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43話
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待ち合わせ場所に来るのが遅れたことは正直悪いなと思うものの、相手が覚だけに悪びれる気持ちはこれっぽっちも湧かない。
「仕方ないだろ。寿也の懐が暖かくて気持ちよくて全然目が覚めなかった」
「はぁっ? ふざけんなよ。そんなの理由になるか。つか謝る気持ちがあるなら俺もとしやと一緒に眠らせろ」
「この阿保駄犬が。誰が謝るか。ふざけんな」
「そっちがふざけんな! ああクソ! ……で、話って何だよ」
頭を抱えるようにして怒っていた覚はだがすぐに切り替えてきた。そういうところだけは嫌いではないとすずは思う。だが寿也に害をなしそうな存在はそれだけで大嫌いだ。
「寿也に近寄るな」
「は? 何で」
「オレのだから」
「……別にとしやとあんた、特別な契約してる様子ないだろ。わかるぞ俺にも。絆があるとかそういう精神論はいらないからな? それにとしやが俺の友だちになって欲しいって欲求に同意してきたんだから、これは俺ととしやの問題だ。あんたがとしやの飼い猫だろうが関係ない」
「ある。俺の大切な飼い主を、お前は最悪食べる気だろ」
「さっきからそれ、煩いくらい思ってるようだけど、食べるかよ!」
じろりと睨みつけて言えば覚は引いたような顔をして言い返してきた。
「じゃあ何で構うんだよ。寿也に近づくんだよ」
「そ、れは友だちになりたからだろ」
「は? 覚のくせに人間と友だちになりたいって? もっとマシな言い訳考えろよ」
「それを言うならあんただって猫又のくせに人間に懐いてんじゃねーか!」
「オレはいいの。だって元々猫だし飼い主に懐くの普通だろ。お前は人間に悪戯するか最悪食うか、もしくは孕ませるくらいしかイメージな……、待て、もしかしてオレの寿也孕ませようとか思ってないだろな。確かにあの人綺麗な魂持ってるけど、現世では雄だぞ? 孕まないぞ? それとも変わった趣味でも持ってんのか?」
「普通にわかってんだよ……! 勝手なイメージ持つだけじゃなく俺を微妙に変な趣味持ちにしてくるな。……単にとしやがいい匂いするのと背後に強い力感じて、マジで知り合いになりたいって思っただけだからな!」
憤慨していた覚が途中からもじもじしながら言ってくるのが微妙に気持ち悪い上に、あまりにもひねりすらない単純な欲求すぎてすずは生温い表情で覚を見た。
「俺をそんな残念そうに見るな」
「お前、さては心底ヘタレ駄犬だな? しかも親しいヤツいないんだろ」
「失礼な。親しい相手くらいいる。それにこれでもそれなりにモテるんだからな? さとりくんよく気づくーとか言われるんだからな」
「は。だいたい単にそれ、お前の能力使ってるだけだろ、このヘタレ駄犬」
「だから俺を犬扱いするなっつってんだろ。犬は嫌いだ」
「あー、元はと言えば猿っぽいもんな、覚って」
「猿でもない! クソ。ほんとあんた忌々しい猫又だな。つか名前くらい名乗れよ」
「何でオレがお前に名乗らなきゃなの? 嫌」
「ほんっと性格悪い猫だな……!」
どうやら本当に寿也と親しくなりたいという理由だけのようで、すずは結構拍子抜けした。野狐とやり合ったせいもあり、寿也に対して害をなす存在と決めつけていたところは確かにあるかもしれない。その上妙な関心を寿也に持っているのが覚のような能力がなくとも読めるだけに、てっきり九郎の力に魅かれ利用しようとしているか、あやかし絡みのある手に入れやすそうな人間を食べようとしているのかと思った。実際に強い力を感じた上に何やら覚にとっていい匂いがするそうだが、まさか普通に友だちになりたいだけなどと思うはずもない。
「にしてもとしや、前からたまに店、来てたの見かけたことあったけどこんな強い力は感じなかったんだよな。いい匂いは多少してたけど、それも強くなってる気がするし」
「いい匂いってのがどんなのかオレにはわからないけど……」
わからないが、すずが寿也の魂をとても綺麗だと思うように覚にも何やら感じるものがあるのだろう。
「マジでわからないの? へっ、すごく鼻利きそうなのにな」
何となく小馬鹿にするような笑いを感じ取り、すずは覚の足首あたりに爪を立てた。
「っい、って! あんた、マジ暴力すぐ振るうのやめてくんない?」
「オレはちっちゃな存在なんだろ? 爪くらいで情けないこと言うな。だいたい猫の性分だ」
「勝手な……。っていうかだから俺をヘタレ駄犬と──」
「今は言ってないぞ?」
「う……。とにかく! そういうことだから俺は別に食わねえよ。つか人間の世界でこうやって普通に生活してるのに食うわけないだろ。このご時世じゃすぐ捕まるわ!」
「じゃあ普段何食ってんだ、お前」
ふと純粋に疑問に思って聞けば「普通の人間が食うものを食う」と返ってきた。
「でも牛肉やラム肉はわりと人間の肉に味、似てるから好きだな」
だが付け加えてきた今の言葉で、すずは覚に対する警戒は解かないでいようと心に誓った。あとやっぱりちょっと阿保だなとも思う。
「おい、食わないっつってんだろ。あと阿保とは何だよ。俺のこと、残念そうに見てくるな」
「……このヘタレ阿保駄犬が」
「組み合わせてくんなよ!」
「仕方ないだろ。寿也の懐が暖かくて気持ちよくて全然目が覚めなかった」
「はぁっ? ふざけんなよ。そんなの理由になるか。つか謝る気持ちがあるなら俺もとしやと一緒に眠らせろ」
「この阿保駄犬が。誰が謝るか。ふざけんな」
「そっちがふざけんな! ああクソ! ……で、話って何だよ」
頭を抱えるようにして怒っていた覚はだがすぐに切り替えてきた。そういうところだけは嫌いではないとすずは思う。だが寿也に害をなしそうな存在はそれだけで大嫌いだ。
「寿也に近寄るな」
「は? 何で」
「オレのだから」
「……別にとしやとあんた、特別な契約してる様子ないだろ。わかるぞ俺にも。絆があるとかそういう精神論はいらないからな? それにとしやが俺の友だちになって欲しいって欲求に同意してきたんだから、これは俺ととしやの問題だ。あんたがとしやの飼い猫だろうが関係ない」
「ある。俺の大切な飼い主を、お前は最悪食べる気だろ」
「さっきからそれ、煩いくらい思ってるようだけど、食べるかよ!」
じろりと睨みつけて言えば覚は引いたような顔をして言い返してきた。
「じゃあ何で構うんだよ。寿也に近づくんだよ」
「そ、れは友だちになりたからだろ」
「は? 覚のくせに人間と友だちになりたいって? もっとマシな言い訳考えろよ」
「それを言うならあんただって猫又のくせに人間に懐いてんじゃねーか!」
「オレはいいの。だって元々猫だし飼い主に懐くの普通だろ。お前は人間に悪戯するか最悪食うか、もしくは孕ませるくらいしかイメージな……、待て、もしかしてオレの寿也孕ませようとか思ってないだろな。確かにあの人綺麗な魂持ってるけど、現世では雄だぞ? 孕まないぞ? それとも変わった趣味でも持ってんのか?」
「普通にわかってんだよ……! 勝手なイメージ持つだけじゃなく俺を微妙に変な趣味持ちにしてくるな。……単にとしやがいい匂いするのと背後に強い力感じて、マジで知り合いになりたいって思っただけだからな!」
憤慨していた覚が途中からもじもじしながら言ってくるのが微妙に気持ち悪い上に、あまりにもひねりすらない単純な欲求すぎてすずは生温い表情で覚を見た。
「俺をそんな残念そうに見るな」
「お前、さては心底ヘタレ駄犬だな? しかも親しいヤツいないんだろ」
「失礼な。親しい相手くらいいる。それにこれでもそれなりにモテるんだからな? さとりくんよく気づくーとか言われるんだからな」
「は。だいたい単にそれ、お前の能力使ってるだけだろ、このヘタレ駄犬」
「だから俺を犬扱いするなっつってんだろ。犬は嫌いだ」
「あー、元はと言えば猿っぽいもんな、覚って」
「猿でもない! クソ。ほんとあんた忌々しい猫又だな。つか名前くらい名乗れよ」
「何でオレがお前に名乗らなきゃなの? 嫌」
「ほんっと性格悪い猫だな……!」
どうやら本当に寿也と親しくなりたいという理由だけのようで、すずは結構拍子抜けした。野狐とやり合ったせいもあり、寿也に対して害をなす存在と決めつけていたところは確かにあるかもしれない。その上妙な関心を寿也に持っているのが覚のような能力がなくとも読めるだけに、てっきり九郎の力に魅かれ利用しようとしているか、あやかし絡みのある手に入れやすそうな人間を食べようとしているのかと思った。実際に強い力を感じた上に何やら覚にとっていい匂いがするそうだが、まさか普通に友だちになりたいだけなどと思うはずもない。
「にしてもとしや、前からたまに店、来てたの見かけたことあったけどこんな強い力は感じなかったんだよな。いい匂いは多少してたけど、それも強くなってる気がするし」
「いい匂いってのがどんなのかオレにはわからないけど……」
わからないが、すずが寿也の魂をとても綺麗だと思うように覚にも何やら感じるものがあるのだろう。
「マジでわからないの? へっ、すごく鼻利きそうなのにな」
何となく小馬鹿にするような笑いを感じ取り、すずは覚の足首あたりに爪を立てた。
「っい、って! あんた、マジ暴力すぐ振るうのやめてくんない?」
「オレはちっちゃな存在なんだろ? 爪くらいで情けないこと言うな。だいたい猫の性分だ」
「勝手な……。っていうかだから俺をヘタレ駄犬と──」
「今は言ってないぞ?」
「う……。とにかく! そういうことだから俺は別に食わねえよ。つか人間の世界でこうやって普通に生活してるのに食うわけないだろ。このご時世じゃすぐ捕まるわ!」
「じゃあ普段何食ってんだ、お前」
ふと純粋に疑問に思って聞けば「普通の人間が食うものを食う」と返ってきた。
「でも牛肉やラム肉はわりと人間の肉に味、似てるから好きだな」
だが付け加えてきた今の言葉で、すずは覚に対する警戒は解かないでいようと心に誓った。あとやっぱりちょっと阿保だなとも思う。
「おい、食わないっつってんだろ。あと阿保とは何だよ。俺のこと、残念そうに見てくるな」
「……このヘタレ阿保駄犬が」
「組み合わせてくんなよ!」
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