしたら困った性格なのかもしれない。だがこれが惚れた弱みというのだろうか、日陽は本当に嫌ではない。嫉妬や独占欲だって鬱陶しいと思わなかった。
「独占欲か……那月にならされてもいいかもな」
眠っている相手に聞かせるつもりではないためボソリと呟いた。
「されたいの? 俺も日陽にされたいかな。したいよりもされたい」
すると那月から言葉が返ってきて、日陽は少し驚きながら那月を見た。那月は少し照れたように笑っている。その笑顔を見るとぎゅっと抱きめたくなった。
「って、起きてたのかよ?」
「ずっとじゃないよ。今、目が覚めた」
「じゃあ起きたって言えよ。俺てっきり寝てると思ってた」
「いちいち意識戻った瞬間言うの? 変な独占欲だね」
「まあ、独占欲じゃねーしな、これは」
「じゃあ、何?」
「照れ隠しだよ!」
少しムッとして言い返すと、那月がまた嬉しそうに笑ってきた。日陽も笑う。
「お前の嬉しそうな顔、好きだよ」
「俺も日陽が嬉しそうな顔、好き。でも俺に向いていない日陽の嬉しそうな顔は切ないんだ。ね、前にも言ったように俺、結構わがままだよ。あとさらっとしてないよ」
那月の言葉に、日陽は以前屋上で智充と三人で一人っ子がどうこうといった話をしていた時のことが浮かんだ。そして笑う。
「うん、そうだな。あの時はそうか? って思ったけど。うん、お前はわがままだよ」
「そんな俺でも嫌わないの?」
「当たり前だろ。言ってくれ。教えてくれないで俺をいたぶるみたいな、ひたすらセックスばっかよりそっちのが嬉しい」
「……ごめんね」
笑って言う日陽に対し、那月が落ち込んだ顔をしてきた。
「何が」
「日陽が嫌だって言ってもずっとしてばかりで。……してたら気持ちが楽になる気がしたんだ」
「……で、なった?」
俯き加減で言う那月に日陽が静かに聞くと首を振ってきた。
「なってない。で、さっきみたいな結果になった。日陽が日陽でよかった。そんな日陽が大好きでよかった。そんでそんな日陽と両思いでほんと、よかった」
お互い微笑み合うと、静かにそっとキスした。
那月が言った話がじんわりと浸透する。スラスラではなく少々たどたどしささえありながら那月が言った、日陽を独占したいという気持ちも智充への嫉妬も、何もかも――それらは裏を返せばとてつもない熱烈な愛告白、宣言じゃないのかと思った。日陽は思わず真っ赤になって言葉を失う。
確かに度を越した愛情表現だとも思う。普通ならそれらを聞くと引いてしまうのだろうか。日陽は素直に嬉しかった。自分でもよくわからない。那月の部活が終わるまで健気に待っていられないくせにと思う。だが嬉しいと思う。もちろん、実際に閉じ込められるのは御免だが。
「那月。謝るな。嫌いになんてなれないよ。なれるわけない」
日陽が静かに言うと、那月は濡れた目で少し怪訝そうに日陽を見てきた。嬉しい、と言えばいいのだろうか。それで伝わるだろうか。
日陽は少し困惑した。今までもつき合ってから好きだという気持ちを隠してきたことはない。なのに那月は自分の深い思いを嫌悪さえしながらこっそり抱え込んでいたように思える。
もっと……もう少し……日陽ができる範囲でしか無理ではあるが、違う面から伝えてわかってもらったほうがいいのかもしれない。
那月はやたら智充を気にしているようだった、と日陽は口を開いた。
「なぁ、那月。お前と智充は違うだろ? あいつは確かに俺の小さい頃からの幼馴染で親友だ。だから仲もいい。でも俺からしたらあいつは完全に家族みたいなものだからさ」
上手く伝わるといい、と願いながら言葉足らずかもしれない気持ちを日陽は声にする。
「どうしたってそれ以上でもそれ以下でもないよ。家族な。夫婦とかそういう家族じゃないやつ。那月が親を大事に思っているのと同じかどうかはわからないけど、俺は智充が幼馴染として大事だよ。でもそこに他の感情は今後も湧かない」
那月は目に涙を溜めたまま、黙って日陽を見ている。
「でもさ、お前は俺の友だちであって恋人だろ? も、もしかしたらその後……あの、そういう意味での家族になれたらって思うかもだけど、その、と、とりあえず恋人だろ」
恋人と言った後で浮かんだ状況をつい口にしてしまい、日陽は少し焦ったように再度恋人と口にする。聞いていた那月が少し目を見開いた。
「俺にとってずっとこれからもそばにいたいと思うのは那月だけなんだよ。幼馴染で家族みたいに育ってきた智充と俺はもしかしたらすごく距離が近く見えるかもしれない。というか実際近い。でもお前とのつき合いと一緒にするな。お前のことも中学の時からの大事な親しい友だちだと思ってたけど、今はかけがえのない大好きな存在でもあるんだ。お前は俺に嫌われたくないって言うけど、それを言うなら俺だって嫌われたくないのは那月だけ」
ちゃんと、伝えられているだろうか。伝わっているだろうか。こういう時に何でも調子よく口の回る智充が日陽は少し羨ましくなる。いつも煩いくらいだが、智充はそれでも物事の本質を見抜いて上手い言葉を、時に刺さる言葉をさらりと、いやむしろもういい、と言いたくなるくらい言ってのけるだろう。
日陽も口下手というほどではないが、今まであまり真剣に誰かと向き合ってきたこともなく、智充のように調子のりでもないので上手い言葉が見つからない。
「……ちゃんと、伝わってる? 上手く言えなくてごめんな。でも嘘は一個もないからな。今までマジあんま誰かとちゃんとつき合ってきたことないから、こんなに向き合って考えたり伝えようとしたりすんの初めてなんだよ。でもそんだけ那月のこと、思ってる、ってこと、だから」
「は……るひ」
「だからさ、そんなに不安になるなよ。そりゃつき合い始める前に冗談みたいな流れで一度寝てしまったりもしてるけどさ、でも俺、お前といい加減につき合ってるつもりないし、お前のその熱烈な感情を告げられたって引かないよ」
那月の手が少し震えながら日陽に伸びてきた。
「那月。俺、ちゃんとゆっくりお前との時間、大事にしたいと思ってんだ。焦りたくない。だからちゃんと思ってることは言え。俺も言ってるつもりだけど、もっと言うし」
「っありが、とう」
伸ばした手で日陽を引き寄せると、那月はぎゅっと日陽を抱きしめてきた。何度もありがとうと言いながら、強く強く抱きしめてきた。泣きながら少し笑ってありがとうと告げる那月を見て、日陽はようやく那月の本当に笑った顔を見たような気がした。
結局昼休みどころか気づけば五時間目の授業はずいぶん前に始まっている時間になっていた。サボってしまったわけだが、どのみち那月の目は真っ赤で腫れぼったくなっており、出るのは難しかっただろうと思われる。
そして日陽にとっては久しぶりに満足した時間だった。沢山泣きながら笑ってお礼を言ってきた那月はその後ホッとしたのか、日陽にもたれるようにして子どものように眠っていた。その呑気な寝顔を見て日陽は苦笑する。
那月のことが知れてよかったと思う。ニコニコしながらもどこか物静かに感じていたのは、こういう感情を人に見せないよう秘めていたからなのだろうかなと改めて思った。
もしかしたら困った性格なのかもしれない。だがこれが惚れた弱みというのだろうか、日陽は本当に嫌ではない。嫉妬や独占欲だって鬱陶しいと思わなかった。
「独占欲か……那月にならされてもいいかもな」
眠っている相手に聞かせるつもりではないためボソリと呟いた。
「されたいの? 俺も日陽にされたいかな。したいよりもされたい」
すると那月から言葉が返ってきて、日陽は少し驚きながら那月を見た。那月は少し照れたように笑っている。その笑顔を見るとぎゅっと抱きめたくなった。
「って、起きてたのかよ?」
「ずっとじゃないよ。今、目が覚めた」
「じゃあ起きたって言えよ。俺てっきり寝てると思ってた」
「いちいち意識戻った瞬間言うの? 変な独占欲だね」
「まあ、独占欲じゃねーしな、これは」
「じゃあ、何?」
「照れ隠しだよ!」
少しムッとして言い返すと、那月がまた嬉しそうに笑ってきた。日陽も笑う。
「お前の嬉しそうな顔、好きだよ」
「俺も日陽が嬉しそうな顔、好き。でも俺に向いていない日陽の嬉しそうな顔は切ないんだ。ね、前にも言ったように俺、結構わがままだよ。あとさらっとしてないよ」
那月の言葉に、日陽は以前屋上で智充と三人で一人っ子がどうこうといった話をしていた時のことが浮かんだ。そして笑う。
「うん、そうだな。あの時はそうか? って思ったけど。うん、お前はわがままだよ」
「そんな俺でも嫌わないの?」
「当たり前だろ。言ってくれ。教えてくれないで俺をいたぶるみたいな、ひたすらセックスばっかよりそっちのが嬉しい」
「……ごめんね」
笑って言う日陽に対し、那月が落ち込んだ顔をしてきた。
「何が」
「日陽が嫌だって言ってもずっとしてばかりで。……してたら気持ちが楽になる気がしたんだ」
「……で、なった?」
俯き加減で言う那月に日陽が静かに聞くと首を振ってきた。
「なってない。で、さっきみたいな結果になった。日陽が日陽でよかった。そんな日陽が大好きでよかった。そんでそんな日陽と両思いでほんと、よかった」
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