【高校生×OL】スターマインを咲かせて

紅茶風味

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4話-1

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 子気味良い音を立て、顔面にボールが当たった。柔らかいゴムボールはそこそこのスピードを持っていて、思わずその場に蹲る。

「あおちゃあん!」

 一緒にボール遊びをしていた子供達が、一斉に駆け寄ってきた。半泣きな声に慌てて顔を上げるも、鼻を強打したせいか視界が涙で滲んでいた。

「あおちゃん泣いてる!」
「大丈夫」
「ごめんなさい、あおちゃん、ごめんなさい!」
「大丈夫だって」

 運悪く、ボールを投げたのは少し感情の起伏の激しい女の子だった。必死で謝る姿に手を伸ばし、頭を撫でる。

「俺がぼーっとしてたのが悪いんだ。ごめんね」
「だっせぇ」
「うるさいな」

 男の子たちが茶々を入れ、女の子が次第に笑顔を取り戻していった。

 いつものように学校を終えて学童へ来ると、お迎えの時間まで皆で遊ぶ。一緒に遊ぶというより、相手をしながら怪我をしないか、喧嘩をしないか、注意して見ているのが仕事だ。なのに、ここ最近はこうして意識が集中していない時がある。

 家にいても、学校にいてもそうだ。常に頭の中にあの人がいて、すぐに目の前の光景が見えなくなる。父にも、兄にも、友人にも、大丈夫かと何度も言われては呆れ顔を向けられた。

「そろそろお迎えの時間だから、俺抜けるよ」
「えー、もっと一緒に遊びたい」
「また明日。みんなも早めにボール片づけて帰り支度しろよ」
「はぁい」

 行儀のよい返事をしたところで、支度をしないのはいつものことだ。部屋を出て事務室に戻ろうとすると、すでに一人、玄関前に保護者の姿があった。宮丘さんだ。いつもは十八時を十分ほど過ぎた頃にやってくるのに、今日は珍しく早い。

「悠希くんのお迎えにきました」

 そう言って、いつものように保護者カードを掲げる。近づいて「こんばんは」と挨拶すると、同じように「こんばんは」と言って小さく頭を下げる。その視線が、すっと横に逸らされた。

 あぁ、やっぱりだ。今日も避けられている。休みが明けた月曜日から、ずっとこの調子だ。目が合わず、必要最低限のこと以外は話さない。はじめは気のせいかと思ったが、他の職員とはいつものように笑顔で話すのを見て、確信した。これはもう明らかだ。

 引っ越しの手伝いをしてくれて、連絡先を交換できて、浮かれていた。このまま仲良くなれると思っていた。

 なにかおかしなことをしてしまったのか、と思考を巡らせるも、思い当たる節がない。いや、思い当たらないだけで、嫌な態度をとってしまったのかもしれない。言葉に遠慮がないから誤解されるのだと、兄から散々言われてきた。

「あの……」

 周囲に誰もいない今ならと、声をかけた。途端に宮丘さんの視線が動揺したように泳ぎだす。

「なんか、嫌なことしたなら、ごめん……なさい」
「え……?」

 顔が上を向き、透き通った目が俺を見た。すごく久しぶりにちゃんと目を見た気がする。

「俺、なんかそういうの疎くて、でも、わざとじゃないから、その……」

 花ちゃん、と明るい声が聞こえてきた。コートを着込み、ランドセルを背負った悠希が走り寄ってくる。いつもなら呼びに行くまで遊んでいるのに、すでに準備万端な姿に驚いた。

「もう支度してあったのか?」
「うん。偉いでしょ」
「あぁ、うん、偉いな」

 褒められたのが嬉しかったのか、満面の笑みを浮かべる姿が可愛らしくて、つい釣られて笑顔になる。きっと、褒めてくれると思ってした行動だ。ふと宮丘さんを向き直れば、目が合った瞬間に逸らされた。その勢いが相当なもので、やっぱり駄目か、と落胆した。

 笑顔で手を振る悠希に、手を振り返す。二人の姿が見えなくなり、今日も同じように息を吐く。

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