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6話
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いつの間にか眠っていたらしい。
蒼羽は目を覚ますと体を起こし、首をぐるりと回した。ボキボキと鳴る。まだ怠いと言えば怠いが、朝に比べるとずいぶん楽になった気がする。
「薬、効いたかな……」
それに酷い汗をかいている。眠っている間に熱でも上がったのだろうか。それとも治る前兆か何かだろうか。とにかく汗をかくのはいいことだと聞いたことがある。
「にしてもかき過ぎ……ドライの意味ねーよ……汗、気持ちわりぃ」
寝る前につけていたドライ設定のエアコンを切ると、蒼羽は立ち上がろうとしてよろめいた。
具合が悪かったから──ではない。気楽なことに一瞬忘れていたようだが、唯翔に殴られ兄と思いたくないと言われたのを思い出したのだ。
「……ゆい」
兄と思いたくないは酷すぎないだろうか。こちとら、兄としてではない邪な気持ちを抱いているからこそ、むしろいい兄であろうとしているというのに、それは酷すぎないだろうか。
そういえば高人は足りないと言っていた。
「お兄ちゃんとしての努力が足りねーのか……?」
元々ちゃんと弟として見ていた昔から、唯翔がかわいすぎてひたすら頼れる兄でいたいと思っていた。なのでその後少々道を外してヤンキーぶっても、邪な願望妄想に苛まれても、その気持ちだけは大切にしてきたつもりだ。だから余計にとても切ない。
今抱いている「好き」は兄としての好きとは全く異なる好きだし、まず無理だとわかっていても唯翔にも振り向いて貰えたら最高だろうにと思いつつも、やはり弟には兄としても慕われたいと思う。
「あ、また泣きそうになってきた」
風邪のせいだか悲しみのせいだかわからない、少し出てきた鼻水をすすりながら、蒼羽は着替えを用意して部屋を出た。
汗を流せば体だけでなく気持ちも少しはすっきりするかもしれない。浴室にふらふらと向かうと、蒼羽は湯を溜めつつ何度かため息を吐きながら体を洗った。泡を流すと、まだ溜まりきっていない湯船に浸かる。それでも湯は体を解し浸透するかのように寛がせてくれた。しばらくするとちょうどいい感じに溜まったので蛇口を止める。
改めて座り直し、湯の気持ちよさに伸びをしていると出入口のドアが開いた。そこにはポカンとした裸の唯翔が立っている。
「ゆい……?」
「な、何、で」
「何で? って汗かいたし……」
「寝てたはずじゃ」
「普通に、起きたんだよ。そうだ、あ、あのさ、ゆい。よかったら一緒に入……」
「入らねーよ!」
驚きつつも、ぎこちなく笑いかけると誘っている途中でムッとした顔をされながら断られた。と同時に思い切りドアを閉められる。
ああ、まだ怒ってる……きっと兄と思いたくないから風呂も一緒に入ってくれないんだ……!
嘆くように頭を湯船に沈めていく。激しく落ち込んだ。
だというのに、脳裏には今しがた見た唯翔の裸が思い切り浮かんでくる。
……勃った……。
一緒に入らなくてよかったのかもしれない。兄として、この情けない姿はちょっと見られたくない。
自分も湯に浸かってはいても恐らくそれなりに裸を見られただろうが、それは男として全然平気だったりする。今までも彼女に見られようが恥ずかしいと思ったことはない。
もちろん、そういった行為に及ぶ場合に勃起しているものを見られるのも恥ずかしくはないが、今は別だ。弟の裸を見て勃っている状況はさすがに堂々とはしていられない。
……気づかれても説明できねーもんな……。
微妙な気持ちになりながら、とりあえず悲しみに浸るか何かしてやり過ごそうと蒼羽は思った。だというのにひたすら唯翔の裸が浮かぶ。
今は喧嘩を悲しむ時じゃねーの?
俺、猿なの? つかバカなの?
いや、とりあえず期末テストの結果もよかったよな?
数学なんて特に余裕だっただろ?
なのに何で勃ってんの?
やっぱりバカなの?
気を逸らすためにもぐるぐるとそんなことを脳内で呟くが、やはり裸が消えてくれない。
最近一緒に風呂なんて入ることなかったもんな……。思ってたよりしっかりとした体つきだったな。ちんこも大人だった……。
「っバカなのかっ?」
蒼羽は頭を抱えた。多分風邪のせいだ。そう思うことにする。
無心になるため、湯船から出て洗うつもりはなかった頭も洗った。そして浴室から出ると洗面所でしっかり髪を乾かす。ドライヤーを当てて乾かすことに専念していたら何とかおさまったようだ。
代わりにまた悲しみが襲ってきた。だが兄としてこのままはよくないと気合いを入れる。リビングなどにはいないので部屋だろうかと唯翔の部屋へ向かった。
ドアをノックしてもだが返事がない。
「ゆい?」
もう一度ノックしながら呼びかけると「どっかいけ」と中から聞こえてきた。
泣き崩れていいかな……。
そう思いながらも気力を奮い立たせる。
「ゆい、何か気に触ったこと、俺したんだよな? ごめんな?」
「……」
「ごめんって言いつつも、俺、わかってなくて……。それもごめん。なぁ、俺、何したんだ? 言ってくれ。直すから」
「今は話したくない」
「ゆい……」
やはり泣こう。自分の部屋で。
「……わかった……でも……」
「寝てろよ。風邪引いてんだから……その……スポドリ買ってきてるから……それ、飲んでおいて」
「っゆい……! っありがとう!」
いっそドアを抱きしめたくなるのを堪え、礼を告げると蒼羽は一気に足取りが軽くなった。
蒼羽は目を覚ますと体を起こし、首をぐるりと回した。ボキボキと鳴る。まだ怠いと言えば怠いが、朝に比べるとずいぶん楽になった気がする。
「薬、効いたかな……」
それに酷い汗をかいている。眠っている間に熱でも上がったのだろうか。それとも治る前兆か何かだろうか。とにかく汗をかくのはいいことだと聞いたことがある。
「にしてもかき過ぎ……ドライの意味ねーよ……汗、気持ちわりぃ」
寝る前につけていたドライ設定のエアコンを切ると、蒼羽は立ち上がろうとしてよろめいた。
具合が悪かったから──ではない。気楽なことに一瞬忘れていたようだが、唯翔に殴られ兄と思いたくないと言われたのを思い出したのだ。
「……ゆい」
兄と思いたくないは酷すぎないだろうか。こちとら、兄としてではない邪な気持ちを抱いているからこそ、むしろいい兄であろうとしているというのに、それは酷すぎないだろうか。
そういえば高人は足りないと言っていた。
「お兄ちゃんとしての努力が足りねーのか……?」
元々ちゃんと弟として見ていた昔から、唯翔がかわいすぎてひたすら頼れる兄でいたいと思っていた。なのでその後少々道を外してヤンキーぶっても、邪な願望妄想に苛まれても、その気持ちだけは大切にしてきたつもりだ。だから余計にとても切ない。
今抱いている「好き」は兄としての好きとは全く異なる好きだし、まず無理だとわかっていても唯翔にも振り向いて貰えたら最高だろうにと思いつつも、やはり弟には兄としても慕われたいと思う。
「あ、また泣きそうになってきた」
風邪のせいだか悲しみのせいだかわからない、少し出てきた鼻水をすすりながら、蒼羽は着替えを用意して部屋を出た。
汗を流せば体だけでなく気持ちも少しはすっきりするかもしれない。浴室にふらふらと向かうと、蒼羽は湯を溜めつつ何度かため息を吐きながら体を洗った。泡を流すと、まだ溜まりきっていない湯船に浸かる。それでも湯は体を解し浸透するかのように寛がせてくれた。しばらくするとちょうどいい感じに溜まったので蛇口を止める。
改めて座り直し、湯の気持ちよさに伸びをしていると出入口のドアが開いた。そこにはポカンとした裸の唯翔が立っている。
「ゆい……?」
「な、何、で」
「何で? って汗かいたし……」
「寝てたはずじゃ」
「普通に、起きたんだよ。そうだ、あ、あのさ、ゆい。よかったら一緒に入……」
「入らねーよ!」
驚きつつも、ぎこちなく笑いかけると誘っている途中でムッとした顔をされながら断られた。と同時に思い切りドアを閉められる。
ああ、まだ怒ってる……きっと兄と思いたくないから風呂も一緒に入ってくれないんだ……!
嘆くように頭を湯船に沈めていく。激しく落ち込んだ。
だというのに、脳裏には今しがた見た唯翔の裸が思い切り浮かんでくる。
……勃った……。
一緒に入らなくてよかったのかもしれない。兄として、この情けない姿はちょっと見られたくない。
自分も湯に浸かってはいても恐らくそれなりに裸を見られただろうが、それは男として全然平気だったりする。今までも彼女に見られようが恥ずかしいと思ったことはない。
もちろん、そういった行為に及ぶ場合に勃起しているものを見られるのも恥ずかしくはないが、今は別だ。弟の裸を見て勃っている状況はさすがに堂々とはしていられない。
……気づかれても説明できねーもんな……。
微妙な気持ちになりながら、とりあえず悲しみに浸るか何かしてやり過ごそうと蒼羽は思った。だというのにひたすら唯翔の裸が浮かぶ。
今は喧嘩を悲しむ時じゃねーの?
俺、猿なの? つかバカなの?
いや、とりあえず期末テストの結果もよかったよな?
数学なんて特に余裕だっただろ?
なのに何で勃ってんの?
やっぱりバカなの?
気を逸らすためにもぐるぐるとそんなことを脳内で呟くが、やはり裸が消えてくれない。
最近一緒に風呂なんて入ることなかったもんな……。思ってたよりしっかりとした体つきだったな。ちんこも大人だった……。
「っバカなのかっ?」
蒼羽は頭を抱えた。多分風邪のせいだ。そう思うことにする。
無心になるため、湯船から出て洗うつもりはなかった頭も洗った。そして浴室から出ると洗面所でしっかり髪を乾かす。ドライヤーを当てて乾かすことに専念していたら何とかおさまったようだ。
代わりにまた悲しみが襲ってきた。だが兄としてこのままはよくないと気合いを入れる。リビングなどにはいないので部屋だろうかと唯翔の部屋へ向かった。
ドアをノックしてもだが返事がない。
「ゆい?」
もう一度ノックしながら呼びかけると「どっかいけ」と中から聞こえてきた。
泣き崩れていいかな……。
そう思いながらも気力を奮い立たせる。
「ゆい、何か気に触ったこと、俺したんだよな? ごめんな?」
「……」
「ごめんって言いつつも、俺、わかってなくて……。それもごめん。なぁ、俺、何したんだ? 言ってくれ。直すから」
「今は話したくない」
「ゆい……」
やはり泣こう。自分の部屋で。
「……わかった……でも……」
「寝てろよ。風邪引いてんだから……その……スポドリ買ってきてるから……それ、飲んでおいて」
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