銀の髪を持つ愛し子は外の世界に憧れる

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第一章 銀髪の侯爵令嬢

13話

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 誰かと待ち合わせをすること自体初めてのことで少々罪悪感などに駆られていたリフィルナも、いざ町へつくとまたわくわくとした気持ちが込み上げてきた。そもそも町へ来ること自体、ほぼ初めてに近かった。大きくてレンガがたくさんでそして人がパーティでもあるかのように多い。あちこちがとても気になったが、とりあえず迷わないようにと緊張しながらリフィルナは待ち合わせ場所へ向かった。
 待ち合わせ場所を探しながら一人で歩いていると、時折知らない人が何か声をかけようとしてくる。だが毎回リフィルナの肩に乗っている小さな白蛇を見るとぎょっとしたような顔になって逃げるようにその場からいなくなっていく。

「何だろうね、ディル。道を聞こうとしたけど私を見た途端、絶対わからなさそうだと確信できた、とかかな」

 怪訝に思いつつも外の世界が楽しくてニコニコとディルに話しかけると、白蛇はチロチロと舌を出してリフィルナの頬に顔を擦り寄せたりしてきた。

「リフィルナ。無事たどり着けてよかった。ここまで問題なかった?」

 大きな町の時計台のところまで来るとアルのほうがリフィルナを見つけてくれて聞いてくる。

「はい。何度か、多分道を聞きたそうな人に出会いましたが、私を見たら無駄だと思ったんでしょうね、皆さんすぐにどこかへ行ってしまいました」
「……ああ……はは。とりあえず一旦お茶でも飲もうか。喉は乾いてる? お腹は空いてない?」
「あ!」
「どうかした?」
「……その、私、お弁当を持ってきていません……」
「弁当……? ああ! それも楽しそうだけど、そういうのはまたの機会でね。どこかお店へ入ろう」
「ですがその、私……」

 店に入って何か商品を自分のものにするためには金が必要だとはリフィルナも知っている。誰か貴族などの招待を受けて出向くパーティなどとは違う。確か飲食にも支払いが必要だったはずだ。だがアルにまた会えるとばかり思っていてうっかりしていた。
 リフィルナは銅貨一枚すら持っていない。両親から貰うことがないだけでなく、コルドからも貰っていないからだ。以前コルドが「リィーもお金、少しは持っていたほうがいいよ」と小遣いをくれようとしたことがあったが、もしせっかく貰っても親や姉に知られると没収されてしまうかもしれないと思い、断った。いつも誕生日プレゼントをくれるコルドに対してリフィルナは、本人の希望もあって毎回何か手作りのものを誕生日プレゼントにしていた。それもあり、特に金が必要だったことがなかった。しかし貰っておけばよかったのだろうかと戸惑っているとアルが手を差し出してきた。差し出された手に、リフィルナはつい無意識に反応してふわりと自分の手を乗せる。硬い手のひらは多分柔らかい絹の手袋で誤魔化せてはいるだろう。外出するとなると、今までほぼ使うこともなかったドレスや装飾品は役に立つ。

「リフィルナ、こういう時は僕が出すことで虚栄心が満たされるから、リフィルナは出したくてたまらなくてもぐっと堪えて、僕を自己満足させて欲しいな」
「……ありがとうございます、アル」

 きっとお金、持ってないんだって思われちゃったんだろうな。

 そう思い、ほんのり落ち込んでいると持っていた手をぐっと握られた。ハッとなり、リフィルナはアルを見上げる。

「行こう、リフィルナ。僕ね、実は結構甘いもの、好きなんだけど君はどう?」
「え、っと、好き、です」
「よし。じゃあ今流行ってるフルーツの砂糖漬けやヌガーをお茶と一緒に楽しもうよ」

 アルはニコニコとリフィルナの手を引いて歩きだした。流れとはいえ、そのまま手を繋いで歩いていると実際されたことはないが、保護者に連れ出してもらっている子どものような気持ちになってきた。何だか嬉しくてそれをおずおずとアルに言えば「保護者かー。確かに成人はしてるけどまだ十六だよ僕」と苦笑していた。

「あのさ」

 店の中でゆっくりとお茶を味わっている時にアルがそういえば、といった風に話を切り出してくる。

「はい」
「さっき、君に道を聞きたそうな人って言ってたよね」
「はい」
「それ、もし万が一逃げて行っちゃわなくてしつこく何か言ってきたら君が逃げるんだよ」
「え、何故」
「うーん……多分ね、あまりいいことじゃないことで君に声をかけてきたやつらだと思うから。でもそいつらはディル、だっけ? その白い蛇のなんだろうな、魔力だろうか。に圧倒されて逃げたんだと思う」
「ディルの?」
「その子、結構変わった力、持ってるんじゃない?」

 必要ないだろうと、リフィルナはアルに幻獣のことは話していなかった。

「え、どうして……」
「何故僕がそう思うかは置いておいて、ね。僕もさ、いくら君に会いたいからって君を無防備に危険な目に合わせる可能性のあることをさせたりしないよ。本当なら友だちだろうと何だろうと女の子を一人で町に来させるなんてしない」
「そう、なんですか?」
「でもその蛇。初めて会った時も途中からさ、どこからともなく表れて君にまとわりついてただろ。その時にも強い力を感じたから、多分その蛇が君を守ってくれてるんだろうなって思って」
「わ、かるんですか?」
「うん。僕も一応魔力をそれなりに持ってるしね、何となく。きっとその子が君を守ってくれるだろうってことくらいは。でもだからといってリフィルナ、無防備でいてはいけないよ。外の世界は家の中と違うから。君はもっと疑ったり警戒したりすることも覚えておいたほうがいいかもしれない。それはけっして悪いものとは限らないよ。むやみやたらにそうしろってことじゃない。ただ、人を見る目は養ったほうがいい。お互い引きこもりの身だから難しいけどね」

 アルがニッコリと微笑んできた。リフィルナはそっと頷く。

「……はい」

 人を疑ったり警戒することを全然知らないわけではない。そうせざるを得ない環境にある意味リフィルナは生まれた時からいたようなものだ。ただその相手が本来なら誰よりも何よりも一番心を許したいはずの相手だけに、できるだけそういったことを知らない振りをして過ごしたかった。誰かを警戒したり恨んだりするのは辛くて何よりも疲れることだ。
でもアルが言うのなら、そうなのかもしれないとリフィルナは思った。
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