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16話 ※
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気持ちをぶつけられ、軽率にも自分も好きになった。ただやはりどうしても教師と生徒という立場は男同士という以上に衛二の中で立ちはだかった。
結局付き合えないと告げた。生智も受け入れてくれた。
自分で言ったくせに、しかしいざ元の状態に戻ると生智が過ごす学生生活を見るのは思ってた以上に複雑だった。
もちろん、楽しそうに過ごしているのは衛二としても教師としても嬉しい。ただ、あの中に自分がもしいれば、ただただ異質な存在なのだと実感する。そして生智が他の生徒と無邪気にふざけているのを見かけたりするとどこかイライラとする気持ちもあった。
……これは嫉妬だろうか。情けないな、俺は。
どうしていいかわからない感情を持て余し、衛二はそれが表に漏れないよう、ことさら気をつけた。
「おい、英賀谷先生。またなんか悩んでんのか?」
だが基一にはバレる。
「別に悩んで……」
「まあ、そういう時は美味いもん食って、飲んで、だって。今日予定ある? ねーだろ? 飲みに行くぜ」
「……俺はいいけど……そんなに俺とばかり行って、奥さん怒らないのか?」
「むしろ何で怒んだよ。お前に嫉妬でもすんのか」
嫉妬。
またふと生智のことを思い出し、衛二は苦笑した。
「そんな訳あるか。でも奥さんとの時間を俺が奪う形にはなるだろ」
「んなので怒るようなむしろかわいい嫁じゃねーよアイツ……まあ遊んでばっかだと怖えけどな、鬼嫁だから」
気楽に笑う基一に、衛二は気持ちが少し軽くなった。そのせいもあるのだろうか。いつもの居酒屋で、酒に強くないのであまり飲まないようにしていた衛二は気づけば度を超していた。もちろん他の人にすれば大した量ではないのだろうが、衛二としては飲み過ぎだった。無性に飲みたい気分だったのもあり、むしろ基一に「おい、お前飲み過ぎじゃねえの」と止められる。
「そんなこと、ない」
「あるっちゅーの。大丈夫なのか、英賀谷」
「まぁ、うん……。俺がちょっと、情けなくて馬鹿なだけだ……」
「んだよそれ。お前が馬鹿だったら俺どーなんの」
「森永は……俺からしたら普段どうかと思いつつも、賢いと、思うよ……」
ぼんやりとして息苦しいため、ため息を吐きながら言うと基一もため息を吐いてきた。
「やっぱ今日のお前は変。とりあえず送ってくから帰ろうぜ」
「……すまないな」
「気にすんな。その代わり今度俺が奥さんによって命の危機にさらされることあったら助けてくれ」
「……」
翌日、起きた時は死にそうだったが、最近抱えていたモヤモヤとした気持ちに行くまでの余裕すらない分、よかったのかもしれない。
いや、やはりよくないな、軽く死ぬ。
這うようにして起き上がり、腹に何も入れる余裕もなく、薬だけ飲んだ。
気力と意地だけで午前中は乗り切った。昼になってマシになってきた。食欲も一応普通に近いところまで戻ってきた。放課後にはようやく何とかいつもの体調に近いところまできた。
廊下を歩いていると基一に捕まる。いつものように気安く首に腕を絡めてくるが、昨日迷惑をかけてしまったのもあり、むしろ礼を述べた。
基一が立ち去った後、今日は仕事を切り上げてなるべく早く帰るかと思っていると腕を引かれた。驚いて見れば生智がいる。しかもどこか怒っているような様子で無言のまま衛二の腕をつかみ歩き出す。
いくら驚いていてもいつもならすぐに体勢や態勢を整え、腕を振り払うなり注意するなりしていただろう。だが体調が万全でないのもあり、つい気づけば空き教室に連れ込まれていた。
廊下で何やら話し込む訳にもいかないため、こういう場所に連れてこられること自体には特に文句はなかったが、そもそも卒業まではただの先生と生徒でとお願いしたはずだっただけに衛二は訝しげに生智を見た。
「正条、何のつもりだ」
「森永と何の話してたんだよ……」
「え?」
「さっき……」
先ほどのやりとりを見られていたのだとようやく衛二は気づいた。説明するにも原因が原因だけに言いにくい。それでつい言葉を濁すと、生智に押し倒された。
一体何を、とそれでもまだ思っていたが、いくらなんでもキスをされれば気づいた。止めろと言っても聞かない生智は、どう見てもいつもの生智ではない。
ネクタイで縛られた手を固定された。それでも驚いて生智を見れば顔を逸らしてくるため、説得すればどうにかなるだろうかと思った。考えが甘かった。
生智は話を聞こうともせず、無理やり衛二を犯してきた。どこでやり方を知ったのか知らないが、生智は一応慣らしてはきた。だが衛二も男とは、ましてや受け入れる側など初めてなのだ。当然、激痛が走った。
だが大声など上げられない。かといって手は縛られたままなので口を塞ぐこともできない。しかも手は机の脚に繋がれていて、変に動けば大きな音が鳴る。
痛みに少し意識が飛びそうになりつつも、必死になって声や動作を抑えた。そして生智を見れば、犯しているのは生智だというのに今にも泣きそうな顔をしていた。
途端、衛二は抵抗する気すらなくなった。生智を子ども扱いしておきながら、ちっとも優しい配慮などできていなかった。自分の感覚や気持ちを押しつけていただけだったと気づく。
凄く好きだと生智は言ってくれた。衛二も好きだ。だが大人の事情を押しつけた。大人なら当然当たり前だと思うようなことを生智にも押しつけた。
以前生智と話していた会話を思い出す。
「なんでだよ。大体好きな気持ちは大人も子どもも変わらないだろ」
「変わるよ」
「は?」
「変わる。違うんだ。残念ながらね」
大人になればなるほどただ好きというだけで無責任な言動を取ることができなくなる。その反面、まだ未成年の生智は本当なら「好き」という感情だけで動きたいだろう。
偉そうに「変わる」と言っておきながら、その変わる前であろう生智への配慮などできていなかった自分を実感する。
わかっているはずの自分ですら、不安になり複雑で落ち着かなかった。生智はどれほど落ち着かなかっただろう。だというのに自分はそんな配慮すらできずに自分のことしか考えてなかった、と思った。
「ぅ、う」
小さな唸り声が聞こえてきた。生智の動きが止まる。
恐らく達したのであろうと衛二が思っていると生智が一瞬唖然とした表情をした後に慌てたように衛二の中から自身を引き抜いた。その衝撃につい油断していた衛二は「ふ、ぐ」と小さく声を漏らす。
「っご、ごめ、ごめ、なさ……」
どうやら怒りや様々な感情に身を任せていた様子の生智が少し冷静になったらしいと衛二はゆっくり体を起こそうとした。だがまだ手を繋がれていることを思い出す。
「……正条、とりあえず俺の手、外してくれ……」
妙に声を殺していたせいか、囁くような声しか出なかったが告げると、生智が急いで外してくる。いつもの澄ましたような生智の綺麗な顔が蒼白になっていた。
外して貰うと、とりあえず起き上がりながら少し強張ったようになっている腕を衛二はゆっくりと動かす。そして複雑な気持ちになりながら乱された服装を整えていく。体のあちらこちらが悲鳴を上げていた。
幸いというのだろうか、痛みのせいで自分のものは勃起するどころかずっと萎えたままだったし、尻はコンドームのおかげで後始末をしなければならないほどではない上に使われたクリーム程度では下着をつけられない状態ではなかった。
「俺……、先生……ごめ……」
「正条、とりあえずちゃんと服、着ろ。間抜けなことになってるぞ……。あと今にもゴム、落ちそうになってる。落ちたら災難だろ。先にそれをどうにかしろ」
言われてようやく思い出したのか、生智は慌ててごそごそと処理をし出した。
改めて向かい合うと、生智はまだ蒼白で今にも泣きそうな顔をしている。
「ごめん、先生……」
「正条、その謝罪は受け取る。確かに何があっても暴力は許し難いものだしお前はしてはいけないことをした」
「は、い……」
「でもな、俺はお前を嫌いにはならないしなれない。むしろ俺も悪かったって思ってる。大人の振りして、なんの配慮もできていなかった」
衛二が続けると、生智はポカンとした顔で衛二を見てきた。
だいたい、しようと思えばきっと多分、もっと本気で抵抗できただろうし、こんなことになる前にどうにかできたかもしれない。
自分の中で生智が自分に触れることを受け入れたがっていた自分もいるのかもしれない。それが油断となった気もする。とはいえそれはさすがに教師という立場からは言えない。
「……たまに……本当にたまになら、携帯でのやりとり、してもいいかもしれないって思う」
「えっ」
「でも先生と生徒という関係でだけどな」
衛二が少し笑いかけると、ようやく生智の白い顔色が少し普通になってきた。
結局付き合えないと告げた。生智も受け入れてくれた。
自分で言ったくせに、しかしいざ元の状態に戻ると生智が過ごす学生生活を見るのは思ってた以上に複雑だった。
もちろん、楽しそうに過ごしているのは衛二としても教師としても嬉しい。ただ、あの中に自分がもしいれば、ただただ異質な存在なのだと実感する。そして生智が他の生徒と無邪気にふざけているのを見かけたりするとどこかイライラとする気持ちもあった。
……これは嫉妬だろうか。情けないな、俺は。
どうしていいかわからない感情を持て余し、衛二はそれが表に漏れないよう、ことさら気をつけた。
「おい、英賀谷先生。またなんか悩んでんのか?」
だが基一にはバレる。
「別に悩んで……」
「まあ、そういう時は美味いもん食って、飲んで、だって。今日予定ある? ねーだろ? 飲みに行くぜ」
「……俺はいいけど……そんなに俺とばかり行って、奥さん怒らないのか?」
「むしろ何で怒んだよ。お前に嫉妬でもすんのか」
嫉妬。
またふと生智のことを思い出し、衛二は苦笑した。
「そんな訳あるか。でも奥さんとの時間を俺が奪う形にはなるだろ」
「んなので怒るようなむしろかわいい嫁じゃねーよアイツ……まあ遊んでばっかだと怖えけどな、鬼嫁だから」
気楽に笑う基一に、衛二は気持ちが少し軽くなった。そのせいもあるのだろうか。いつもの居酒屋で、酒に強くないのであまり飲まないようにしていた衛二は気づけば度を超していた。もちろん他の人にすれば大した量ではないのだろうが、衛二としては飲み過ぎだった。無性に飲みたい気分だったのもあり、むしろ基一に「おい、お前飲み過ぎじゃねえの」と止められる。
「そんなこと、ない」
「あるっちゅーの。大丈夫なのか、英賀谷」
「まぁ、うん……。俺がちょっと、情けなくて馬鹿なだけだ……」
「んだよそれ。お前が馬鹿だったら俺どーなんの」
「森永は……俺からしたら普段どうかと思いつつも、賢いと、思うよ……」
ぼんやりとして息苦しいため、ため息を吐きながら言うと基一もため息を吐いてきた。
「やっぱ今日のお前は変。とりあえず送ってくから帰ろうぜ」
「……すまないな」
「気にすんな。その代わり今度俺が奥さんによって命の危機にさらされることあったら助けてくれ」
「……」
翌日、起きた時は死にそうだったが、最近抱えていたモヤモヤとした気持ちに行くまでの余裕すらない分、よかったのかもしれない。
いや、やはりよくないな、軽く死ぬ。
這うようにして起き上がり、腹に何も入れる余裕もなく、薬だけ飲んだ。
気力と意地だけで午前中は乗り切った。昼になってマシになってきた。食欲も一応普通に近いところまで戻ってきた。放課後にはようやく何とかいつもの体調に近いところまできた。
廊下を歩いていると基一に捕まる。いつものように気安く首に腕を絡めてくるが、昨日迷惑をかけてしまったのもあり、むしろ礼を述べた。
基一が立ち去った後、今日は仕事を切り上げてなるべく早く帰るかと思っていると腕を引かれた。驚いて見れば生智がいる。しかもどこか怒っているような様子で無言のまま衛二の腕をつかみ歩き出す。
いくら驚いていてもいつもならすぐに体勢や態勢を整え、腕を振り払うなり注意するなりしていただろう。だが体調が万全でないのもあり、つい気づけば空き教室に連れ込まれていた。
廊下で何やら話し込む訳にもいかないため、こういう場所に連れてこられること自体には特に文句はなかったが、そもそも卒業まではただの先生と生徒でとお願いしたはずだっただけに衛二は訝しげに生智を見た。
「正条、何のつもりだ」
「森永と何の話してたんだよ……」
「え?」
「さっき……」
先ほどのやりとりを見られていたのだとようやく衛二は気づいた。説明するにも原因が原因だけに言いにくい。それでつい言葉を濁すと、生智に押し倒された。
一体何を、とそれでもまだ思っていたが、いくらなんでもキスをされれば気づいた。止めろと言っても聞かない生智は、どう見てもいつもの生智ではない。
ネクタイで縛られた手を固定された。それでも驚いて生智を見れば顔を逸らしてくるため、説得すればどうにかなるだろうかと思った。考えが甘かった。
生智は話を聞こうともせず、無理やり衛二を犯してきた。どこでやり方を知ったのか知らないが、生智は一応慣らしてはきた。だが衛二も男とは、ましてや受け入れる側など初めてなのだ。当然、激痛が走った。
だが大声など上げられない。かといって手は縛られたままなので口を塞ぐこともできない。しかも手は机の脚に繋がれていて、変に動けば大きな音が鳴る。
痛みに少し意識が飛びそうになりつつも、必死になって声や動作を抑えた。そして生智を見れば、犯しているのは生智だというのに今にも泣きそうな顔をしていた。
途端、衛二は抵抗する気すらなくなった。生智を子ども扱いしておきながら、ちっとも優しい配慮などできていなかった。自分の感覚や気持ちを押しつけていただけだったと気づく。
凄く好きだと生智は言ってくれた。衛二も好きだ。だが大人の事情を押しつけた。大人なら当然当たり前だと思うようなことを生智にも押しつけた。
以前生智と話していた会話を思い出す。
「なんでだよ。大体好きな気持ちは大人も子どもも変わらないだろ」
「変わるよ」
「は?」
「変わる。違うんだ。残念ながらね」
大人になればなるほどただ好きというだけで無責任な言動を取ることができなくなる。その反面、まだ未成年の生智は本当なら「好き」という感情だけで動きたいだろう。
偉そうに「変わる」と言っておきながら、その変わる前であろう生智への配慮などできていなかった自分を実感する。
わかっているはずの自分ですら、不安になり複雑で落ち着かなかった。生智はどれほど落ち着かなかっただろう。だというのに自分はそんな配慮すらできずに自分のことしか考えてなかった、と思った。
「ぅ、う」
小さな唸り声が聞こえてきた。生智の動きが止まる。
恐らく達したのであろうと衛二が思っていると生智が一瞬唖然とした表情をした後に慌てたように衛二の中から自身を引き抜いた。その衝撃につい油断していた衛二は「ふ、ぐ」と小さく声を漏らす。
「っご、ごめ、ごめ、なさ……」
どうやら怒りや様々な感情に身を任せていた様子の生智が少し冷静になったらしいと衛二はゆっくり体を起こそうとした。だがまだ手を繋がれていることを思い出す。
「……正条、とりあえず俺の手、外してくれ……」
妙に声を殺していたせいか、囁くような声しか出なかったが告げると、生智が急いで外してくる。いつもの澄ましたような生智の綺麗な顔が蒼白になっていた。
外して貰うと、とりあえず起き上がりながら少し強張ったようになっている腕を衛二はゆっくりと動かす。そして複雑な気持ちになりながら乱された服装を整えていく。体のあちらこちらが悲鳴を上げていた。
幸いというのだろうか、痛みのせいで自分のものは勃起するどころかずっと萎えたままだったし、尻はコンドームのおかげで後始末をしなければならないほどではない上に使われたクリーム程度では下着をつけられない状態ではなかった。
「俺……、先生……ごめ……」
「正条、とりあえずちゃんと服、着ろ。間抜けなことになってるぞ……。あと今にもゴム、落ちそうになってる。落ちたら災難だろ。先にそれをどうにかしろ」
言われてようやく思い出したのか、生智は慌ててごそごそと処理をし出した。
改めて向かい合うと、生智はまだ蒼白で今にも泣きそうな顔をしている。
「ごめん、先生……」
「正条、その謝罪は受け取る。確かに何があっても暴力は許し難いものだしお前はしてはいけないことをした」
「は、い……」
「でもな、俺はお前を嫌いにはならないしなれない。むしろ俺も悪かったって思ってる。大人の振りして、なんの配慮もできていなかった」
衛二が続けると、生智はポカンとした顔で衛二を見てきた。
だいたい、しようと思えばきっと多分、もっと本気で抵抗できただろうし、こんなことになる前にどうにかできたかもしれない。
自分の中で生智が自分に触れることを受け入れたがっていた自分もいるのかもしれない。それが油断となった気もする。とはいえそれはさすがに教師という立場からは言えない。
「……たまに……本当にたまになら、携帯でのやりとり、してもいいかもしれないって思う」
「えっ」
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