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気づけば冬という季節に入っていて、すずとしてはあまりありがたくない時期が到来していた。だが今回の冬は一味も二味も違う。猫顔でニヤリと笑うと寿也が「今、まるで笑ったみたいに見えた」と言いながらすずの背中を撫でてくれた。気持ちがよくてうっとりしつつ「笑ったんだよ」と答えるがいつものように伝わってはいない。
いつもと何が違うかというと、もちろんこたつだ。
いや、違う。間違えた。寿也だ。
すずは慌てて思い直す。こたつは大好きだが、何が違うかという理由の根本は寿也がいるからだ。こたつがなくても少し悲しいだけだが寿也がいなければ胸がきっと潰れる。
莉津子の魂とともに過ごす冬はすずにとって心温まる冬になる。ゴロゴロと喉を鳴らしながら、すずは寿也にじゃれついた。そこに邪魔者がやって来たようだ。
「鍋しよう、鍋。材料買って来たから場所と道具と調理提供して」
「……ぉう」
何が鍋だ、お前だって絶対猫舌のくせに。
すずは忌々しく思いながらこたつの中へ避難した。こたつの外では奏流がつまらないことを話しているのが聞こえる。
何故奏流がこんなところで寿也の友人になどなっているのだろうかと、すずは五百回目くらいではないだろうかと思えるほどの疑問をまた頭に過らせた。すずよりもおそらく長生きしているであろう異国の混血種に、すずはどうしても警戒してしまう。
きっと自分に対してまるで見透かすかのように憐憫の目で見てくるからだ。そんな奏流が寿也と親しくしていることが謎で仕方がない。大学という場でたまたま出会って知り合ったというのが理由なのだろうとはわかっているが、過去何度か奏流と出会ったことのあるすずとしては警戒してしまうのも仕方がないことだと自分で思う。
何度か出会っているとはいえ、多分ちらりと出会うくらいで特に何かされたわけではないはずだが、やたら馴れ馴れしいのとあの目がとても気に食わない。本来自分より長生きをしている種族には敬意を示すべきだろうが奏流とあと一匹にだけは示したくない。
ちなみに今の奏流情報についてほぼわかっていない。気に食わないから気に留めないようにしているというのもあるが、奏流本人がどちらかといえばあまり自分のことを話さないからだろう。奏流の薄い茶色の髪色は異国の混血種だからなのか、単に妖力なのか、それとも現代この国の人間がよく行っているらしい毛染めの影響なのかさえわかっていない。かつて何度か見かけた奏流が人間に化けていた姿は、時代もあって鈴のような黒い髪色だった。どのみちあの当時に茶色い髪色をしていたらそれこそ妖怪扱いされていたかもしれない。
他の人間としての特徴はたれ目と八重歯だろうか。髪色も違うしつり目気味の鈴とは正反対だ。八重歯は元の姿の影響だろうか。肉食獣であるすずも犬歯は鋭いからか、人間の鈴になった時は八重歯がある。とにかく人間の姿である奏流に対しても他の人間と同じように、顔が整っているのかどうなのかすずにはわからない。
「あれ、すずちゃんは?」
「こたつじゃないかな」
あと寿也のことは大好きだが、今だけは「何で教えたの」と少し恨みたい。
「そっかぁ」
楽しそうな声が聞こえてきたかと思うと、無遠慮な足がこたつに侵入してきた。間違いなく奏流の足だ。今すぐ鋭い爪で攻撃してやってもいいのだがとイライラ思いつつ、元々こたつの隅っこにいたすずはその邪魔な足を睨みつけた。
「どこだろー」
今度は手まで入ってくる。いくら寿也の友人とはいえ、もうこれは攻撃してきたと見なして反撃してもいいのではないだろうか。すずは「シャーッ」と威嚇しながら伸ばしてきた奏流の手のひらを爪で叩いてやった。
「いった!」
「……毎回威嚇されたり爪で攻撃されてんのに何で懲りないんだ?」
少し離れたところから呆れたような寿也の声が聞こえてきた。こんな奏流のそばにいるくらいならこたつから出て寿也のそばへ避難したほうがいいのは百も承知だ。しかし今こたつを出たら多分すずは凍えてしまう。
「だって可愛いから仕方ないじゃない」
「で、また攻撃されるんだろ。すずー、おいで。カリカリあげるよ」
どうやら寿也はすずがドライフードを好きなのだと思っているようだ。それは間違っていると今すぐ指摘してあげないと、とすずはこたつから凍えてしまうはずの外へ素早く飛び出た。そしてまっしぐらに寿也の元へ駆けつけ、カリカリ音を立てて「本当は缶詰のが好きなんだよ、わかってる?」などと言いながらドライフードを食べる。
「ンニャンニャ言いながら食べてる。可愛いなあ」
寿也はニコニコとしながらすずの背中を撫でてきた。今回も間違いを訂正できなかったようだが致し方ない。とりあえず寿也がくれる餌なのだから完食しなければ、とすずはあっという間に平らげた。何ならもう少し入れてくれてもいい。
「美味しかった?」
「缶詰のが好きだけどね」
そう答えるもやはり伝わってないようで寿也は満足げだ。まあそれも仕方がない。だからもう少しこの器にドライフードを足してくれてもいいんだよとすずは足で寿也の足元に何度か触れた。背後で奏流が笑っているのが聞こえてきた。やはり忌々しい。
いつもと何が違うかというと、もちろんこたつだ。
いや、違う。間違えた。寿也だ。
すずは慌てて思い直す。こたつは大好きだが、何が違うかという理由の根本は寿也がいるからだ。こたつがなくても少し悲しいだけだが寿也がいなければ胸がきっと潰れる。
莉津子の魂とともに過ごす冬はすずにとって心温まる冬になる。ゴロゴロと喉を鳴らしながら、すずは寿也にじゃれついた。そこに邪魔者がやって来たようだ。
「鍋しよう、鍋。材料買って来たから場所と道具と調理提供して」
「……ぉう」
何が鍋だ、お前だって絶対猫舌のくせに。
すずは忌々しく思いながらこたつの中へ避難した。こたつの外では奏流がつまらないことを話しているのが聞こえる。
何故奏流がこんなところで寿也の友人になどなっているのだろうかと、すずは五百回目くらいではないだろうかと思えるほどの疑問をまた頭に過らせた。すずよりもおそらく長生きしているであろう異国の混血種に、すずはどうしても警戒してしまう。
きっと自分に対してまるで見透かすかのように憐憫の目で見てくるからだ。そんな奏流が寿也と親しくしていることが謎で仕方がない。大学という場でたまたま出会って知り合ったというのが理由なのだろうとはわかっているが、過去何度か奏流と出会ったことのあるすずとしては警戒してしまうのも仕方がないことだと自分で思う。
何度か出会っているとはいえ、多分ちらりと出会うくらいで特に何かされたわけではないはずだが、やたら馴れ馴れしいのとあの目がとても気に食わない。本来自分より長生きをしている種族には敬意を示すべきだろうが奏流とあと一匹にだけは示したくない。
ちなみに今の奏流情報についてほぼわかっていない。気に食わないから気に留めないようにしているというのもあるが、奏流本人がどちらかといえばあまり自分のことを話さないからだろう。奏流の薄い茶色の髪色は異国の混血種だからなのか、単に妖力なのか、それとも現代この国の人間がよく行っているらしい毛染めの影響なのかさえわかっていない。かつて何度か見かけた奏流が人間に化けていた姿は、時代もあって鈴のような黒い髪色だった。どのみちあの当時に茶色い髪色をしていたらそれこそ妖怪扱いされていたかもしれない。
他の人間としての特徴はたれ目と八重歯だろうか。髪色も違うしつり目気味の鈴とは正反対だ。八重歯は元の姿の影響だろうか。肉食獣であるすずも犬歯は鋭いからか、人間の鈴になった時は八重歯がある。とにかく人間の姿である奏流に対しても他の人間と同じように、顔が整っているのかどうなのかすずにはわからない。
「あれ、すずちゃんは?」
「こたつじゃないかな」
あと寿也のことは大好きだが、今だけは「何で教えたの」と少し恨みたい。
「そっかぁ」
楽しそうな声が聞こえてきたかと思うと、無遠慮な足がこたつに侵入してきた。間違いなく奏流の足だ。今すぐ鋭い爪で攻撃してやってもいいのだがとイライラ思いつつ、元々こたつの隅っこにいたすずはその邪魔な足を睨みつけた。
「どこだろー」
今度は手まで入ってくる。いくら寿也の友人とはいえ、もうこれは攻撃してきたと見なして反撃してもいいのではないだろうか。すずは「シャーッ」と威嚇しながら伸ばしてきた奏流の手のひらを爪で叩いてやった。
「いった!」
「……毎回威嚇されたり爪で攻撃されてんのに何で懲りないんだ?」
少し離れたところから呆れたような寿也の声が聞こえてきた。こんな奏流のそばにいるくらいならこたつから出て寿也のそばへ避難したほうがいいのは百も承知だ。しかし今こたつを出たら多分すずは凍えてしまう。
「だって可愛いから仕方ないじゃない」
「で、また攻撃されるんだろ。すずー、おいで。カリカリあげるよ」
どうやら寿也はすずがドライフードを好きなのだと思っているようだ。それは間違っていると今すぐ指摘してあげないと、とすずはこたつから凍えてしまうはずの外へ素早く飛び出た。そしてまっしぐらに寿也の元へ駆けつけ、カリカリ音を立てて「本当は缶詰のが好きなんだよ、わかってる?」などと言いながらドライフードを食べる。
「ンニャンニャ言いながら食べてる。可愛いなあ」
寿也はニコニコとしながらすずの背中を撫でてきた。今回も間違いを訂正できなかったようだが致し方ない。とりあえず寿也がくれる餌なのだから完食しなければ、とすずはあっという間に平らげた。何ならもう少し入れてくれてもいい。
「美味しかった?」
「缶詰のが好きだけどね」
そう答えるもやはり伝わってないようで寿也は満足げだ。まあそれも仕方がない。だからもう少しこの器にドライフードを足してくれてもいいんだよとすずは足で寿也の足元に何度か触れた。背後で奏流が笑っているのが聞こえてきた。やはり忌々しい。
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