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6話
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アルバイト先で寿也が鈴と仕事をしながら話していると、奏流が客として入ってきた。
「よ。がんばってる?」
ニコニコと楽しそうな様子で、チョコレート味の棒アイスをレジへ持ってくる。
「温めますか」
「はい、……って、いやいやいやおかしいだろ。アイス温めてどうしろと。啜れってか」
突っ込んでくる奏流を流しながらバーコードを読ませたアイスの袋にテープをはり、寿也は何気に隣のレジを見ると鈴はいつの間にかそこからいなくなっていた。どうやら陳列棚で何か作業をしているようだ。あまりにさりげなく奏流の目から逃れている鈴に、寿也は苦笑した。大人しい性格のようだから騒がしそうに見える奏流が苦手なのかもしれない。
その鈴に気づいた奏流がアイスの袋を受け取ると「彼が浅見くん?」と聞いてきた。
「うん。めちゃくちゃいい子だよ」
奏流には先日一緒に宅飲みした話もしていた。
「へぇ。がんばってるんだな」
呟いた奏流の言葉に少々違和感を覚えつつも寿也は頷いた。
「うん、まだ入ってきてからそんなに経ってないけどがんばってるよ。っていうかおい。何普通に封開けてんの? アイスここで食うな」
中身を取り出して食べようとした奏流を、寿也は「出ていけ」と追い出した。
ちなみにすずはよく出かけるようになった。家に来たばかりだった頃はずっと引きこもってくれていたというのに少々寂しく思う。
「やっぱり猫は気ままなんだな。すず、最近よく外へ行くようになったんだ。ほんとどこ行ってるんだろね最近のお前は。気になるんだけど」
奏流が寿也の家に来た時に言えばすずが「ニャー」と鳴いてくる。寿也はすずを仰向けにしてその腹に顔を埋めた。ふわふわしてすずの匂いがして温かい。すずは嫌がることもなくされるがままだった。顔を上げると奏流が笑いながら起き上がったすずの頭を撫でてきた。
「猫ってそういうもんだろ。なぁすずちゃん。ていうか、外で恋人とか子ども作ってたりしてねー」
「うちの子はそんな無責任なことしない」
ムッとして奏流を睨むと「死ねばいいのに的な目で見てくんのやめて」と苦笑された。すずは頭を撫でる奏流の手を引っかくと威嚇するように「シャーッ」と鳴きながらこの場を離れていく。
「ほら、怒られた。そんなことしてないってさ。すずに謝れ」
「冗談なのに。ねえすずちゃん。……でもほんとさ、それくらい気楽に生きたほうが楽なのに……」
「何の話だよ」
最後ぼそりと呟くように言ってきた奏流に怪訝な顔を向けると笑ってきた。
「いや、俺も気楽に生きたいなあって話」
「お前はいつだって気楽そうだけど」
「えー、そっかなあ」
何故か照れたように笑う奏流に「別に褒めてないぞ」と寿也は呆れた顔を向けておいた。すずは珍しく出かけないようで、奏流から離れたところでしきりに奏流に撫でられた頭のあたりを舐めた手で撫でつけている。どうやら綺麗にしているらしいとわかり、寿也はつい笑ってしまった。その後すずは丸くなって眠ったかと思っていたが、時折ふと青い目で寿也たちを見ているようだった。
まるでそんなすずのように奏流を苦手としているらしい鈴とはちょくちょく宅飲みをしたり遊びに出かけたりするようになった。出かける先は、何か面白そうな映画の話題に鈴も興味を持っているようなら誘って一緒に行くとか、気分を変えて外で飲むとか、そんな感じだろうか。
いつものように宅飲みをしたとある翌朝、寿也が目を覚ますと鈴が初めて宅飲みをした日のように寿也の足元に丸くなって眠っていた。寿也よりも高い身長だというのに器用に丸くなっている。もしやこれが鈴の睡眠スタイルなのかとつい思ってしまう。癒されつつも変な寝方だなと寿也は苦笑した。寝苦しくないのだろうか。
布団を被せ直しながら、寝苦しいと言えば変な夢を見たなと寿也は思い出した。
鈴が泣いている夢だ。何故泣いているのか全然わからなくて、寿也は身動きもできずただ見ていた。だが見ている内に自分まで悲しくなってきた。
そもそも何故自分は身動きができなかったのかもわからない。ただわかるのは、夢の中で自分はこの光景を以前どこかで見たことがある気がしたということだ。
もちろんそんなはずはない。鈴が泣いているところなど夢以外で見たことはなかった。
とにかく不思議な夢だった。そして寝苦しいわけではないが、悲しんでいる鈴を見て自分も悲しかったからだろうか。体がというよりは妙に心が苦しかった。
そんな夢を見たからか、アルバイト先でも鈴がどうも視界に入ってくる。気になるというか、何が気になるというわけでもないのだが、視界に入る。なんだろうか、泣いてないか気にしているのだろうか。それこそ、そんなはずはないというのに。
それを大学で奏流に言えば「夢じゃなかったりしてねー」などと返してくる。
「俺、わりと真面目に話したのに。そりゃまあ答えようのない内容だろうけど。だいたい夢じゃないってどういう意味だよ」
寿也が聞き返しても奏流は笑っているだけだった。
「よ。がんばってる?」
ニコニコと楽しそうな様子で、チョコレート味の棒アイスをレジへ持ってくる。
「温めますか」
「はい、……って、いやいやいやおかしいだろ。アイス温めてどうしろと。啜れってか」
突っ込んでくる奏流を流しながらバーコードを読ませたアイスの袋にテープをはり、寿也は何気に隣のレジを見ると鈴はいつの間にかそこからいなくなっていた。どうやら陳列棚で何か作業をしているようだ。あまりにさりげなく奏流の目から逃れている鈴に、寿也は苦笑した。大人しい性格のようだから騒がしそうに見える奏流が苦手なのかもしれない。
その鈴に気づいた奏流がアイスの袋を受け取ると「彼が浅見くん?」と聞いてきた。
「うん。めちゃくちゃいい子だよ」
奏流には先日一緒に宅飲みした話もしていた。
「へぇ。がんばってるんだな」
呟いた奏流の言葉に少々違和感を覚えつつも寿也は頷いた。
「うん、まだ入ってきてからそんなに経ってないけどがんばってるよ。っていうかおい。何普通に封開けてんの? アイスここで食うな」
中身を取り出して食べようとした奏流を、寿也は「出ていけ」と追い出した。
ちなみにすずはよく出かけるようになった。家に来たばかりだった頃はずっと引きこもってくれていたというのに少々寂しく思う。
「やっぱり猫は気ままなんだな。すず、最近よく外へ行くようになったんだ。ほんとどこ行ってるんだろね最近のお前は。気になるんだけど」
奏流が寿也の家に来た時に言えばすずが「ニャー」と鳴いてくる。寿也はすずを仰向けにしてその腹に顔を埋めた。ふわふわしてすずの匂いがして温かい。すずは嫌がることもなくされるがままだった。顔を上げると奏流が笑いながら起き上がったすずの頭を撫でてきた。
「猫ってそういうもんだろ。なぁすずちゃん。ていうか、外で恋人とか子ども作ってたりしてねー」
「うちの子はそんな無責任なことしない」
ムッとして奏流を睨むと「死ねばいいのに的な目で見てくんのやめて」と苦笑された。すずは頭を撫でる奏流の手を引っかくと威嚇するように「シャーッ」と鳴きながらこの場を離れていく。
「ほら、怒られた。そんなことしてないってさ。すずに謝れ」
「冗談なのに。ねえすずちゃん。……でもほんとさ、それくらい気楽に生きたほうが楽なのに……」
「何の話だよ」
最後ぼそりと呟くように言ってきた奏流に怪訝な顔を向けると笑ってきた。
「いや、俺も気楽に生きたいなあって話」
「お前はいつだって気楽そうだけど」
「えー、そっかなあ」
何故か照れたように笑う奏流に「別に褒めてないぞ」と寿也は呆れた顔を向けておいた。すずは珍しく出かけないようで、奏流から離れたところでしきりに奏流に撫でられた頭のあたりを舐めた手で撫でつけている。どうやら綺麗にしているらしいとわかり、寿也はつい笑ってしまった。その後すずは丸くなって眠ったかと思っていたが、時折ふと青い目で寿也たちを見ているようだった。
まるでそんなすずのように奏流を苦手としているらしい鈴とはちょくちょく宅飲みをしたり遊びに出かけたりするようになった。出かける先は、何か面白そうな映画の話題に鈴も興味を持っているようなら誘って一緒に行くとか、気分を変えて外で飲むとか、そんな感じだろうか。
いつものように宅飲みをしたとある翌朝、寿也が目を覚ますと鈴が初めて宅飲みをした日のように寿也の足元に丸くなって眠っていた。寿也よりも高い身長だというのに器用に丸くなっている。もしやこれが鈴の睡眠スタイルなのかとつい思ってしまう。癒されつつも変な寝方だなと寿也は苦笑した。寝苦しくないのだろうか。
布団を被せ直しながら、寝苦しいと言えば変な夢を見たなと寿也は思い出した。
鈴が泣いている夢だ。何故泣いているのか全然わからなくて、寿也は身動きもできずただ見ていた。だが見ている内に自分まで悲しくなってきた。
そもそも何故自分は身動きができなかったのかもわからない。ただわかるのは、夢の中で自分はこの光景を以前どこかで見たことがある気がしたということだ。
もちろんそんなはずはない。鈴が泣いているところなど夢以外で見たことはなかった。
とにかく不思議な夢だった。そして寝苦しいわけではないが、悲しんでいる鈴を見て自分も悲しかったからだろうか。体がというよりは妙に心が苦しかった。
そんな夢を見たからか、アルバイト先でも鈴がどうも視界に入ってくる。気になるというか、何が気になるというわけでもないのだが、視界に入る。なんだろうか、泣いてないか気にしているのだろうか。それこそ、そんなはずはないというのに。
それを大学で奏流に言えば「夢じゃなかったりしてねー」などと返してくる。
「俺、わりと真面目に話したのに。そりゃまあ答えようのない内容だろうけど。だいたい夢じゃないってどういう意味だよ」
寿也が聞き返しても奏流は笑っているだけだった。
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