ドラマのような恋を

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36話 ※

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 細かいことを考えるのはやめだ。

 横たわる奏真に覆い被さりながら葵は思った。またキスは嫌だと言われて凹んだが、今のやりとりで何となく感じた。文句しか言われていない気もするしよくわからないまま調子を狂わされているが、奏真は本当にただ、わからないのだ。戸惑っている。
 好きじゃないからわからない、というよりも好きそのものの感情すらどう捉えたらいいのかわからないのかもしれない。
 食べ物や陸上、音楽が好きというのと誰かを好きになる感情は違う。だとしたらもう少し強引に進めたほうがいいのではないかと葵は思った。そこでまた本当に嫌だと言われたら止める。
 聞くから駄目なのかもしれない。今まではいちいち聞いていた。葵なりの優しさや配慮のつもりだったが、むしろ余計なことだったのかもしれない。
 大抵のことがどうでもよさそうな奏真でも、さすがに自分の体に関することに全く関心を寄せない訳がない。例えばキスをしたことがないのによくわからないまましたくないと思って嫌だと言っただけかもしれない。

 ……本気で嫌なのかもしんねーけどよ……。

 それを言うなら逆に、葵を微かにでも意識し出していて、それでキスされたらどうなるかわからないから怖いと思った可能性だってゼロではない。

 はず。多分。

 要は葵もわからないが、奏真もわからないのだ。わかるまで色々やってみればいい。

「な……に……」

 顔を首筋に近づけると、奏真の声がした。ほんの少し驚いている気がする。

「それらしくすんだよ……お前は本気で嫌悪感とか感じた時以外黙ってろ」
「……は……?」
「……安心しろ、お前の唇にキスはしねえよ」

 少し顔を上げてニヤリと口にした後、葵は奏真の首筋に舌を這わせた。小さく奏真の体がピクリと動いたが、構わず続ける。ゆっくり、奏真の脈が通るところ、熱を感じるところへ舌を這わせ、唇でなぞった。時折上を見上げるも、目元はタオルで隠れていてやはり感情が読めない。だが唇をきゅっと閉じている様子に、葵は逆に口元がほころんだ。

「嫌悪感覚えた時以外黙ってろとは言ったけど、やらしー声なら聞かせろ」

 あえてそう言うと少しして「……偉そう」「あと変態……」と奏真がぼそりと返してきた。

「馬鹿やろ、変態なわけあるかよ。男なら普通だろが。好きな相手のやらしー声聞きたくねえやつ、むしろいんの?」

 少し笑いながら言い、そのまま舌で胸の先をなぞった。

「そういうこと言……っは、ぁ」

 言い返そうとしたところで、奏真が慌てたように口を閉じてきた。そういった声を聞けないのは残念だが、今はこれで十分だと葵は愛撫を続けながらまたニヤリと口元を緩めた。 喘ぎ声を出したくない云々はとりあえず置いておいて、今大事なのは奏真がむしろ口を閉じていることだ。気持ち悪い、嫌だと言わないことだ。
 キスの時のように、実際どう思ったのかはわからないが嫌だと言ってきたのと違い、今回は「嫌悪感を覚えたら」と葵は伝えた。わからなくて怯え、つい思わず出そうな「嫌だ」という言葉も嫌悪感を表すことになるかもと奏真は思っている気がする。その上で口を閉じている気がする。受け入れてくれているというよりは、奏真自身もよくわからない何かを試しているような風に葵には思えた。そうであっても、口元が緩まないほうがおかしい。

「好きだ」

 時折言葉にしながら、葵は奏真の唇以外の至るところへキスした。ゆっくりと頭を下げてバスタオルをずらし、奏真の片方の太ももを持った時は「い、……っ」と聞こえてきたが、奏真はその後手で口元を押さえた。
 嫌だと言いかけたのだと思う。だが、それを自ら遮った。
 葵は高揚する気分を噛みしめながら、持ち上げた太ももの内側にキスしていく。女とは違う、筋肉を感じる太ももだが全然興奮できた。ゆっくり、段々と付け根に近づける度に奏真の太ももがびくりと反応している。
 バスタオルの上からはわからなかったが、退けると奏真のものもほんの少しだが反応していた。

 ……よかった……こいつのちんこ、ちゃんと勃つみてえだな……。

 正直、謎の感動を覚えた。大抵何にも興味を覚えない、どうでもよさそうな奏真だけに、もしかしたらそっちの反応すらないのでは、と葵はどこかで恐れていたようだ。
 嫌悪感を口にされないだけでなく、ほんの少しだろうが反応を見せてくれていることに嬉しさを感じながら、葵はそこへも唇をつけた。いきなり手で触れるより、濡れる分摩擦による痛みもないだろうと思った。

「……っ?」

 だがさすがに本気で驚いたからか、奏真が思い切りびくりと体を震わせてきた。だが目元のタオルを取ろうとしないのは怯えというよりは何だろうか、覚悟に近いものを葵は感じた。
 怖いならむしろ様子を見ようとするのではないだろうか。怖いから見たくないと思うのは身の危険を感じていないからだ。男の急所をさらしているだけでなく接触を感じたら反射的に見ようとするのではないだろうか。

「怖いか?」
「……」
「気持ち悪い?」

 すると頭を少し振ってきた。

 やべえ、こいつのこと、めちゃくちゃかわいく感じてんだけど、俺。

「安心、しろ。ひでえことは何もしねーよ。今日はただお前の気持ちいいことだけ……」

 多分平気だろうと思ってはいたが、実際奏真のものに手や口で触れても全然大丈夫だった。むしろかわいくさえ思える。自分についているものと同じものなのに嫌悪感はないし、同じものだからこそある程度どこが気持ちいいかわかるのがありがたくさえ思える。

 つか、平凡なくせにお前、いちいち反応かわいいんだよ泣かせたくなるだろがクソ……!

 必死になって口を押さえている奏真の目元にあったタオルはぐちゃぐちゃになってずれている。隙間から垣間見えた涙目が葵の股関に重苦しい一撃を与えてきた。
 小さく漏れ聞こえてきた、驚いたような声と共に奏真の体が何度かびくびくと痙攣する。と同時に飛び出た白く濁った液や縮んだ奏真のものにすら、葵は愛しさを感じた。
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