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9話
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衛二に告げてから実際日曜日になるまで、生智は待ち遠しくてならなかった。半面、妙に緊張もしていた。
デートなんて今まで何度もしている。だというのにどうしていいかわからなくなっていた。
前日『明日、覚えてる?』と衛二に送っても中々返信どころか既読にもならなかったのもヤキモキした。
わかってる筈だ、先生は元々こういう人だ。冷たいとかじゃなくて、真面目で淡々として無頓着。
そんな風に言い聞かせ、生智が自分を慰めていると通知が来た。これほど返信を心待ちにしたことはないし、見るのに手が震えたこともない。
『覚えている』
だが返信はただそれだけだった。
わかってる筈だ、と生智は一瞬固まった後でまた言い聞かせた。むしろ大人らしくないぞんざいな感じが、打ち解けている風に感じられないかと何とか思えるようになってきたところで生智はさらに返信した。
『予定とか何時とか決めてねーけど、先生どうしたい?』
『一人でゆっくりしたい』
今度はすぐに返ってきたが内容が最悪だ。
『それはナシ!』
『お前はどうしたいんだ』
嫌々かもしれないが、聞いてきてくれたことに生智は気分が高揚する。
『先生の家は?』
『却下』
はぇえ。
どうにも警戒されている気がした。
『フツーにぶらぶらショップ回ってカフェとかでいいんじゃねーの』
『疲れる』
『じゃあカラオケ?』
『歌、知らない』
え、なにこの人。
生智は微妙な顔で画面を見る。何だかんだ言って生智が面倒がるか断る方向に持っていこうとしているんじゃないだろうかと思えてきた。だが絶対にさせないし、面倒なんて思わない。
『先生ウザいよ。じゃあボーリング。もうこれ決定だから。明日こないだ言ってた駅前の小っちゃい噴水のとこに十一時。ボケて学校最寄駅とか行くんじゃねーぞ』
学校近くだと何もないというのもあるが、衛二が嫌がるだろうと思った。多分なるべく知り合いに会う可能性は避けたほうがいいだろうとあえて繁華街を選んだ。
またなにか文句を言ってくるだろうかと思ったら今度は『わかった』とだけ返ってくる。
少しだけ調子が狂う。断ろうとしていた訳でなく、本当に疲れるし歌を知らないということだったのだろうか。
とりあえず明日の待ち合わせも決まり、生智はホッとしつつもじわじわと嬉しさが込み上げてきた。いつもならデートでも当日適当に服を選んでいたというのに、前日の今からそわそわと選び出す。
できればあまり子どもっぽいと思われたくなかった。だからと言って妙に大人ぶった恰好もボーリングへ行くというのにおかしいだろう。
馬鹿みたいに悩んだ挙句選んだ服は、翌日になってまた「待て、これよりあっちのほうが……」と考える羽目になった。
それでも遅刻だけは絶対にしないと結構早めに起きていたので、バタバタすることなく余裕で待ち合わせ場所へ着いた。
待っている間は、ボーリングしか決めていないがとりあえず先に昼食をとってもいいな、ボーリングの後はちょっとだけブラブラするの付き合ってくれないかななどと考えて過ごした。
「悪い、待たせたか?」
考えていると不意に声がして生智はハッとなる。慌てて声がしたほうを見ると、衛二が困ったような顔をして側にいた。
「あ、違う。俺、すげー早く着きすぎちゃってさ。だってほら、まだ十一時になってねーよ。大丈夫」
「そうか、よかった」
困ったような表情が少し和らぐ。それだけで生智は凄く嬉しくなったし衛二のことを改めて好きだと思えた。
「つか先生、私服も真面目だよな」
地味な色のシャツにカーディガンを羽織り、ズボンはボーリングをするからだろう、履きなれてなさそうなジーンズといったいで立ちを見て、生智は笑った。
「変、か?」
「いや、先生らしーよ」
「……外では先生、やめないか?」
歩きながら衛二が微妙な顔をしてくる。
「え、むしろいいのかよ」
名前で呼んでいいなどと、グッと関係性が近くなる気がして生智はソワソワと衛二を見た。
「外でだけな」
「りょーかい。んじゃ衛二」
「……正条。お前には年上に対しての遠慮とか何かそういうのはないのか」
速攻で名前を呼ぶと、とてつもなく微妙な顔をされた。
「は? やめろっつったのそっちだろ。名前? じゃあ英賀谷って呼んだ方がよかった?」
「さん、を付けようと思わなかったのか?」
「えー。衛二さんとか、なんかさ、だってエロいだろ」
「ちょっと言ってることがわからないんだが」
「教える身なんだからわかれよ」
「それも何を言っているのかわからない」
気づけばそんな言い合いをしていたが、生智としては楽しかった。
「つかさ、とりあえずボーリングする前に飯食おうよ」
「動く前に食べるのか?」
「だって既に腹減ったし、この時間だとボーリングやってる最中さらにすげー腹減るだろ」
「お前が決めたんだろ、時間」
「なんとなくいい感じの時間だなって思ったの。いーだろ別に。動いたら吐くってほど食わなきゃいいし、動いてまた腹減ったらまた食えばいーし」
こういうとまた呆れられるかなと思いながらも口にすると、何故か笑われた。
「うわ、衛二ってわりと簡単に笑うんだ……」
「お前さっきからよくわからないことばかり言ってくるな? 別に俺も普通に笑う」
「でも笑うスイッチ謎なんだけど。今別に俺、笑えるよーなこと言ってなくない?」
「別にそんなことどうでもいいだろ。ほら、食事に行くならどこへ行く? 行きたいところ、あるのか?」
せっかく笑ったというのに、衛二はまた淡々とした表情に戻ってしまった。
……でも、これから一か月の間に沢山見られるかもだし。
生智こそ笑みを浮かべつつ「そんじゃさー」と歩きながら行きたい店を説明し出した。
デートなんて今まで何度もしている。だというのにどうしていいかわからなくなっていた。
前日『明日、覚えてる?』と衛二に送っても中々返信どころか既読にもならなかったのもヤキモキした。
わかってる筈だ、先生は元々こういう人だ。冷たいとかじゃなくて、真面目で淡々として無頓着。
そんな風に言い聞かせ、生智が自分を慰めていると通知が来た。これほど返信を心待ちにしたことはないし、見るのに手が震えたこともない。
『覚えている』
だが返信はただそれだけだった。
わかってる筈だ、と生智は一瞬固まった後でまた言い聞かせた。むしろ大人らしくないぞんざいな感じが、打ち解けている風に感じられないかと何とか思えるようになってきたところで生智はさらに返信した。
『予定とか何時とか決めてねーけど、先生どうしたい?』
『一人でゆっくりしたい』
今度はすぐに返ってきたが内容が最悪だ。
『それはナシ!』
『お前はどうしたいんだ』
嫌々かもしれないが、聞いてきてくれたことに生智は気分が高揚する。
『先生の家は?』
『却下』
はぇえ。
どうにも警戒されている気がした。
『フツーにぶらぶらショップ回ってカフェとかでいいんじゃねーの』
『疲れる』
『じゃあカラオケ?』
『歌、知らない』
え、なにこの人。
生智は微妙な顔で画面を見る。何だかんだ言って生智が面倒がるか断る方向に持っていこうとしているんじゃないだろうかと思えてきた。だが絶対にさせないし、面倒なんて思わない。
『先生ウザいよ。じゃあボーリング。もうこれ決定だから。明日こないだ言ってた駅前の小っちゃい噴水のとこに十一時。ボケて学校最寄駅とか行くんじゃねーぞ』
学校近くだと何もないというのもあるが、衛二が嫌がるだろうと思った。多分なるべく知り合いに会う可能性は避けたほうがいいだろうとあえて繁華街を選んだ。
またなにか文句を言ってくるだろうかと思ったら今度は『わかった』とだけ返ってくる。
少しだけ調子が狂う。断ろうとしていた訳でなく、本当に疲れるし歌を知らないということだったのだろうか。
とりあえず明日の待ち合わせも決まり、生智はホッとしつつもじわじわと嬉しさが込み上げてきた。いつもならデートでも当日適当に服を選んでいたというのに、前日の今からそわそわと選び出す。
できればあまり子どもっぽいと思われたくなかった。だからと言って妙に大人ぶった恰好もボーリングへ行くというのにおかしいだろう。
馬鹿みたいに悩んだ挙句選んだ服は、翌日になってまた「待て、これよりあっちのほうが……」と考える羽目になった。
それでも遅刻だけは絶対にしないと結構早めに起きていたので、バタバタすることなく余裕で待ち合わせ場所へ着いた。
待っている間は、ボーリングしか決めていないがとりあえず先に昼食をとってもいいな、ボーリングの後はちょっとだけブラブラするの付き合ってくれないかななどと考えて過ごした。
「悪い、待たせたか?」
考えていると不意に声がして生智はハッとなる。慌てて声がしたほうを見ると、衛二が困ったような顔をして側にいた。
「あ、違う。俺、すげー早く着きすぎちゃってさ。だってほら、まだ十一時になってねーよ。大丈夫」
「そうか、よかった」
困ったような表情が少し和らぐ。それだけで生智は凄く嬉しくなったし衛二のことを改めて好きだと思えた。
「つか先生、私服も真面目だよな」
地味な色のシャツにカーディガンを羽織り、ズボンはボーリングをするからだろう、履きなれてなさそうなジーンズといったいで立ちを見て、生智は笑った。
「変、か?」
「いや、先生らしーよ」
「……外では先生、やめないか?」
歩きながら衛二が微妙な顔をしてくる。
「え、むしろいいのかよ」
名前で呼んでいいなどと、グッと関係性が近くなる気がして生智はソワソワと衛二を見た。
「外でだけな」
「りょーかい。んじゃ衛二」
「……正条。お前には年上に対しての遠慮とか何かそういうのはないのか」
速攻で名前を呼ぶと、とてつもなく微妙な顔をされた。
「は? やめろっつったのそっちだろ。名前? じゃあ英賀谷って呼んだ方がよかった?」
「さん、を付けようと思わなかったのか?」
「えー。衛二さんとか、なんかさ、だってエロいだろ」
「ちょっと言ってることがわからないんだが」
「教える身なんだからわかれよ」
「それも何を言っているのかわからない」
気づけばそんな言い合いをしていたが、生智としては楽しかった。
「つかさ、とりあえずボーリングする前に飯食おうよ」
「動く前に食べるのか?」
「だって既に腹減ったし、この時間だとボーリングやってる最中さらにすげー腹減るだろ」
「お前が決めたんだろ、時間」
「なんとなくいい感じの時間だなって思ったの。いーだろ別に。動いたら吐くってほど食わなきゃいいし、動いてまた腹減ったらまた食えばいーし」
こういうとまた呆れられるかなと思いながらも口にすると、何故か笑われた。
「うわ、衛二ってわりと簡単に笑うんだ……」
「お前さっきからよくわからないことばかり言ってくるな? 別に俺も普通に笑う」
「でも笑うスイッチ謎なんだけど。今別に俺、笑えるよーなこと言ってなくない?」
「別にそんなことどうでもいいだろ。ほら、食事に行くならどこへ行く? 行きたいところ、あるのか?」
せっかく笑ったというのに、衛二はまた淡々とした表情に戻ってしまった。
……でも、これから一か月の間に沢山見られるかもだし。
生智こそ笑みを浮かべつつ「そんじゃさー」と歩きながら行きたい店を説明し出した。
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