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第4章 修学旅行編
050 計画立て
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「……という感じなんだけど、いいかな?」
一通り自分の考えた事を話した後、亮平は、何か見落としているところがないかを一応質問した。
自分でも一応確認はした。でも、見落としている事実が何かあるかもしれない。作戦が成功する確率は、1%でも上げておきたい。
「別にいいんじゃないか? どうせ失敗しても行動をしなくても、結果は変わらないんだ。それなら、行動した方が得ってもんだろ、みんな?」
「それは分かるけど……。でも、やっぱり怖い。もし失敗したら、今よりひどくなるかもしれないのに」
「トラックの荷台に入れられてる時点で、解放する気はないだろ。ひどいも何もない」
怖がる気持ちは、十分に分かる。失敗したら何をされるか分からない。その気持ちも分かる。しかし、行動しないと逃げ出せるチャンスを放棄することになってしまう。失敗しても、行動を起こさなくても、最終的に行き着く結末は同じだ。
「霧嶋、とにかくお前の作戦だと、お前ひとりで大の大人一人を倒さないといけない。それだと不確実すぎる。俺も加勢する」
「気持ちはうれしいけど、監視が一人になる可能性はかなり低い。俺が一人で倒すから、残りの男を倒してくれ。女子だけだと大人一人は厳しい」
監視がいなくなるのは論外、一人だけになる可能性も相当低いだろう。最悪、チャンスが生まれないかもしれない。なので、その来るかも分からないチャンスに備えて、一人で一人を倒したほうが効率がいいのだ。
「本当に、大丈夫か?」
「……本当は加勢してもらいたい。だから、見張りが一人だけになった時は……、頼む」
「任せとけって」
(最悪、自分を犠牲にしてでも……)
暗闇の中、亮平の頭に一瞬、『自分が犠牲になってでも』という思いが通り過ぎる。亮平は、その思いをすぐに振り払う。
(全員で帰らないとダメだ!)
なんとしてでも、全員で戻りたい、いや戻る。亮平の、心からの願いだった。
「ちょ、ちょっと待って! 持久力にあんまり自信がないんだけど……」
女子陣から、そんなつぶやきが漏れる。
たしかに、いつまで走るか分からないとなると、持久力が心配になる。亮平と横岳は大丈夫だが、未帆、荻原さん、片桐さん、麻生は怪しい。
「一キロも走れば、市街地に出るから、大丈夫」
亮平が口に出したことは、本当かどうかは亮平自身も分からない。でも、『一キロ走れば大丈夫』と、『どこまで走るか分からない』では、モチベーションが明らかに違う。本当に一キロ先にあるかは分からないが、ゴールが見えないよりは、嘘でもゴールを作っておいたほうがいい。
「一キロなら……」
安堵の声がこぼれた。ひとまず、亮平の思惑通りになったようだ。
「みんな、覚悟はできて……」
亮平が、全員の気持ちを確認しようとした、その時。
『キキーッ』
トラックが急ブレーキをかけたらしく、亮平は慣性の法則で前へとこけそうになった。
トラックが停車すると、運転席の扉が開く音が聞こえた。男達の目的地に着いたらしい。
(ここからが正念場だ)
ここからは、誰の目も及ばない無法地帯。ズルズルといけば、結末は目に見えている。
(絶対、全員で逃げ通す)
ガチャン、という音がして、トラックの庫内に光が差し込んだ。
一通り自分の考えた事を話した後、亮平は、何か見落としているところがないかを一応質問した。
自分でも一応確認はした。でも、見落としている事実が何かあるかもしれない。作戦が成功する確率は、1%でも上げておきたい。
「別にいいんじゃないか? どうせ失敗しても行動をしなくても、結果は変わらないんだ。それなら、行動した方が得ってもんだろ、みんな?」
「それは分かるけど……。でも、やっぱり怖い。もし失敗したら、今よりひどくなるかもしれないのに」
「トラックの荷台に入れられてる時点で、解放する気はないだろ。ひどいも何もない」
怖がる気持ちは、十分に分かる。失敗したら何をされるか分からない。その気持ちも分かる。しかし、行動しないと逃げ出せるチャンスを放棄することになってしまう。失敗しても、行動を起こさなくても、最終的に行き着く結末は同じだ。
「霧嶋、とにかくお前の作戦だと、お前ひとりで大の大人一人を倒さないといけない。それだと不確実すぎる。俺も加勢する」
「気持ちはうれしいけど、監視が一人になる可能性はかなり低い。俺が一人で倒すから、残りの男を倒してくれ。女子だけだと大人一人は厳しい」
監視がいなくなるのは論外、一人だけになる可能性も相当低いだろう。最悪、チャンスが生まれないかもしれない。なので、その来るかも分からないチャンスに備えて、一人で一人を倒したほうが効率がいいのだ。
「本当に、大丈夫か?」
「……本当は加勢してもらいたい。だから、見張りが一人だけになった時は……、頼む」
「任せとけって」
(最悪、自分を犠牲にしてでも……)
暗闇の中、亮平の頭に一瞬、『自分が犠牲になってでも』という思いが通り過ぎる。亮平は、その思いをすぐに振り払う。
(全員で帰らないとダメだ!)
なんとしてでも、全員で戻りたい、いや戻る。亮平の、心からの願いだった。
「ちょ、ちょっと待って! 持久力にあんまり自信がないんだけど……」
女子陣から、そんなつぶやきが漏れる。
たしかに、いつまで走るか分からないとなると、持久力が心配になる。亮平と横岳は大丈夫だが、未帆、荻原さん、片桐さん、麻生は怪しい。
「一キロも走れば、市街地に出るから、大丈夫」
亮平が口に出したことは、本当かどうかは亮平自身も分からない。でも、『一キロ走れば大丈夫』と、『どこまで走るか分からない』では、モチベーションが明らかに違う。本当に一キロ先にあるかは分からないが、ゴールが見えないよりは、嘘でもゴールを作っておいたほうがいい。
「一キロなら……」
安堵の声がこぼれた。ひとまず、亮平の思惑通りになったようだ。
「みんな、覚悟はできて……」
亮平が、全員の気持ちを確認しようとした、その時。
『キキーッ』
トラックが急ブレーキをかけたらしく、亮平は慣性の法則で前へとこけそうになった。
トラックが停車すると、運転席の扉が開く音が聞こえた。男達の目的地に着いたらしい。
(ここからが正念場だ)
ここからは、誰の目も及ばない無法地帯。ズルズルといけば、結末は目に見えている。
(絶対、全員で逃げ通す)
ガチャン、という音がして、トラックの庫内に光が差し込んだ。
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