花息吹く、大地のように

西崎 劉

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プロローグ

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  今でも彼らを初めて見た時の事を覚えている。  あれは、今は無き故郷の町で豊穣祭が執り行われた秋の事だった。  その日は町全体が眠る事知らずで、大いに盛り上がったものだ。  それでも一晩中踊りあかす事は疲れる事であったので、人々が仮眠を自由に取って再び祭りに参加出来る様に設けられたプレハブが、町の至る所に設置されてあった。プレハブの室内はそう広くは無かったが、それでも軽く二十人はごろ寝出来るほどの広さはあり、この仮眠場に訪れた人々は、親しい誰かと集って夜が明けるまで語り合ったり、毛布を持ち寄って眠ったりする微笑ましい光景が伺えた。  そんな人たちの取り巻く輪から、彼らは離れていた。  逆光で良くは見えないが、鋭い切り付ける刃物を思わせる容貌の女が窓辺に座り、精悍な顔だちの男がその隣に立ち尽くす。  気配は無い。  意識しないとその場に人がいるのか疑うほど、闇に溶け込んだ一対だった。外は晴天だったお陰か、澄み渡る深い闇に降るような星空で、彼らはそれを何をする様子もなく、黙って見ているのだ。  少年は、それをほんの少し離れた場所から友人たちの談話にくるまれたまま、時折眼差しを向けた。
「……セイジュ」
  彼らをチラチラ見ていたのに気付いた幼馴染みであり友人でもある、カイヤ=スルウが服の裾を引く。  振り返った少年…セイジュ=リィに、小さく首を振った。
「彼らに係わる事は利口な事じゃないぞ」
  何故だと言わないばかりに首を傾げるセイジュに、カイヤは肩を竦めて見せた。
「だって、町の者たちが言っている。  あいつらは災いを呼ぶって」
  セイジュは不思議そうに目を瞬いた。
「災い?」
  カイヤは小さく頷き、彼らに顎を杓って示した。
「実際、彼らが立ち寄った場所では、災害や流行り病が跋扈したって噂だ。……中には、戦で焼け出された町もあったというぞ」
  信憑性に欠ける様な出来事の噂をカイヤは口にしたが、後日本当に町が戦火によって失う事となり、カイヤと交わした冗談の様な噂話が、冗談では済まされない事態に陥った。
  カイヤは二つ下の従兄弟、シャン=スルウを連れて焼失した町を出た。  セイジュも幼馴染みと共に町を出たが、多くの戦災に巻き込まれ脱出を図った人々の波に飲まれ、はぐれてしまった。
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