恋愛ゲームは続行中

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 ついでに美恵だが、ゲームではグラフィックデザインを担当している。高校生の時には恋愛シュミレーションゲームを作成していたようだ。当然ながらBLだったらしい。大学で望美と知り合い、意気投合して二人で乙女ゲームを作った。今のサークルはそれがきっかけでできたようだ。
 ショートボブヘアのこちらも男前系女子だ。そして何よりもBLが大好物だと自ら豪語している。

「特に主従最高」
「……ああ、そうっすか」

 語りだすと終わりが見えない勢いで延々と話してくるため、智也は知り合って早々にスキル「聞き流し」をマスターしている。
 BL大好きと言いつつちゃっかり彼氏がいるのだが、この間その彼氏を「受け」と見立てての妄想を語りだしたので羨ましいどころかその彼氏には同情しかない。
 と思っていたら今回のゲームで智也に似せた男主人公を動かす羽目になった。必然とBLになってしまうし美恵の妄想育成を手助けする羽目になりかねない。
 ついでに主人公はプレイヤーの分身でありそれなりにアバターのバリエーションもあるとはいえ、さすがに外見をプレイヤーそっくりのアバターに変える機能はついていない。なのでこのままテストが進みゲームとして完成しても、あえて一からキャラクターデザイン設定を変えない限り基本が智也似の主人公のままということになる。それも複雑極まりないが、他のキャラクターもサークルメンバーの誰かに似ているため仕方ないと諦めるしかない。
 ちなみに主人公の名前はクライヴ(クラリス)・ユーバンク・マーティンだ。男女を選択することで名前が変わる。
 他のキャラクターだが、夢に出てきた昌史似の攻略対象がイアン・アーサー・ウィンザーで、他の二人がクリス・K・ウォーナー、アンディ・アトキン・シーモアという。攻略対象ですら少なくとも智也は正直覚える自信ない名前を持つ。
 クリスは男前タイプで、必要なこと以外話さないところが何となく亮人に似ている気がする。
 アンディは明るいムードメーカータイプなところが伸行に似ている気がする。
 他にも何人か登場人物はいるが、中でも攻略対象である育成相手を主人公に最初に紹介してくれる、主人公の身内であるサリー・テレス・ロイドは男勝りな感じが美恵に似ている気がする。そして主人公のキャラメイクを手伝ってくれるだけでなく、ゲーム内ではダンスや貴族教育を手掛けてくれる先生、ミランダ・ケイト・フェネルのサバサバした感じは望美に似ている気がする。
 これらのキャラクターのどの相手ともゲーム内でお近づきになるわけで、少々複雑な気持ちとなるのは仕方ないことだと思う。本人がだぶって見えてしまう。おまけに攻略対象である育成相手はどれも男だ。楽しくて仕方ないと思えないのも致し方ない。

「せめて変な妄想を俺や後輩たちに持たないでくださいよ」

 美恵には念押ししたものの「ゲームをプレイして妄想しないなんて普通でもありえないでしょ? 篠原くんだって萌え系ゲームやったら妄想、するでしょ?」と答えになっていない返事をもらった。

「……そういうゲーム、俺あんましないんで」
「はいはい、感動と希望ある熱い戦いのRPGがいいんよね」
「太田さん、馬鹿にしてます?」
「してないよ? いいじゃない。熱いRPG。私も好きだよ」
「あんたは主人公と敵対するキャラを掛け算するのが好きなんでしょが」
「いいね、いいね。嫌いじゃないよ」
「むしろ好きだろ……。とにかく、微妙な気持ちになるんで変な妄想はやめてくださいよ」
「妄想じゃなかったらいいんでしょ」

 最終的に「それはどういう意味だ」と問い詰めたくなる答えをもらったところで、ちょうど美恵は別の友だちに話しかけられ、あやふやのままだ。
 こんな念押しするのには一応訳がある。
 ゲームアプリ内の昌史、いやもとい、イアンの好感度がそれなりにじわじわ上がってしまい、とある規定値に達したのか、最近やたら甘い言葉を囁いてくるのだ。昌史似だけに背中がどうにもムズムズするし、美恵の妄想が加わると一体どんなとんでもないことになってしまうのかとつい思ってしまい微妙にもなる。
 イアンだけでなく他の二名でもそうだが、それぞれイベントなどのたびに美麗なスチルがある。当然ながら恋愛色が濃くなるとスチルもそれっぽくなる。それを見るたびに複雑度が増す。
 智也は過去にも女子に頼まれBLゲームを作ったことはある。その時もテストプレイしたが、自分が手掛けたものの上、ゲームはゲームだと気にも留めなかった。今これほど複雑なのはやはり自分やサークルメンバー似というのがネックなのだろう。
 せめてもの救いは名前が全然違うということだろうか。舞台は英国風ファンタジーであるため、全員カタカナの名前だ。全く一致しない。
 ただどうにも覚えにくく、智也だけでなく他のメンバーもついクライヴを智也と呼んだり、イアンを昌史と呼んだりしている。幸い普段はむしろ下の名前で呼んでいないので、多少ワンクッションあるかもしれない。しかし誰もがもはや、本人たちをそのキャラに多少なりとも当てはめているのではとしか思えない。
 それでもゲーム制作はそのまま続く。最近ますますゲーム内の育成相手が後輩たちに思えてきて、智也はひたすら複雑だった。
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