Axis of Fate〜大樹物語〜

たみぽん

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第2話「ラウルス遺跡」

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石舞台を別々の所で調べていた二人だったが、
 
「何もないわね」
 
何も手がかりとなるようなものは見つからず、魔方陣もかすれていてどんなことに使われたのかも分からなかった。
 
「術式もかすれてて何をしたのか分からねえから、これ以上調べようがねえな」
 
そんなアルファの下にサウスが話しかけてくる。
 
「お兄さん…」
「なんだお前か…」
 
かけられた少女の言葉にぶっきらぼうな態度で呟く。
 
「… …」
 
サウスは一瞬戸惑ったが意を決して口を開く。
 
「まだお兄さんにはお礼言ってなかったから…さっきは助けてくれてありがとう」
 
少し照れくさそうに笑い少女がお礼を言った。
 
「…そうか」
「…」
 
照れ笑いするサウスの顔を複雑な心境で見ていたが、すぐに視線を外すと淡泊に呟く。
その時アルファのコートの裾を摘まみ少女が引っ張る。
 
「まだ何か用か?」
「あの…お兄さんの方が用があるんじゃないかと思って…ボクのこと見てたから」
 
うっとうしそうに何か用があるのかと尋ねる彼にサウスが躊躇いながら話す。
 
「!!」
 
その言葉に目を見開き一瞬考えるように黙り込む。
 
「…」
 
アルファは屈み込むとサウスと同じ目線に合わせる。
少女が被っているフードを顔が見えるように少し上げて、女の子をまじまじと見つめた。
 
「!?」
 
サウスはその行動に驚きながらも嫌がることなく彼の次の言葉を待つ。
 
「… …」
「やっぱり…」
「?」
 
小さな声で言われた言葉の意味が分からず少女は首を傾げる。
 
「何で同じ顔なんだ…?」
「…どういうこと?」
 
静かな口調で聞かれた言葉の意味が分からずサウスは聞き返す。
 
「…死んだ妹にそっくりなんだ、お前は…髪や瞳の色は違うけど、その丸い輪郭や髪型、大きな瞳は見間違えようがない…」
「!?」
 
静かな口調を崩さず語られたアルファの言葉に、今度は少女が驚いて瞳を見開いたが、しかしすぐに俯き暗い表情になった。
 
「少し大きくなればお前みたいな感じになってるだろうなという思いもあるかもしれんがな」
 
自嘲気味に笑うと俯く少女の顔を見詰める。
 
(だからだろう。こいつの顔を見た時、ためらってしまったのは)
 
あの時、死んだ妹に似ている少女を殺すことをためらってしまったのは紛れもない事実で、もしそうでなければ今頃この子を殺してしまっていたかもしれないとアルファは思った。
 
「そうなんだね…お姉ちゃんから聞いたよ…昔、裏におそわれて亡くなったって…」
「…あぁ」
 
俯いたままサウスが言う。
それにアルファは何とも言えない表情で頷く。
 
「ボクが裏で…お姉ちゃんが襲われるかもって思ったから、剣を向けたんだよね…」
「あの時はすまなかった。もっと冷静になるべきだった…」
 
消え入りそうな声で言われた言葉に彼はあの時剣を向けたことに後悔して謝る。
 
「仕方ないよ。ボクがこんなだから…」
「いや、お前と話して分かった。奴等とは違うような気がしてな…」
 
呟かれた言葉にアルファはそうじゃないと言いたげに否定した。
 
「ボクが…ちがう?」
「そうだ。奴等は話が通じない様だったからな。問答無用に襲ってきやがった」
 
ようやく顔をあげてくれた少女に、アルファは力強く頷くと話を続ける。
 
「… …」
「まるで飢えた動物のように…」
 
彼の瞳をじっと見つめるサウスへとアルファは続きを聞かせた。
 
「でもボクみたいなのが憎いっていう人はたくさんいるのは知ってる」
「なのに、お前は一人で向かおうとしてたのか?他に仲間は?」
 
不安そうな顔でまた俯いてしまった少女の言葉に彼は尋ねる。
聞かれたサウスは大きく首を横に振って呟いた。
 
「いないよ。ボク、同じ姿の人なんて見たことないから」
「そっか…ならお前一人でここまで頑張ってきたんだな」
 
今までぶっきらぼうだったアルファがようやく柔らかく笑うと、少女の頭を大きな手で優しく撫ぜる。昔妹にしたのと同じように……。
 
「…!?」
 
その行動に驚いたサウスが顔をあげるとお互い暫く見つめ合った。
 
「お前も空間の狭間に向かうんだろ?」
「…うん」
 
サウスは小さく頷いた。
 
「なら、お前のことは俺が守ってやるよ。目的地は同じなんだからな」
「お兄さん…」
 
笑顔で言われた言葉に少女は躊躇った様子で呟く。
 
「俺のことは…アルファで構わない」
「お兄…うん!よろしくね、アルファ」
 
アルファに認められたことが嬉しくて笑顔で礼の言葉を述べる。
 
「おう、よろしくな。サウス」
 
彼もサウスに認められたことが嬉しくてにこりと笑い少女の頭を優しくポンポンと叩く。
 
「やれやれ…世話がかかるんだから」
 
そのやり取りを遠目に見守っていたルアが、ようやく素直になれたかと嬉しそうに微笑んでいた。
石舞台がある広間を歩き、ラウルス遺跡の街から抜け出したアルファ達は、廃墟があった山の麓の空洞に出てくる。
すっかり夜が明けていて朝陽が差し込んできていた。
結局ラウルス遺跡では何の手がかりも見つからず、身体的に疲れた彼等は近くの村まで向かい旅を再開する。
 
to be continued…
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