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今朝は目を覚ました時からすずを見ていない。せっかくの休日の朝にゆっくりすずと遊べなかったのを寿也は残念に思いながら掃除したり洗濯したりしていた。
猫は気まぐれらしいから、ベランダからするりと出てどこかへ散歩しに行っているのかもしれない。すずとの出会いを思えば勝手に出かけることについ心配してしまうが、だからといって家に縛りつけるのもかわいそうな気がしてしまう。そもそも寿也も日中は学校だったりアルバイトだったりでいないことも多い。だったらすずも誰か友だちを作ったりしたほうが楽しいだろうと思って部屋側の窓に工事不要であるスチールパネルタイプのキャットドアを取り付けている。シンプルな作りなので簡単に取り付けられた。商品レビューを見ていると猫がその出入り口を中々把握せず、使ってくれるのに時間がかかったというレビューがいくつかあった。しかしどうやらすずはとても賢いようだ。つけた途端に理解して出入りしてくれた。
すずのいない部屋は妙に静かで寿也は寂しく感じる。ついこの間まではこれが当たり前だったというのになとそして苦笑した。とりあえずいつもすずが愛用しているクッションを抱き、すずの匂いを嗅ぐ代わりにクッションの匂いを嗅いでおいた。
少しゆっくりとした後、寿也は支度してアルバイト先であるコンビニエンスストアへ向かった。駅近くにある店なので波はあるものの忙しい時は結構忙しくなる。
店にはすでに今日寿也が一緒に仕事をする相手が出勤していた。最近入った新人だ。寿也と年齢が近そうに思える。口数は少ないもののいい子だ。仕事を覚えるのも早かった。最初はまるで警戒するかのように誰とも仕事絡みでの最低限のこと以外全く話さなかったが、それを見かねて寿也が何度も話しかけていたらようやく少しずつではあるが打ち解けてくれた。今では店の中で一番仲良くなれたかもしれない。
反応が悪くてもつい話しかけてしまうのは多分彼の名前のせいかもしれない。浅見 鈴(あさみ すず)という名前を名札で知った時は即、自分が飼っている猫のすずが浮かんでしまった。そのせいもあって放っておけない気持ちになったのかもしれない。
最近では一緒に食事にも行くようになった。とはいえ相変わらず口数は多くない。耳には鈴のついたピアスをしているわりに髪は染めていないのか真っ黒だ。もしくはあえて真っ黒に染めているのかもしれない。とにかく少し不思議な雰囲気を感じる青年だった。
「浅見くん、今日はうちに来ない?」
慣れてくれるようになってから一緒に飯をと誘えば大抵断らずに頷いてくれる。いつもは外へ食べに行っていたが、たまには家でゆっくり食べるのもいいかもしれないと思ってそう声をかけてみた。家なら酒も心置きなく寛いで飲めるだろう。酔って眠くなればそのまま寝てもいい。
鈴は少し戸惑ったような表情を見せてきたが、こくりと頷いてきた。
自宅へ着くと「とりあえず適当に座ってよ」と寿也は促した。鈴はまた戸惑いつつも目に入ったクッションに座る。名前が被るからだろう、いつもすずが愛用しているクッションに座る鈴が思わず猫のすずに被ってしまい、寿也は少し笑った。それに気づいた鈴が怪訝そうに首を傾げている。
鈴は寿也よりも背が高い。手足も長くすらりとしていてスタイルもいい。そんな青年を見て猫に被るなどと、どれだけ自分は猫厨になってしまったのかと苦笑せざるを得ない。
そういえばまだ年齢すら聞いていなかった。年は近いだろうなとは思っているが、同じ歳なのか上なのかも知らない。もしくは下という可能性だってなくはないが、本当にわからない。
「浅見くんって何歳?」
職場で買ってきた缶ビールやつまみ、弁当などを用意しながら聞けば「とし……? に……」と何か言いかけて慌てて口を閉じた。
「に?」
に、ということは二十いくつ、ということだろうか。それともハタチになったけれども言い間違えて「に」と出てしまい慌てて一旦口を閉じたといったところだろうか。さすがに「二百」ではないだろう。普通に成人していると思い込んで飲酒していたので、とりあえず十代だと言われなくてよかったと今さらながら思う。
「二十いくつ? それともハタチ?」
「あ、はい、うん」
「んん? えっと、どっち? 二十歳?」
「うん」
「そうなんだ。じゃあ二つ下だね。マジか。俺ずっと浅見くんのこと、少し上かタメかと思ってたよ。でも言われたら納得できるんだよな」
あはは、と笑いながら寿也はつい鈴の頭を撫でていた。思わずの行動なのだが違和感なさ過ぎて、少ししてから「いやいや、何してんの俺」と気づく。だが鈴も嫌がる素振りすらなく、されるがままだった。
「何かごめん。ちっさい子にするみたいに」
「いえ」
「何だろな、浅見くんって何故かうちの子に被るんだよなあ」
「え?」
「あ、猫なんだ。飼ってて。……そいやまだ戻ってきてないな……」
「被る?」
「そう。何でだろね。雰囲気かなぁ」
「そう、ですか」
「にしてもすず、どこ行ったんだろ……それとも戻ってきてるけど浅見くんがいるから隠れてんのかな? すずー、すず、いる?」
寿也が立ち上がってすずを探してみようとしたら、鈴が慌てたように「あの!」と声をかけてきた。
「どうかした?」
「その、今日は誘ってくれて、ありがとうございました」
礼を述べると、鈴は嬉しそうに口元を緩めてきた。
猫は気まぐれらしいから、ベランダからするりと出てどこかへ散歩しに行っているのかもしれない。すずとの出会いを思えば勝手に出かけることについ心配してしまうが、だからといって家に縛りつけるのもかわいそうな気がしてしまう。そもそも寿也も日中は学校だったりアルバイトだったりでいないことも多い。だったらすずも誰か友だちを作ったりしたほうが楽しいだろうと思って部屋側の窓に工事不要であるスチールパネルタイプのキャットドアを取り付けている。シンプルな作りなので簡単に取り付けられた。商品レビューを見ていると猫がその出入り口を中々把握せず、使ってくれるのに時間がかかったというレビューがいくつかあった。しかしどうやらすずはとても賢いようだ。つけた途端に理解して出入りしてくれた。
すずのいない部屋は妙に静かで寿也は寂しく感じる。ついこの間まではこれが当たり前だったというのになとそして苦笑した。とりあえずいつもすずが愛用しているクッションを抱き、すずの匂いを嗅ぐ代わりにクッションの匂いを嗅いでおいた。
少しゆっくりとした後、寿也は支度してアルバイト先であるコンビニエンスストアへ向かった。駅近くにある店なので波はあるものの忙しい時は結構忙しくなる。
店にはすでに今日寿也が一緒に仕事をする相手が出勤していた。最近入った新人だ。寿也と年齢が近そうに思える。口数は少ないもののいい子だ。仕事を覚えるのも早かった。最初はまるで警戒するかのように誰とも仕事絡みでの最低限のこと以外全く話さなかったが、それを見かねて寿也が何度も話しかけていたらようやく少しずつではあるが打ち解けてくれた。今では店の中で一番仲良くなれたかもしれない。
反応が悪くてもつい話しかけてしまうのは多分彼の名前のせいかもしれない。浅見 鈴(あさみ すず)という名前を名札で知った時は即、自分が飼っている猫のすずが浮かんでしまった。そのせいもあって放っておけない気持ちになったのかもしれない。
最近では一緒に食事にも行くようになった。とはいえ相変わらず口数は多くない。耳には鈴のついたピアスをしているわりに髪は染めていないのか真っ黒だ。もしくはあえて真っ黒に染めているのかもしれない。とにかく少し不思議な雰囲気を感じる青年だった。
「浅見くん、今日はうちに来ない?」
慣れてくれるようになってから一緒に飯をと誘えば大抵断らずに頷いてくれる。いつもは外へ食べに行っていたが、たまには家でゆっくり食べるのもいいかもしれないと思ってそう声をかけてみた。家なら酒も心置きなく寛いで飲めるだろう。酔って眠くなればそのまま寝てもいい。
鈴は少し戸惑ったような表情を見せてきたが、こくりと頷いてきた。
自宅へ着くと「とりあえず適当に座ってよ」と寿也は促した。鈴はまた戸惑いつつも目に入ったクッションに座る。名前が被るからだろう、いつもすずが愛用しているクッションに座る鈴が思わず猫のすずに被ってしまい、寿也は少し笑った。それに気づいた鈴が怪訝そうに首を傾げている。
鈴は寿也よりも背が高い。手足も長くすらりとしていてスタイルもいい。そんな青年を見て猫に被るなどと、どれだけ自分は猫厨になってしまったのかと苦笑せざるを得ない。
そういえばまだ年齢すら聞いていなかった。年は近いだろうなとは思っているが、同じ歳なのか上なのかも知らない。もしくは下という可能性だってなくはないが、本当にわからない。
「浅見くんって何歳?」
職場で買ってきた缶ビールやつまみ、弁当などを用意しながら聞けば「とし……? に……」と何か言いかけて慌てて口を閉じた。
「に?」
に、ということは二十いくつ、ということだろうか。それともハタチになったけれども言い間違えて「に」と出てしまい慌てて一旦口を閉じたといったところだろうか。さすがに「二百」ではないだろう。普通に成人していると思い込んで飲酒していたので、とりあえず十代だと言われなくてよかったと今さらながら思う。
「二十いくつ? それともハタチ?」
「あ、はい、うん」
「んん? えっと、どっち? 二十歳?」
「うん」
「そうなんだ。じゃあ二つ下だね。マジか。俺ずっと浅見くんのこと、少し上かタメかと思ってたよ。でも言われたら納得できるんだよな」
あはは、と笑いながら寿也はつい鈴の頭を撫でていた。思わずの行動なのだが違和感なさ過ぎて、少ししてから「いやいや、何してんの俺」と気づく。だが鈴も嫌がる素振りすらなく、されるがままだった。
「何かごめん。ちっさい子にするみたいに」
「いえ」
「何だろな、浅見くんって何故かうちの子に被るんだよなあ」
「え?」
「あ、猫なんだ。飼ってて。……そいやまだ戻ってきてないな……」
「被る?」
「そう。何でだろね。雰囲気かなぁ」
「そう、ですか」
「にしてもすず、どこ行ったんだろ……それとも戻ってきてるけど浅見くんがいるから隠れてんのかな? すずー、すず、いる?」
寿也が立ち上がってすずを探してみようとしたら、鈴が慌てたように「あの!」と声をかけてきた。
「どうかした?」
「その、今日は誘ってくれて、ありがとうございました」
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