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4話
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「そーま、お前また一人で昼、食べてただろう」
部活を終えて帰ってくると、同室の剛が呆れたように奏真を見てきた。
「……今日は弁当じゃなかったから……」
「何だよその理由。今年はクラスに陸上部のヤツけっこういるんだろ? 食堂とかでもそいつらと食えばいいじゃないか」
剛がますます呆れたような微妙な顔をしてくるが、何故そういう顔をされるのか昔から奏真にはよくわからない。
「弁当の時は教室で誰かと食べてる」
「うーん……そういうことじゃなくてな……」
学校には寮がある。ただ、通えるなら自宅から通っても構わない。奏真の自宅から学校まではさほど離れてはいないので通おうと思えば通えるのだが、面倒だと思った奏真は入学当初から寮生活をしている。ただし連休などはわりと自宅へ帰る。
清田 剛(きよた ごう)は奏真より二つ上の幼馴染みだ。自宅も奏真の自宅と近い。奏真がこの学校に入学し、入寮するまでは自宅から通っていた。だが奏真が寮に入ると知ると、同じように寮の手続きを取ってきた。しかも同じ部屋だ。
基本的に何でも面倒臭いと思っている奏真は唖然とし、そして喜んだ。何となく同じ学年の者と一緒の部屋だと思っていたのでびっくりしたのと、これで知らない同居人と一から知り合っていかなくてもいいと思うと嬉しくなったからだ。
ちなみに同室と言っても、狭いながらも寝室はわかれている。小さいがキッチンとダイニング的な部屋が共通スペースとなっていた。そこがそれぞれ各部屋の出入口にもなっており、今も部活から帰ってきた奏真が入ると、剛は丁度冷蔵庫からお茶のペットボトルを取り出しているところだった。
剛は昔から世話焼きタイプだ。普段から友人などの世話もつい焼いてしまうらしく、この間部屋に遊びに来た剛の友だちは「お母さん」などとふざけて剛のことを呼んでいた。
そんな剛からしたら奏真は世話を焼かずにはいられないらしい。料理も困らない程度にできるというか、むしろ食べることが好きなだけにそこそこ得意だし、一通り身の回りのことくらいはできる奏真としては、何故自分に対して他の相手以上に世話を焼いてくるのかが解せない。
今も奏真はとりあえず手を洗った後、同じく冷蔵庫を漁り、お茶ではなく買い置きしてあるプリンを手にしつつ剛に言えば「普段からのお前の生活を省みろ」と言われた。
「朝、ちゃんと起きてる」
「俺が起こしてるけどな」
「朝ご飯、ごうの分も作ることあるし気が向けば弁当も作る」
「寮にも食堂あるけど、まあお前の飯は美味いよな」
「学校の授業もちゃんと受けてる」
「よく寝てるらしいけどな」
「部活もしてる」
「陸上、意外にも好きだもんな」
「夜もちゃんと寝てる」
「まぁ、夜更かしタイプではないよな」
「……どこに世話焼かれる要素があるのかわからないじゃないか……」
「いや、そこはかとなく漂ってるぞ。あと、そういうことじゃないんだ。お前が口にしてない、何つーか行間を読めっつーか」
「ごうの言ってること、難しい」
テーブルに座ってプリンを口に入れた後、困惑した顔を向けた奏真に、剛は苦笑しながらため息ついてきた。
「とりあえずもっと学校生活を楽しめ」
そして頭を撫でてくる。奏真よりほぼ十センチは背が高いであろう剛はそこそこ整った顔もしており、学校の女子にもそこそこ人気なようだ。いわゆる「リア充」という感じの学校生活を送っているのだろうと奏真は微妙な顔する。
「何でそんな顔してくるんだ」
「そういうのは面倒臭い……し、俺は俺の日々を楽しんでるよ」
「うーん……」
剛は笑みを浮かべつつも困ったような顔をしながら、また奏真の頭を撫でた。
剛には小学生の妹がいる。確か今は四年生だっただろうか。恐らく奏真にも妹に対してと同じような扱いをしているのだろう。それにしても普通はいくら年下だからといってそんなに男の頭を撫でたりはしないくらい、奏真にもわかる。
「……いや、ごうならあり得る、のかな」
「何が?」
「ううん、お母さん、何でもないよ」
「誰がお母さんだ。そこはせめてお兄ちゃんにしてくれ」
「俺の兄さんはただひとりなんで」
「それを言うならお前のお母さんもただひとりだろ、ブラコン」
「……あ、そういえばさ、今日学食が煩かった」
ふと思い出し、奏真は剛を見上げる。
「煩い? 混んでたのか?」
「……一部が混んで、た……?」
「何だそれ」
「誰かを囲って皆が騒いでた感じだった。今日のAランチはこだわり地鶏の親子丼だったのに集中できなくて鬱陶しかった」
奏真が実際鬱陶しそうに言うと、何か思い当たる節でもあるのか、剛は「あー……」と微妙な顔で苦笑している。
「何? 何か知ってるの?」
「いや、まぁ、多分あいつがいたのかなって、な」
「あいつ?」
「有名人」
「ふーん。あ、ごうも親子丼食べた?」
有名人に関しては皆目興味がない奏真はすぐにランチのことに関心がいった。それに対し剛は苦笑しながら「俺はラーメン食った」と答えてきた。
その数日後、奏真は久しぶりに学校を抜け出して買ってきたスペシャルデラックスサンドを学校まで待てず、道中ガサゴソと紙袋から取り出し少しずつ堪能しながら戻るべく歩いていた。
曲がり角へ差し掛かる前に、奏真はこちらへ向かってくる誰かに気づく。特に何も考えず少し避けたのだが、向こうは考えごとでもしているのか奏真めがけて突進してきた。
その時に落ちたレタスをさすがに食べはしなかったが、とても残念だった。ぶつかってきた相手が去った後に拾うと「この一枚すら計算されて配分されてるのに……明日も抜け出して買うか……」とぶつぶつ言いながら紙袋の底へ入れた。
部活を終えて帰ってくると、同室の剛が呆れたように奏真を見てきた。
「……今日は弁当じゃなかったから……」
「何だよその理由。今年はクラスに陸上部のヤツけっこういるんだろ? 食堂とかでもそいつらと食えばいいじゃないか」
剛がますます呆れたような微妙な顔をしてくるが、何故そういう顔をされるのか昔から奏真にはよくわからない。
「弁当の時は教室で誰かと食べてる」
「うーん……そういうことじゃなくてな……」
学校には寮がある。ただ、通えるなら自宅から通っても構わない。奏真の自宅から学校まではさほど離れてはいないので通おうと思えば通えるのだが、面倒だと思った奏真は入学当初から寮生活をしている。ただし連休などはわりと自宅へ帰る。
清田 剛(きよた ごう)は奏真より二つ上の幼馴染みだ。自宅も奏真の自宅と近い。奏真がこの学校に入学し、入寮するまでは自宅から通っていた。だが奏真が寮に入ると知ると、同じように寮の手続きを取ってきた。しかも同じ部屋だ。
基本的に何でも面倒臭いと思っている奏真は唖然とし、そして喜んだ。何となく同じ学年の者と一緒の部屋だと思っていたのでびっくりしたのと、これで知らない同居人と一から知り合っていかなくてもいいと思うと嬉しくなったからだ。
ちなみに同室と言っても、狭いながらも寝室はわかれている。小さいがキッチンとダイニング的な部屋が共通スペースとなっていた。そこがそれぞれ各部屋の出入口にもなっており、今も部活から帰ってきた奏真が入ると、剛は丁度冷蔵庫からお茶のペットボトルを取り出しているところだった。
剛は昔から世話焼きタイプだ。普段から友人などの世話もつい焼いてしまうらしく、この間部屋に遊びに来た剛の友だちは「お母さん」などとふざけて剛のことを呼んでいた。
そんな剛からしたら奏真は世話を焼かずにはいられないらしい。料理も困らない程度にできるというか、むしろ食べることが好きなだけにそこそこ得意だし、一通り身の回りのことくらいはできる奏真としては、何故自分に対して他の相手以上に世話を焼いてくるのかが解せない。
今も奏真はとりあえず手を洗った後、同じく冷蔵庫を漁り、お茶ではなく買い置きしてあるプリンを手にしつつ剛に言えば「普段からのお前の生活を省みろ」と言われた。
「朝、ちゃんと起きてる」
「俺が起こしてるけどな」
「朝ご飯、ごうの分も作ることあるし気が向けば弁当も作る」
「寮にも食堂あるけど、まあお前の飯は美味いよな」
「学校の授業もちゃんと受けてる」
「よく寝てるらしいけどな」
「部活もしてる」
「陸上、意外にも好きだもんな」
「夜もちゃんと寝てる」
「まぁ、夜更かしタイプではないよな」
「……どこに世話焼かれる要素があるのかわからないじゃないか……」
「いや、そこはかとなく漂ってるぞ。あと、そういうことじゃないんだ。お前が口にしてない、何つーか行間を読めっつーか」
「ごうの言ってること、難しい」
テーブルに座ってプリンを口に入れた後、困惑した顔を向けた奏真に、剛は苦笑しながらため息ついてきた。
「とりあえずもっと学校生活を楽しめ」
そして頭を撫でてくる。奏真よりほぼ十センチは背が高いであろう剛はそこそこ整った顔もしており、学校の女子にもそこそこ人気なようだ。いわゆる「リア充」という感じの学校生活を送っているのだろうと奏真は微妙な顔する。
「何でそんな顔してくるんだ」
「そういうのは面倒臭い……し、俺は俺の日々を楽しんでるよ」
「うーん……」
剛は笑みを浮かべつつも困ったような顔をしながら、また奏真の頭を撫でた。
剛には小学生の妹がいる。確か今は四年生だっただろうか。恐らく奏真にも妹に対してと同じような扱いをしているのだろう。それにしても普通はいくら年下だからといってそんなに男の頭を撫でたりはしないくらい、奏真にもわかる。
「……いや、ごうならあり得る、のかな」
「何が?」
「ううん、お母さん、何でもないよ」
「誰がお母さんだ。そこはせめてお兄ちゃんにしてくれ」
「俺の兄さんはただひとりなんで」
「それを言うならお前のお母さんもただひとりだろ、ブラコン」
「……あ、そういえばさ、今日学食が煩かった」
ふと思い出し、奏真は剛を見上げる。
「煩い? 混んでたのか?」
「……一部が混んで、た……?」
「何だそれ」
「誰かを囲って皆が騒いでた感じだった。今日のAランチはこだわり地鶏の親子丼だったのに集中できなくて鬱陶しかった」
奏真が実際鬱陶しそうに言うと、何か思い当たる節でもあるのか、剛は「あー……」と微妙な顔で苦笑している。
「何? 何か知ってるの?」
「いや、まぁ、多分あいつがいたのかなって、な」
「あいつ?」
「有名人」
「ふーん。あ、ごうも親子丼食べた?」
有名人に関しては皆目興味がない奏真はすぐにランチのことに関心がいった。それに対し剛は苦笑しながら「俺はラーメン食った」と答えてきた。
その数日後、奏真は久しぶりに学校を抜け出して買ってきたスペシャルデラックスサンドを学校まで待てず、道中ガサゴソと紙袋から取り出し少しずつ堪能しながら戻るべく歩いていた。
曲がり角へ差し掛かる前に、奏真はこちらへ向かってくる誰かに気づく。特に何も考えず少し避けたのだが、向こうは考えごとでもしているのか奏真めがけて突進してきた。
その時に落ちたレタスをさすがに食べはしなかったが、とても残念だった。ぶつかってきた相手が去った後に拾うと「この一枚すら計算されて配分されてるのに……明日も抜け出して買うか……」とぶつぶつ言いながら紙袋の底へ入れた。
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