2 / 20
2話
しおりを挟む
「だ、だって看病しようとしたら、あいつそんなことしなくていいって言うし、欲しい物ないかって聞けば何もいらないから好きなことしてろって……。俺そんな頼りにならないのかよって……つい」
本当にカッとなったのだ。唯翔は逸らせた顔を俯き気味にし、高人に言いながらもさらに落ち込んだ。
改めて口に出して言えば、かなり子どもっぽいことをしてしまったと思う。だけれども、たった二歳の差なのに頼ってもらえないことに切ないほどの苛立ちを覚えていた。
「あー……お前ら兄弟って本当めんどくせーよなあ」
高人は微妙な顔をしてくる。
「俺、別に面倒じゃねーよ」
「めんどーだよ、お前は」
見た目はいかついくせに少し笑みを浮かべながらも諭すように言う高人を、唯翔はムッとした顔で見た。
「煩いな、オカン」
「オカン、言うな」
「……俺は置いといて」
「置いとくのかよ」
「兄さんは何が面倒なんだよ」
「お前のお兄ちゃんは言葉が足りねーかな」
言葉が足りない?
唯翔は怪訝な顔をした。
「足りないのは俺に対する甘えや依存だろ」
「依存って何だよ」
苦笑しながら、高人は自分の携帯電話を取り出している。先ほどからそういえばずっと振動音がするなと思っていた。
「出ないのかよ」
「うーん」
高人はため息を吐きながら苦笑している。
「何だよ、百合華からじゃないのかよ。喧嘩でもしたのか」
「お前らと一緒にすんな。あと、俺の可愛い彼女呼び捨てにしてんじゃねーぞ。お前、お兄ちゃんだけじゃなく俺やユリカに対してもえらそーだけど、俺ら年上な?」
「バイブ煩いんだけど」
「聞けよ……。ったく。スマホかけてきてんの、お前の大好きな大好きなお兄ちゃんだぞ」
微妙な顔をした高人が携帯電話の画面を唯翔に見せてきた。そこには確かに『あおば』と表示されている。
「……っ」
「出ればいーの?」
高人が今度はニヤニヤしてきた。唯翔は舌打ちをしながら顔を背ける。
「舌打ちかよ。どーすんの。お前出る?」
「……出ない。兄さんに、兄だと今は思いたくないって捨て台詞吐いてきたし」
「言い過ぎだろ……。とりあえず一回出るからな」
高人に無言で頷くと、唯翔は少し離れたところへ移動して体を抱えるようにして座った。
「おぅ」
「あー、ここにいる」
「いや、いーけど。……んなことねーって。売り言葉に買い言葉的なあれだろ」
「まー、お前足りねーもんな」
「そっちじゃねーよ」
高人が蒼羽と話している。ところどころは何を言っているのかは予想がついた。
しばらくすると「じゃーな」と高人が電話を切る。それを隅からじっと見るとまた微妙な顔をされた。
「……何だよ」
「そう言いたいのは俺な? アオ、まぁ予想通りだろけどめちゃくちゃ心配してんぞ」
「兄ぶって……」
チッと舌打ちをすると高人が近づいてきてしゃがんでくる。知らない人が見たら、どう見ても真面目な学生に因縁でもつけにきた、がらの悪いヤンキーにしか見えないだろう。高人は顔を近付け「お兄ちゃん大好きなくせに」と笑ってきた。
「俺を頼ってくれないから好きじゃない」
「……なぁ、普通は兄に対して、頼ってくれないなんて不満に思わねーって知ってた?」
ニヤリと笑いながら言ってくる高人を唯翔はジロリと睨んだ。
「何が言いたいんだよ」
「お前はアオのこと大好きだよなってこと」
「何度も聞き飽きたんだけど」
「ほんと自覚ねーな。俺が言ってんのはお兄ちゃん大好き唯翔くんの話じゃねーぞ。蒼羽大好き唯翔くんの話だからな」
こいつは一体何を言ってるんだ?
意味がわからなくて微妙な顔で高人を見ると微妙な顔をし返された。
「何言ってんだみたいな顔で見てくんな」
「だって何言ってんだよ? 何が違うんだよ」
「俺がユリカのこと好きなよーに、お前はアオが好きなんだよ」
高人が百合華を好きなように……?
ってどういう……。
……。
……っ?
「はっ? 本当に何言ってんのっ?」
後退りをしようとして、背後が壁だと思い出した。後退りできない代わりに唯翔は高人を睨む。
高人はおかしくなったのではないか。相手は兄だ。それも完全に血が繋がっている。
そんな兄さんを、好き……?
俺が……?
心臓がドクドクと脈打つ。
確かに昔から、自信に満ちたところや自分と違ってコロコロと変わる表情が好きだとずっと思ってはいた。だがそれは兄として好きで憧れているだけで他の感情なんてない。はずだ。
「高人、おかしいんじゃないの」
「おかしいのは俺かー?」
高人はニヤニヤと嫌な笑みを浮かべて唯翔を見てきた。腹立たしいと唯翔はまた高人を睨む。
「自分の感情、決めつけねーでよく考えてみろよ。だいたいお兄ちゃん大好きなくせに頼ってくれねーからってつむじ曲げる弟ってのが違うだろ。甘えさせてくれねーって拗ねるならまだしもよ」
「何で俺が甘えさせてくれないって拗ねるんだよ。むしろ甘えて欲しいって言ってんだろ」
「だからそれな」
甘えて欲しいという気持ちのどこがおかしいのかわからない。大切な兄だからこそいい格好つけたりしないで弟である自分に甘えて欲しいと思うことの、どこがおかしいのか。
……。
……見失っているのはこの辺りなのか。
泣かせたり困らせたりしたくない。明るくて自信に満ちた蒼羽でいて欲しい。それでいて、唯翔を頼って欲しい。
この気持ちは弟の持つ感情じゃなかったのか?
……好きな相手への、気持ち……?
ぼんやりと考えていた唯翔は、いきなり自分の顔がおかしなほど熱くなるのを感じた。
本当にカッとなったのだ。唯翔は逸らせた顔を俯き気味にし、高人に言いながらもさらに落ち込んだ。
改めて口に出して言えば、かなり子どもっぽいことをしてしまったと思う。だけれども、たった二歳の差なのに頼ってもらえないことに切ないほどの苛立ちを覚えていた。
「あー……お前ら兄弟って本当めんどくせーよなあ」
高人は微妙な顔をしてくる。
「俺、別に面倒じゃねーよ」
「めんどーだよ、お前は」
見た目はいかついくせに少し笑みを浮かべながらも諭すように言う高人を、唯翔はムッとした顔で見た。
「煩いな、オカン」
「オカン、言うな」
「……俺は置いといて」
「置いとくのかよ」
「兄さんは何が面倒なんだよ」
「お前のお兄ちゃんは言葉が足りねーかな」
言葉が足りない?
唯翔は怪訝な顔をした。
「足りないのは俺に対する甘えや依存だろ」
「依存って何だよ」
苦笑しながら、高人は自分の携帯電話を取り出している。先ほどからそういえばずっと振動音がするなと思っていた。
「出ないのかよ」
「うーん」
高人はため息を吐きながら苦笑している。
「何だよ、百合華からじゃないのかよ。喧嘩でもしたのか」
「お前らと一緒にすんな。あと、俺の可愛い彼女呼び捨てにしてんじゃねーぞ。お前、お兄ちゃんだけじゃなく俺やユリカに対してもえらそーだけど、俺ら年上な?」
「バイブ煩いんだけど」
「聞けよ……。ったく。スマホかけてきてんの、お前の大好きな大好きなお兄ちゃんだぞ」
微妙な顔をした高人が携帯電話の画面を唯翔に見せてきた。そこには確かに『あおば』と表示されている。
「……っ」
「出ればいーの?」
高人が今度はニヤニヤしてきた。唯翔は舌打ちをしながら顔を背ける。
「舌打ちかよ。どーすんの。お前出る?」
「……出ない。兄さんに、兄だと今は思いたくないって捨て台詞吐いてきたし」
「言い過ぎだろ……。とりあえず一回出るからな」
高人に無言で頷くと、唯翔は少し離れたところへ移動して体を抱えるようにして座った。
「おぅ」
「あー、ここにいる」
「いや、いーけど。……んなことねーって。売り言葉に買い言葉的なあれだろ」
「まー、お前足りねーもんな」
「そっちじゃねーよ」
高人が蒼羽と話している。ところどころは何を言っているのかは予想がついた。
しばらくすると「じゃーな」と高人が電話を切る。それを隅からじっと見るとまた微妙な顔をされた。
「……何だよ」
「そう言いたいのは俺な? アオ、まぁ予想通りだろけどめちゃくちゃ心配してんぞ」
「兄ぶって……」
チッと舌打ちをすると高人が近づいてきてしゃがんでくる。知らない人が見たら、どう見ても真面目な学生に因縁でもつけにきた、がらの悪いヤンキーにしか見えないだろう。高人は顔を近付け「お兄ちゃん大好きなくせに」と笑ってきた。
「俺を頼ってくれないから好きじゃない」
「……なぁ、普通は兄に対して、頼ってくれないなんて不満に思わねーって知ってた?」
ニヤリと笑いながら言ってくる高人を唯翔はジロリと睨んだ。
「何が言いたいんだよ」
「お前はアオのこと大好きだよなってこと」
「何度も聞き飽きたんだけど」
「ほんと自覚ねーな。俺が言ってんのはお兄ちゃん大好き唯翔くんの話じゃねーぞ。蒼羽大好き唯翔くんの話だからな」
こいつは一体何を言ってるんだ?
意味がわからなくて微妙な顔で高人を見ると微妙な顔をし返された。
「何言ってんだみたいな顔で見てくんな」
「だって何言ってんだよ? 何が違うんだよ」
「俺がユリカのこと好きなよーに、お前はアオが好きなんだよ」
高人が百合華を好きなように……?
ってどういう……。
……。
……っ?
「はっ? 本当に何言ってんのっ?」
後退りをしようとして、背後が壁だと思い出した。後退りできない代わりに唯翔は高人を睨む。
高人はおかしくなったのではないか。相手は兄だ。それも完全に血が繋がっている。
そんな兄さんを、好き……?
俺が……?
心臓がドクドクと脈打つ。
確かに昔から、自信に満ちたところや自分と違ってコロコロと変わる表情が好きだとずっと思ってはいた。だがそれは兄として好きで憧れているだけで他の感情なんてない。はずだ。
「高人、おかしいんじゃないの」
「おかしいのは俺かー?」
高人はニヤニヤと嫌な笑みを浮かべて唯翔を見てきた。腹立たしいと唯翔はまた高人を睨む。
「自分の感情、決めつけねーでよく考えてみろよ。だいたいお兄ちゃん大好きなくせに頼ってくれねーからってつむじ曲げる弟ってのが違うだろ。甘えさせてくれねーって拗ねるならまだしもよ」
「何で俺が甘えさせてくれないって拗ねるんだよ。むしろ甘えて欲しいって言ってんだろ」
「だからそれな」
甘えて欲しいという気持ちのどこがおかしいのかわからない。大切な兄だからこそいい格好つけたりしないで弟である自分に甘えて欲しいと思うことの、どこがおかしいのか。
……。
……見失っているのはこの辺りなのか。
泣かせたり困らせたりしたくない。明るくて自信に満ちた蒼羽でいて欲しい。それでいて、唯翔を頼って欲しい。
この気持ちは弟の持つ感情じゃなかったのか?
……好きな相手への、気持ち……?
ぼんやりと考えていた唯翔は、いきなり自分の顔がおかしなほど熱くなるのを感じた。
0
あなたにおすすめの小説
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。
原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。
「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」
破滅フラグを回避するため、俺は決意した。
主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。
しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。
「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」
いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!?
全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ!
小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!
兄弟カフェ 〜僕達の関係は誰にも邪魔できない〜
紅夜チャンプル
BL
ある街にイケメン兄弟が経営するお洒落なカフェ「セプタンブル」がある。真面目で優しい兄の碧人(あおと)、明るく爽やかな弟の健人(けんと)。2人は今日も多くの女性客に素敵なひとときを提供する。
ただし‥‥家に帰った2人の本当の姿はお互いを愛し、甘い時間を過ごす兄弟であった。お店では「兄貴」「健人」と呼び合うのに対し、家では「あお兄」「ケン」と呼んでぎゅっと抱き合って眠りにつく。
そんな2人の前に現れたのは、大学生の幸成(ゆきなり)。純粋そうな彼との出会いにより兄弟の関係は‥‥?
魔法学校の城に囚われている想い人♡を救い出して結婚したい天才有能美形魔術師(強火執着)の話
ぱふぇ
BL
名門魔法学校を首席で卒業し、若くして国家機関のエースに上り詰めた天才魔術師パドリグ・ウインズロー(26歳)。顔よし、頭脳よし、キャリアよし! さぞかしおモテになるんでしょう? ええ、モテますとも。でも問題がある。十年越しの想い人に、いまだに振り向いてもらえないのだ。そんな片思い相手は学生時代の恩師・ハウベオル先生(48歳屈強男性)。無愛想で不器用、そしてある事情から、魔法学校の城から一歩も出られない身の上。先生を外の世界に連れ出すまで、全力求婚は止まらない!
26歳魔術師(元生徒)×48歳魔術師(元教師)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる