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8話
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「そういえぱ風邪はもういいのか」
プールへ向かう途中、高人に聞かれて蒼羽はこくりと頷いた。すると頭を撫でられる。
「おい、ガキ扱いすんじゃねぇ」
それなりに高い自分よりさらに背のある高人を睨み上げると鼻で笑われた。
「軽率に風邪引いたり弟飛び出させたりしてるやつに偉そうに言われてもな」
「……ぅ」
「で、ユイももういいのか?」
「あー……うん、多分……? 少なくとも完全に兄拒否されてる訳じゃねーと思う……」
あれからもしばらくはぎこちない感じだったが、一応今は蒼羽が話しかけると普通に答えてくれる。
「思う?」
「ん……」
答えてはくれるが、素っ気ない。もちろん最近は既に昔のようにひたすら蒼羽の後をついてきてなつきまくってくれていた唯翔は行方不明だったが、それでも今よりはもう少し親しみがあったような気がする。
今も敵意むき出しという酷さはないのだが、どうにも素っ気ない。言われた「兄だと今は思いたくない」という言葉を彷彿としてしまう。
「拒否されてねーとは思うけどさ、やっぱあんま兄ちゃんとして好かれてない気がしてしまうんだよな」
「あぁ、兄ちゃんとしてな」
蒼羽の言葉に高人が頷いてきた。口調はいつもと変わらないが、どうにも言い方が引っかかる。
「は? 何だよ今の言い方はよ」
「まんま」
「まんまじゃわかんねーだろ」
「あぁ、間違えた。別に意味はないって言おうとしたんだったわ」
「はぁ? 全然違うだろーが! 俺からしたら意味ねーんじゃなくて意味わかんねーんだわ、何それ」
道端で向かい合っていると、通りかかった女性たち何人かが何やらこそこそ話しているのに気づいた。
「……やだ……ヤンキーの喧嘩……?」
「怖い」
「でもカッコいい」
「顔よくても怖いでしょ……早く行こ……」
蒼羽は微妙な表情で高人から顔を逸らした。
「聞いたか、カッコいいってよ」
「色々すっ飛ばしてそこかよ。ゆりちゃんに言いつけんぞ」
「別に浮気してねーだろ。……つか何でお前と裸の付き合いせんとなんだよな、ユリカとのほうがいい」
「そー言うなら俺だってゆりちゃんのがいーわ。つか裸の付き合いとか言うなよ、そんなの俺だってヤだわ。水着着んだろが」
たまに手伝いに行っている知り合いの便利屋からプールのただ券を二枚貰ったのはいいが、今の蒼羽にはもちろん彼女はいない。女友だちはいるにはいるが、二人で行くのは何となく違う気がする。
できるのなら唯翔と行きたかった。気持ちとしては邪な気持ちしかないが、それを出さなければただ単に「兄弟で仲良くプール」というだけのはずだ。そう思い唯翔に「二人でプールへ行かないか」と誘ったら引かれた。
「いい歳した男ってだけでも微妙なのに兄弟でとかあり得ない」
そんな風に言われ、兄弟としてもなしなのかと軽くショックを受けた。そして結局「いい歳した男同士」で二人、プールに向かっている。
「なぁ、兄弟でプールって、なしなの」
「俺、一人っ子だからわかんねーわ」
「役に立たねーな」
「プール付き合ってやってるだろ」
「そんな俺が無理やり強要したみたいに……! お前、ただって聞いたら即答だったくせに!」
向かい合って言い合うと、どうにもガンを付け合っているように見えるようなので歩きながら淡々と前を向いて言い合った。
少し落ち込み気味だった気分はだが、プールへ来ると向上した。
「女の子多いのな」
「カップルもな」
「それはどうでもいいんだよ。色とりどりの水着が華やかよなぁ」
蒼羽はニコニコと頷く。唯翔が大好きだしそのせいでずっと彼女もいないが、だからといって女に興味がない訳ではない。
「目の保養……」
「お前、飢えた猿みたいだぞ」
「別に飢えてねーわ。若い女の子は華やかなのがいいなと菩薩のような気持ちで見てるだけだろ」
「もし本当にそうならそっちのが気持ち悪いけどな」
高人は泳ぐよりは程よく焼くのが目的なのか、ちょくちょくプールサイドで寛ぎながら何か飲んだり食べたりしている。蒼羽としては一緒にはしゃいだりしたいのだが、ただそれを高人相手に言葉にすると微妙になりそうなのでそういう時は仕方なく一人で泳いだりした。その際に何度か女性に声をかけられたが「ごめんね」とその度に断った。
「お前、何度かナンパされてなかったか」
一緒に昼飯を食べている時に高人が聞いてくる。
「あー、まぁ。お前はされてねーの? 俺の勝ち?」
「いつ勝負したよ」
「つかお前は見た目マジいかついもんな。俺っていう緩和材ねーと女の子も寄ってこねーだろ」
ニコニコと言うと鼻で笑われた。
「お前はただ単にチャラそうなヤンキーだよ。というか長らく彼女いねーやつに何も言われたくねーな」
そう言われるとどうしようもない。
「っつってもあれだ、俺が作らねーだけで機会がねー訳では……」
「じゃあ聞くけど、女好きなのに何で作らねーの」
それは弟が性的に好きだからです。
「……俺の勝手だろ」
「まぁ、そりゃそうだ」
高人はニヤリと笑ってきた。それが何というか、蒼羽の気持ちを見透かされているようで落ち着かなかった。
プールへ向かう途中、高人に聞かれて蒼羽はこくりと頷いた。すると頭を撫でられる。
「おい、ガキ扱いすんじゃねぇ」
それなりに高い自分よりさらに背のある高人を睨み上げると鼻で笑われた。
「軽率に風邪引いたり弟飛び出させたりしてるやつに偉そうに言われてもな」
「……ぅ」
「で、ユイももういいのか?」
「あー……うん、多分……? 少なくとも完全に兄拒否されてる訳じゃねーと思う……」
あれからもしばらくはぎこちない感じだったが、一応今は蒼羽が話しかけると普通に答えてくれる。
「思う?」
「ん……」
答えてはくれるが、素っ気ない。もちろん最近は既に昔のようにひたすら蒼羽の後をついてきてなつきまくってくれていた唯翔は行方不明だったが、それでも今よりはもう少し親しみがあったような気がする。
今も敵意むき出しという酷さはないのだが、どうにも素っ気ない。言われた「兄だと今は思いたくない」という言葉を彷彿としてしまう。
「拒否されてねーとは思うけどさ、やっぱあんま兄ちゃんとして好かれてない気がしてしまうんだよな」
「あぁ、兄ちゃんとしてな」
蒼羽の言葉に高人が頷いてきた。口調はいつもと変わらないが、どうにも言い方が引っかかる。
「は? 何だよ今の言い方はよ」
「まんま」
「まんまじゃわかんねーだろ」
「あぁ、間違えた。別に意味はないって言おうとしたんだったわ」
「はぁ? 全然違うだろーが! 俺からしたら意味ねーんじゃなくて意味わかんねーんだわ、何それ」
道端で向かい合っていると、通りかかった女性たち何人かが何やらこそこそ話しているのに気づいた。
「……やだ……ヤンキーの喧嘩……?」
「怖い」
「でもカッコいい」
「顔よくても怖いでしょ……早く行こ……」
蒼羽は微妙な表情で高人から顔を逸らした。
「聞いたか、カッコいいってよ」
「色々すっ飛ばしてそこかよ。ゆりちゃんに言いつけんぞ」
「別に浮気してねーだろ。……つか何でお前と裸の付き合いせんとなんだよな、ユリカとのほうがいい」
「そー言うなら俺だってゆりちゃんのがいーわ。つか裸の付き合いとか言うなよ、そんなの俺だってヤだわ。水着着んだろが」
たまに手伝いに行っている知り合いの便利屋からプールのただ券を二枚貰ったのはいいが、今の蒼羽にはもちろん彼女はいない。女友だちはいるにはいるが、二人で行くのは何となく違う気がする。
できるのなら唯翔と行きたかった。気持ちとしては邪な気持ちしかないが、それを出さなければただ単に「兄弟で仲良くプール」というだけのはずだ。そう思い唯翔に「二人でプールへ行かないか」と誘ったら引かれた。
「いい歳した男ってだけでも微妙なのに兄弟でとかあり得ない」
そんな風に言われ、兄弟としてもなしなのかと軽くショックを受けた。そして結局「いい歳した男同士」で二人、プールに向かっている。
「なぁ、兄弟でプールって、なしなの」
「俺、一人っ子だからわかんねーわ」
「役に立たねーな」
「プール付き合ってやってるだろ」
「そんな俺が無理やり強要したみたいに……! お前、ただって聞いたら即答だったくせに!」
向かい合って言い合うと、どうにもガンを付け合っているように見えるようなので歩きながら淡々と前を向いて言い合った。
少し落ち込み気味だった気分はだが、プールへ来ると向上した。
「女の子多いのな」
「カップルもな」
「それはどうでもいいんだよ。色とりどりの水着が華やかよなぁ」
蒼羽はニコニコと頷く。唯翔が大好きだしそのせいでずっと彼女もいないが、だからといって女に興味がない訳ではない。
「目の保養……」
「お前、飢えた猿みたいだぞ」
「別に飢えてねーわ。若い女の子は華やかなのがいいなと菩薩のような気持ちで見てるだけだろ」
「もし本当にそうならそっちのが気持ち悪いけどな」
高人は泳ぐよりは程よく焼くのが目的なのか、ちょくちょくプールサイドで寛ぎながら何か飲んだり食べたりしている。蒼羽としては一緒にはしゃいだりしたいのだが、ただそれを高人相手に言葉にすると微妙になりそうなのでそういう時は仕方なく一人で泳いだりした。その際に何度か女性に声をかけられたが「ごめんね」とその度に断った。
「お前、何度かナンパされてなかったか」
一緒に昼飯を食べている時に高人が聞いてくる。
「あー、まぁ。お前はされてねーの? 俺の勝ち?」
「いつ勝負したよ」
「つかお前は見た目マジいかついもんな。俺っていう緩和材ねーと女の子も寄ってこねーだろ」
ニコニコと言うと鼻で笑われた。
「お前はただ単にチャラそうなヤンキーだよ。というか長らく彼女いねーやつに何も言われたくねーな」
そう言われるとどうしようもない。
「っつってもあれだ、俺が作らねーだけで機会がねー訳では……」
「じゃあ聞くけど、女好きなのに何で作らねーの」
それは弟が性的に好きだからです。
「……俺の勝手だろ」
「まぁ、そりゃそうだ」
高人はニヤリと笑ってきた。それが何というか、蒼羽の気持ちを見透かされているようで落ち着かなかった。
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