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葉篆国。
大陸一の軍事力を持つ国として他国から恐れられている。
欲しいものはどんなことをしてでも手に入れようとする、なんとも迷惑な国としても名を馳せていた。
他国を潰すことも平気で行い、なんと非難されようとお構いなしに突っ走るのを良しとするお国柄を特徴としている。
けれども、最近ある国が相当量の力をつけ始め、葉篆国の悩みの種となりつつあった。
そんな中、その悩みの種を潰すべく、2つの作戦が持ち上がっていた。
「全隊員に告ぐ、本日10時より訓練を開始する。それぞれの隊の集合場所で整列して待機せよ。
繰り返す、本日10時より……」
赤塚潤も宿舎でこの放送を聞いていた。
一隊員の扱いとしては程遠い豪華な部屋。トイレや風呂は普通の隊員ならば共用で使用しているが、赤塚の部屋にはきちんとそれらが備わっている。
キッチンやリビングもついていて、宿舎で生活しているとは思えない部屋だ。
赤塚はむくりと起き上がると軽く伸びをして、ベッドから這い出した。
寝ぼけ眼でクローゼットを開き、黒のTシャツとワークパンツを取り出してのそのそと着替える。
クローゼットの中には大量の黒のTシャツやジャケット、同じ型のワークパンツがかけられ、一番端には申し訳程度に軍服がかけられている。ただし、なかなか出番のない軍服にはうっすらと埃が被っていた。
まぁ、気にしたところでクリーニングに出すのも面倒なので見なかったことにしておく。
枕元の時計を見やれば、9時20分を回ったところだった。
「集合までまだ時間がありますかね」
欠伸を噛み殺しつつ、とりあえず朝食をとろうと、赤塚は食堂へ向かうことにする。
自室にキッチンはあるが、朝から何かを自分で作る気力もない。
他の隊員たちはとっくに朝食を終えて準備をし始めているようで、食堂には数人しかいなかった。
もちろん赤塚以外は皆、軍服に身を包んでいる。
まぁ、自分には関係ないかと食堂のカウンターで朝食を受け取り適当な席へと腰を下ろす。
赤塚がゆっくり朝食を平らげてコーヒーを啜っていると、大きな欠伸をしながら1人の男が食堂に入ってきた。
金村俊一、一番隊隊員で赤塚と同じ特別待遇の特任隊員。
赤塚と同様軍服ではなく、私服に身を包んでいる。
薄い茶髪に髪よりも濃い茶色の瞳。
髪は起きたときのままの状態で、寝癖がついていた。
手を振って居場所を知らせると、眠そうに目を擦りながらも朝食のトレーをを片手に赤塚の隣の席に腰を下ろした。
「はよ、赤塚」
「おはようございます。
聞きましたか? 今日は10時から訓練をやるらしいですよ」
「へぇ、じゃあ後10分もねえな」
「えぇ」
食堂の時計の針は、もう10時を指そうとしているところだ。通常であれば、今の時点で食堂にいること事態がおかしい。
けれど、そんなことは赤塚にも金村にも関係ない。ゆえに、人のいない食堂でゆったりと時間を過ごしていた。
「今日はお前参加すんの?」
「迷ったんですけど一応出ようかと。大きな作戦も控えていることですし……金村はどうするんですか?」
ウインナーにどっぷりとケチャップやマスタードをかけては、せっせと口に運んでいる金村にそう質問を返してやる。
食べるスピードを落とさぬまま、金村から答えが返ってきた。
「いつも通り出るぜ、射撃と実践訓練は」
「基礎訓練にもたまには参加したらどうですか? 違ったことをするのも悪くないと思いますけど」
「嫌だ。面倒なだけで、ただの体力作りと変わんねぇもん」
「確かにそうですけど」
「それより聞いたか? 佐々木さんが久しぶりに現場に出たらしいぜ。
なんでも200人近くを相手に殺りあったらしい」
それはそれは楽しそうに金村がそう口にしたのは、赤塚も所属している軍の中でもトップに立つ人物の話だった。
「あぁ、その話ですか。流国でしたっけ? 僕には到底無理な芸当ですよ」
200人も一斉に相手にするなんて冗談じゃない。
せいぜい100人程度が自分の限度だろう。それの倍のことをやってのけるとは、佐々木さんとは絶対に敵対したくないと心から思う。
「俺もまだまだ。佐々木さんには追いつかねぇな」
口を尖らせる金村に赤塚は苦笑を返した。
赤塚から見れば金村も敵う相手ではないだけに、佐々木さんがどれだけの実力者なのかが嫌でも分かる。
そうこうしている内に、時計は10時を少し過ぎたところを指していた。
「それじゃ、僕はもう行きますね。
今からだと、ウォーミングアップしたらちょうど三番隊の合同練習の時間ですから」
トレーを持って赤塚は席を立つ。
その背中にむかって金村から声が掛かる。
「基礎訓練は?」
振り向きざまに、最上級の笑顔とともに赤塚は答えた。
「出るわけ無いでしょう」と。
「だよな」
金村が満足そうに頷く。
終わったらまたここで会う約束をして、赤塚は集合場所へゆっくりと歩いていった。
大陸一の軍事力を持つ国として他国から恐れられている。
欲しいものはどんなことをしてでも手に入れようとする、なんとも迷惑な国としても名を馳せていた。
他国を潰すことも平気で行い、なんと非難されようとお構いなしに突っ走るのを良しとするお国柄を特徴としている。
けれども、最近ある国が相当量の力をつけ始め、葉篆国の悩みの種となりつつあった。
そんな中、その悩みの種を潰すべく、2つの作戦が持ち上がっていた。
「全隊員に告ぐ、本日10時より訓練を開始する。それぞれの隊の集合場所で整列して待機せよ。
繰り返す、本日10時より……」
赤塚潤も宿舎でこの放送を聞いていた。
一隊員の扱いとしては程遠い豪華な部屋。トイレや風呂は普通の隊員ならば共用で使用しているが、赤塚の部屋にはきちんとそれらが備わっている。
キッチンやリビングもついていて、宿舎で生活しているとは思えない部屋だ。
赤塚はむくりと起き上がると軽く伸びをして、ベッドから這い出した。
寝ぼけ眼でクローゼットを開き、黒のTシャツとワークパンツを取り出してのそのそと着替える。
クローゼットの中には大量の黒のTシャツやジャケット、同じ型のワークパンツがかけられ、一番端には申し訳程度に軍服がかけられている。ただし、なかなか出番のない軍服にはうっすらと埃が被っていた。
まぁ、気にしたところでクリーニングに出すのも面倒なので見なかったことにしておく。
枕元の時計を見やれば、9時20分を回ったところだった。
「集合までまだ時間がありますかね」
欠伸を噛み殺しつつ、とりあえず朝食をとろうと、赤塚は食堂へ向かうことにする。
自室にキッチンはあるが、朝から何かを自分で作る気力もない。
他の隊員たちはとっくに朝食を終えて準備をし始めているようで、食堂には数人しかいなかった。
もちろん赤塚以外は皆、軍服に身を包んでいる。
まぁ、自分には関係ないかと食堂のカウンターで朝食を受け取り適当な席へと腰を下ろす。
赤塚がゆっくり朝食を平らげてコーヒーを啜っていると、大きな欠伸をしながら1人の男が食堂に入ってきた。
金村俊一、一番隊隊員で赤塚と同じ特別待遇の特任隊員。
赤塚と同様軍服ではなく、私服に身を包んでいる。
薄い茶髪に髪よりも濃い茶色の瞳。
髪は起きたときのままの状態で、寝癖がついていた。
手を振って居場所を知らせると、眠そうに目を擦りながらも朝食のトレーをを片手に赤塚の隣の席に腰を下ろした。
「はよ、赤塚」
「おはようございます。
聞きましたか? 今日は10時から訓練をやるらしいですよ」
「へぇ、じゃあ後10分もねえな」
「えぇ」
食堂の時計の針は、もう10時を指そうとしているところだ。通常であれば、今の時点で食堂にいること事態がおかしい。
けれど、そんなことは赤塚にも金村にも関係ない。ゆえに、人のいない食堂でゆったりと時間を過ごしていた。
「今日はお前参加すんの?」
「迷ったんですけど一応出ようかと。大きな作戦も控えていることですし……金村はどうするんですか?」
ウインナーにどっぷりとケチャップやマスタードをかけては、せっせと口に運んでいる金村にそう質問を返してやる。
食べるスピードを落とさぬまま、金村から答えが返ってきた。
「いつも通り出るぜ、射撃と実践訓練は」
「基礎訓練にもたまには参加したらどうですか? 違ったことをするのも悪くないと思いますけど」
「嫌だ。面倒なだけで、ただの体力作りと変わんねぇもん」
「確かにそうですけど」
「それより聞いたか? 佐々木さんが久しぶりに現場に出たらしいぜ。
なんでも200人近くを相手に殺りあったらしい」
それはそれは楽しそうに金村がそう口にしたのは、赤塚も所属している軍の中でもトップに立つ人物の話だった。
「あぁ、その話ですか。流国でしたっけ? 僕には到底無理な芸当ですよ」
200人も一斉に相手にするなんて冗談じゃない。
せいぜい100人程度が自分の限度だろう。それの倍のことをやってのけるとは、佐々木さんとは絶対に敵対したくないと心から思う。
「俺もまだまだ。佐々木さんには追いつかねぇな」
口を尖らせる金村に赤塚は苦笑を返した。
赤塚から見れば金村も敵う相手ではないだけに、佐々木さんがどれだけの実力者なのかが嫌でも分かる。
そうこうしている内に、時計は10時を少し過ぎたところを指していた。
「それじゃ、僕はもう行きますね。
今からだと、ウォーミングアップしたらちょうど三番隊の合同練習の時間ですから」
トレーを持って赤塚は席を立つ。
その背中にむかって金村から声が掛かる。
「基礎訓練は?」
振り向きざまに、最上級の笑顔とともに赤塚は答えた。
「出るわけ無いでしょう」と。
「だよな」
金村が満足そうに頷く。
終わったらまたここで会う約束をして、赤塚は集合場所へゆっくりと歩いていった。
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