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第二章
出どころは実家でした
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「……分かった。その話は一旦置いとくとして、この食材はどこから持ってきたんだ?勝手に泥棒もどきして、また魔力消費したんじゃないのか?」
「そこはお前に貰った血の対価のオマケ分として、差し引きゼロだ。ちなみにそれらの出所は、お前の屋敷だぞ」
「え?!俺の屋敷から!?」
なんでも、俺(仮契約者)が望まなくても、俺に関連する場所の物なら干渉が可能との事。最も、ちゃん魔力消費はするみたいだけど。
「本当なら原材料じゃなく、出来た料理を持ってこようと思ったんだが…。今、お前の屋敷は料理どころではなさそうだからな」
「いや、今後一切、料理移動させんな!明らかに怪しまれる!……でも……そうか……」
王宮での騒動は、俺の実家にも当然伝わったろう。今頃父さん達やテオ、乳母のマリアや執事のジョナサン達使用人…皆が俺の事を知り、動揺し、絶望している筈だ。
大切な人達を守る為に逃げたけど、その大切な人達をどちらにしろ悲しませてしまった事実に胸が痛む。でも、俺が無事だと知らせる訳にもいかないしな。
…みんな、ごめん。真実を知ったらセオドア父さんからは袋叩きにされそうだけど、それは将来甘んじて受ける覚悟だから、今暫くは耐えていて下さい。
そうして遂に、俺の腹の虫が限界だとばかりに盛大に鳴いた。
…うん。もう色々考えるのは止そう。まずは人間が生きる為の基本、飯を作って食べよう。
「ベル、悪いけど井戸があったらそこから水汲んできてくれ。それとついでに、屋敷にある調味料、バレない程度に少しずつもらって来てくれないか?」
「…悪魔使いの荒い奴だ。対価は後で貰うからな!」
最後はちょっと聞き取れなかったけど、何やらブツブツ文句を言いながらも、ベルは調味料を転移させてくれた。サービスなのか、それらは全て美しい小ぶりな瓶に入っている。
「えーっと、これは塩…こっちは砂糖、日本酒、醤油、味噌…あ、塩麹!やった!これ使ってスープ作ろう!」
塩麹…これはこちらの世界にもあった米を使い、ジャンボロと共に日本酒を造った際、偶然住み着いた麹菌をゲットした事により、作る事の出来た貴重な調味料だ。ちなみに麹菌は味噌と醤油造りにも大活躍してくれた。
ベルが水を大鍋一杯汲んできてくれたので、早速野菜をざっと洗い、皮を剥き始める。そして再び水を汲んできてもらった大鍋の中に、適当な大きさに切った野菜と肉を次々と投入して暖炉の火にかけた。勿論、例のブーケガルニも投入する。
「…お前、高位貴族なのに料理が出来るのか?」
「料理だけじゃなくて、菓子も作れるぞ!」
胸を張って言い放った俺の事を、ベルは残念な子を見るような呆れ顔で見つめた。いいじゃないかよ!人の趣味をとやかく言うな!(言ってないけど)
自慢じゃないが、俺は前世では母子家庭だったので、家事全般なんでも出来る。
特に姉が腐ってからは、仕事で忙しい母共々俺に家事を丸投げしてくれやがったので、特に料理は得意中の得意だ。
うちも決して裕福じゃなかったから、美味しいものをお腹いっぱい食べる為には手作りするしかなかったんだ。それに家族がとても喜んでくれるから、それが嬉しくて気が付いたら色々極めてしまっていた。まあ、この特技のお陰で今現在、こうして助かっている訳なんだけど。人生、学んで損する事は何もない。
ハーブが煮込まれる良い匂いが室内に充満する。おっと、野菜や肉が煮えてきたみたいだ。俺は浮いてきた灰汁を取りつつ塩麹をスープに投入すると、味見をしながら他の調味料もちょこちょこと足していった。
「よし!完成!」
具たっぷり、塩麹のポトフ風スープが出来上がった。うん、旨そうだ。いや、味見したから分かっているんだけど、実際凄く美味い。
俺は木のお椀にスープをたっぷりとよそうと、ベルへと差し出した。
「ほい。まずはベルに」
「あ?何で俺になんだ。俺は人間の食事は基本喰わんぞ」
「いや、考えたんだけど、俺が自主的に与えたものが対価になるんなら、俺が作った食事を食べれば魔力供給になるんじゃないか……って思ってさ」
「………」
「実験だと思って、付き合ってくれよ。ダメだったらまた別のを考えるし」
ベルは無言で暫く考えた後、俺から差し出されたスープを手に取り、少しだけ戸惑いがちに口に含んだ。
「そこはお前に貰った血の対価のオマケ分として、差し引きゼロだ。ちなみにそれらの出所は、お前の屋敷だぞ」
「え?!俺の屋敷から!?」
なんでも、俺(仮契約者)が望まなくても、俺に関連する場所の物なら干渉が可能との事。最も、ちゃん魔力消費はするみたいだけど。
「本当なら原材料じゃなく、出来た料理を持ってこようと思ったんだが…。今、お前の屋敷は料理どころではなさそうだからな」
「いや、今後一切、料理移動させんな!明らかに怪しまれる!……でも……そうか……」
王宮での騒動は、俺の実家にも当然伝わったろう。今頃父さん達やテオ、乳母のマリアや執事のジョナサン達使用人…皆が俺の事を知り、動揺し、絶望している筈だ。
大切な人達を守る為に逃げたけど、その大切な人達をどちらにしろ悲しませてしまった事実に胸が痛む。でも、俺が無事だと知らせる訳にもいかないしな。
…みんな、ごめん。真実を知ったらセオドア父さんからは袋叩きにされそうだけど、それは将来甘んじて受ける覚悟だから、今暫くは耐えていて下さい。
そうして遂に、俺の腹の虫が限界だとばかりに盛大に鳴いた。
…うん。もう色々考えるのは止そう。まずは人間が生きる為の基本、飯を作って食べよう。
「ベル、悪いけど井戸があったらそこから水汲んできてくれ。それとついでに、屋敷にある調味料、バレない程度に少しずつもらって来てくれないか?」
「…悪魔使いの荒い奴だ。対価は後で貰うからな!」
最後はちょっと聞き取れなかったけど、何やらブツブツ文句を言いながらも、ベルは調味料を転移させてくれた。サービスなのか、それらは全て美しい小ぶりな瓶に入っている。
「えーっと、これは塩…こっちは砂糖、日本酒、醤油、味噌…あ、塩麹!やった!これ使ってスープ作ろう!」
塩麹…これはこちらの世界にもあった米を使い、ジャンボロと共に日本酒を造った際、偶然住み着いた麹菌をゲットした事により、作る事の出来た貴重な調味料だ。ちなみに麹菌は味噌と醤油造りにも大活躍してくれた。
ベルが水を大鍋一杯汲んできてくれたので、早速野菜をざっと洗い、皮を剥き始める。そして再び水を汲んできてもらった大鍋の中に、適当な大きさに切った野菜と肉を次々と投入して暖炉の火にかけた。勿論、例のブーケガルニも投入する。
「…お前、高位貴族なのに料理が出来るのか?」
「料理だけじゃなくて、菓子も作れるぞ!」
胸を張って言い放った俺の事を、ベルは残念な子を見るような呆れ顔で見つめた。いいじゃないかよ!人の趣味をとやかく言うな!(言ってないけど)
自慢じゃないが、俺は前世では母子家庭だったので、家事全般なんでも出来る。
特に姉が腐ってからは、仕事で忙しい母共々俺に家事を丸投げしてくれやがったので、特に料理は得意中の得意だ。
うちも決して裕福じゃなかったから、美味しいものをお腹いっぱい食べる為には手作りするしかなかったんだ。それに家族がとても喜んでくれるから、それが嬉しくて気が付いたら色々極めてしまっていた。まあ、この特技のお陰で今現在、こうして助かっている訳なんだけど。人生、学んで損する事は何もない。
ハーブが煮込まれる良い匂いが室内に充満する。おっと、野菜や肉が煮えてきたみたいだ。俺は浮いてきた灰汁を取りつつ塩麹をスープに投入すると、味見をしながら他の調味料もちょこちょこと足していった。
「よし!完成!」
具たっぷり、塩麹のポトフ風スープが出来上がった。うん、旨そうだ。いや、味見したから分かっているんだけど、実際凄く美味い。
俺は木のお椀にスープをたっぷりとよそうと、ベルへと差し出した。
「ほい。まずはベルに」
「あ?何で俺になんだ。俺は人間の食事は基本喰わんぞ」
「いや、考えたんだけど、俺が自主的に与えたものが対価になるんなら、俺が作った食事を食べれば魔力供給になるんじゃないか……って思ってさ」
「………」
「実験だと思って、付き合ってくれよ。ダメだったらまた別のを考えるし」
ベルは無言で暫く考えた後、俺から差し出されたスープを手に取り、少しだけ戸惑いがちに口に含んだ。
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