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んなのわたしが許さない!!
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去年の11月に合歓の里で行われたヤマハポピュラーソングコンテスト、山音莢は直前で姿を消した。表向きの彼らの一方的な発表はさやかの契約不履行。数日前の新曲発表会にも出席せず本番のホールにも姿を現さなかった。
ポプコン、このコンテスト自体はプロダクションの勢力図による優劣はグランプリにはほぼ反映しないと言われている。グランプリ以外の各賞も含めて、それは実力と才能によるいわゆるノーガードのガチの戦い。けれど他のコンテストにもみられるように本選出場に際しては、それなりの大人の事情が存在する。そこには金まみれの肉弾戦の修羅場も例年展開される。
噂だけど、ここにさやかの八木プロはかなりの資金を注ぎ込んでいたらしい。
「それが突然のドタキャン、事務所側にしたら堪んないよね」
「じゃあどうなるの、さやかは?」
「もしかしたら・・」
「もしかしたら?」
「やっかいな人達が絡んでるかもしれない」
ポプコン本選二ヶ月前、山音莢本人と八木プロダクションから社長の八木茂光とさやかのマネージャー。 そしてスポンサーサイド二組から数名。 プロデューサー等の音楽スタッフ数名が最終調整ということで話し合いがもたれた。さやかは望まなかったけどサリコはそこに軽音のマネージャーという名目で強引に出席した。
その時点でさやかの希望は2点だけ。大澤静香と小田香ナーナの出演。
作詞の変更は今後一切行わない。それが受け入れられないなら、私達は一切この契約から手を引く。そう八木とスポンサーサイドに釘を刺した。
八木は了承、スポンサーサイドも一組は渋々受け入れた。
けどもう一組が噛み付いた。
メンバーと曲のすべての見直しを要求。思えばこいつらがその手の連中だったのかもしれない。
(ちょっと待って。この人達途中から入ってきて何好き勝手なこと言ってるわけ?どこまでさやかが譲って来たか、あなた達分かってんの?)
サリコの言葉にも相手はただ薄笑いを浮かべながら小木社長へその冷めた視線を送るだけだった。
サリコに返して来る八木茂光の申し訳なさそうな表情にこの場で全てを支配しているのはこの人達なんだとサリコは悟った。
メンバーを二人はそのままに、スポンサーサイドから新たに人選して補充する。曲はタイトルだけの変更に留める
八木の最終提案にさやかと私は有無を言わさず押し切られた。
(しーちゃん先輩とナーナが出られるなら私はもうそれでいい)
最終的にそんなさやかの搾り出すような呟きがサリコのぐずる心に白旗を上げさせた。
そして歌謡祭三日前、山音莢は何の連絡もないまま突然姿を消す。
本選出場の最終決定メンバーは3人、山音莢と新たに人選された二人
曲は歌詞に商標権に抵触する部分があるということで大幅に変更された。
「しーちゃんとナーナのところに連日変な嫌がらせ電話がきたり
家の前で街宣車のスピーカーが鳴り続けたらしい。
頃合いを見計らったように物腰の低そうな大人達がやって来て
出演を取りやめることで話がついたそう。」
「酷い・・・」
渡良瀬繭の顔が歪む。噛んだ唇がみるみる血の気を失ってゆく。
「私も黙って見てた訳じゃないよ、事務所には何度も行ったし、八木さんにも問い詰めた。でももう本人がいないんじゃあ、どうしようもなくて。それに・・・」
「それに、なによ?」
「それに、もうこのことは八木プロの手から離れたって」
「離れた?じゃあ・・」
「そう、もう山音莢自体が彼らのターゲットになったっていうこと。
メディアもそこそこ騒ぎ始めてるし、取っつかまえて新たに売り出せばそれでまた金になる。それに違約金も払わないといけないし、さやかにとっては帰ってきても殆ど飼い殺し状態にされる・・」
「そんなの・・・、 んなの私が許さない!!」
繭の背中がビクンと震える。
遠くでアルベロベッロの鐘の音が聞こえていた。
それはトーンは低めだけど良く通る声だった。
振り向けばそこには瞬きを忘れたかのようにこちらを睨む白咲遥が立っていた。
両手には抱えきれないほどのカトレアの花、吹き抜ける午後の風に花びらが
ひらりと舞い落ちていく。
「ママの仕業だと思う・・・」
「はるる・・?」
春なのに・・・
天使が囁くような風音は聞こえてこない
春なのに・・・
涙の数ばかり私たちは数えてる
振り上げたこぶしはどこへ向かえばいいのか
春なのに・・・・。
ポプコン、このコンテスト自体はプロダクションの勢力図による優劣はグランプリにはほぼ反映しないと言われている。グランプリ以外の各賞も含めて、それは実力と才能によるいわゆるノーガードのガチの戦い。けれど他のコンテストにもみられるように本選出場に際しては、それなりの大人の事情が存在する。そこには金まみれの肉弾戦の修羅場も例年展開される。
噂だけど、ここにさやかの八木プロはかなりの資金を注ぎ込んでいたらしい。
「それが突然のドタキャン、事務所側にしたら堪んないよね」
「じゃあどうなるの、さやかは?」
「もしかしたら・・」
「もしかしたら?」
「やっかいな人達が絡んでるかもしれない」
ポプコン本選二ヶ月前、山音莢本人と八木プロダクションから社長の八木茂光とさやかのマネージャー。 そしてスポンサーサイド二組から数名。 プロデューサー等の音楽スタッフ数名が最終調整ということで話し合いがもたれた。さやかは望まなかったけどサリコはそこに軽音のマネージャーという名目で強引に出席した。
その時点でさやかの希望は2点だけ。大澤静香と小田香ナーナの出演。
作詞の変更は今後一切行わない。それが受け入れられないなら、私達は一切この契約から手を引く。そう八木とスポンサーサイドに釘を刺した。
八木は了承、スポンサーサイドも一組は渋々受け入れた。
けどもう一組が噛み付いた。
メンバーと曲のすべての見直しを要求。思えばこいつらがその手の連中だったのかもしれない。
(ちょっと待って。この人達途中から入ってきて何好き勝手なこと言ってるわけ?どこまでさやかが譲って来たか、あなた達分かってんの?)
サリコの言葉にも相手はただ薄笑いを浮かべながら小木社長へその冷めた視線を送るだけだった。
サリコに返して来る八木茂光の申し訳なさそうな表情にこの場で全てを支配しているのはこの人達なんだとサリコは悟った。
メンバーを二人はそのままに、スポンサーサイドから新たに人選して補充する。曲はタイトルだけの変更に留める
八木の最終提案にさやかと私は有無を言わさず押し切られた。
(しーちゃん先輩とナーナが出られるなら私はもうそれでいい)
最終的にそんなさやかの搾り出すような呟きがサリコのぐずる心に白旗を上げさせた。
そして歌謡祭三日前、山音莢は何の連絡もないまま突然姿を消す。
本選出場の最終決定メンバーは3人、山音莢と新たに人選された二人
曲は歌詞に商標権に抵触する部分があるということで大幅に変更された。
「しーちゃんとナーナのところに連日変な嫌がらせ電話がきたり
家の前で街宣車のスピーカーが鳴り続けたらしい。
頃合いを見計らったように物腰の低そうな大人達がやって来て
出演を取りやめることで話がついたそう。」
「酷い・・・」
渡良瀬繭の顔が歪む。噛んだ唇がみるみる血の気を失ってゆく。
「私も黙って見てた訳じゃないよ、事務所には何度も行ったし、八木さんにも問い詰めた。でももう本人がいないんじゃあ、どうしようもなくて。それに・・・」
「それに、なによ?」
「それに、もうこのことは八木プロの手から離れたって」
「離れた?じゃあ・・」
「そう、もう山音莢自体が彼らのターゲットになったっていうこと。
メディアもそこそこ騒ぎ始めてるし、取っつかまえて新たに売り出せばそれでまた金になる。それに違約金も払わないといけないし、さやかにとっては帰ってきても殆ど飼い殺し状態にされる・・」
「そんなの・・・、 んなの私が許さない!!」
繭の背中がビクンと震える。
遠くでアルベロベッロの鐘の音が聞こえていた。
それはトーンは低めだけど良く通る声だった。
振り向けばそこには瞬きを忘れたかのようにこちらを睨む白咲遥が立っていた。
両手には抱えきれないほどのカトレアの花、吹き抜ける午後の風に花びらが
ひらりと舞い落ちていく。
「ママの仕業だと思う・・・」
「はるる・・?」
春なのに・・・
天使が囁くような風音は聞こえてこない
春なのに・・・
涙の数ばかり私たちは数えてる
振り上げたこぶしはどこへ向かえばいいのか
春なのに・・・・。
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