AKB48⌜翼はいらない⌟オマージュ作品 『翼を捨てた天使たち(早春編~立夏編』学連闘争員サハラリコ〜ある夏の日、私たちは一つになった

リトルマナ

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1972年2月19日、世界に愛なんて何処にもなかった~②樫脇有希の場合

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秋風と共に仲間たちの姿が消えた。校舎の片隅に見覚えのあるヘルメットにタオルマスク、そして彼らが片時も離さなかったゲバ棒がうずたかく積まれていた。


── いつまでそんな恰好やってんだよ


彼らの惜別の言葉だけが私たちの心のなかを吹き抜けていく。

心地よいはずの枯葉が香る風も今の私たちにとっては肌を刺すように痛い。時折、学内を嘗め回すように徘徊する挙動不審の大人たちはおそらく警察か公安の回し者。

「集会禁止」「立て看禁止」「ビラ配り禁止」張り紙の波が私たちを覆う。そんな光景を他の生徒たちは苦々しい思いで見ていた。

お前らがいるからだよ、そんな空気を目ざとく感じた人間からプロレタリアで武装した自らの鎧を脱いでいく

ヘルメットにタオルを巻いてたら赤軍派も革マル派も誰も彼もみんなおんなじ、もう誰も区別なんかしてくれない。

ヘルメットをかぶっているだけで、ヒトの一人や二人殺していそうな気がする、熊本のおばあちゃんにもそう言われた。

「そんな人間がそばにいると分かったら、おばあちゃんショック死するかもね」

人の気も知らないで大きな目をギョロつかせながらサリコは笑った。

「ホントにそうなのよ、サリコ」

冗談で言ったつもりはなかったのに。



(もう、熊本に帰ってきんさい、ゆき・・)

おばあちゃんにそうまで言われたことを彼女は知らない。

(違うんだってば、私たちのやってることは考えも思いも方向も,
おんなじとこなんてなんもないのよ)

ゆきりんのその言葉に実家の家族全員の顔色が変わる。

(あんたまさか・・)

(違うって言ってるでしょ、ただビラ配って、集会に参加してただけなんだから)

その場がさらに凍り付く。

溜息をつきながら肩を落とす祖父と祖母。父はうな垂れたまま、もう何も言わなかった。
その空気にいたたまれず母がやっとの思いで声を絞り出す。

(それで十分でしょ、ゆき)

私は何を言ってしまったのか、それさえもわからなかった。
熊本から見える東京はもう違っていた。日本の正義はもう私達のどこにもなかったのかもしれない。

「やっぱりあの日がすべてを変えたんだ」

そう、1972年2月19日、浅間山荘でのあの日以来私達の居場所はなくなった。

── あんな奴らと同じ空気を吸っている輩

私たちの語りかける言葉は色を失い、投げかけられる視線は憎悪に満ちたものに変わっていた。









    
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