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第1章「海援隊編(黎明)」
第3話 追撃の刃、獣耳の誓い
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夜明けの光が差し込み、崩れた廃屋の中に影を伸ばしていた。
リュオムは錆びた窓枠に手をかけ、遠い空を見上げる。
星は消えつつあるが、胸の竜魔紋はまだかすかに熱を帯びていた。
「……この世界でも、維新を成すきに」
小さな声で呟いた言葉は、誰よりも自分自身に向けられていた。
背後から足音。振り返ると、獣耳の少女――ミラが腕を組み、不機嫌そうに睨んでいた。
「維新? そんなもん無理だよ。人間が奴隷から抜け出せるわけない」
「できんことをやるが維新じゃろう」
リュオムは笑って返す。
その笑みが余計に癪に障るのか、ミラは舌打ちをした。
だが、その耳はわずかに震えていた。
昼下がり。三人は人目を避け、廃屋を出て市の外れに向かっていた。
食糧を調達するためだ。
シン=トナリは僧衣を整え、落ち着いた眼差しで周囲を見守る。
ミラは街路に近づくと耳を動かし、気配を探った。
しかし、その瞬間――聞き覚えのある声が響いた。
「おい……この獣耳は逃げた奴隷だ!」
奴隷商が現れた。
脂ぎった顔を歪め、ミラの首筋を指差す。そこには刻印のような痕が浮かんでいた。
「この印が証拠だ。お前は売り物、所有物だ!」
ミラの顔色が青ざめる。
その瞳には「どうせ逃げられない」という諦めが滲んでいた。
「おまん、よう聞け」
リュオムが一歩前に出る。
「人は物やない。鎖で縛られとっても、志までは奪えん」
奴隷商は鼻で笑った。
「戯言を。お前もすぐに市場に戻るんだよ」
だが、そのやり取りを遮るように、冷たい声が降りた。
「竜魔紋を持つ者……帝国に従え」
黒衣の仮面の男が、部下の兵を率いて現れた。
観客席からリュオムを見下ろしていた影――今度は目の前に立っている。
「おまえの力は、この世界の秩序を揺るがす。魔王の器となりうる者……」
「魔王? わしはそんなもんになる気はさらさらないぜよ」
リュオムは笑い飛ばした。
仮面の男が片手を掲げると、兵士たちが剣を抜き、三人を囲む。
戦闘が始まった。
シン=トナリが数珠を掲げ、光の結界を展開。敵の刃を受け止める。
リュオムは木剣を振り、竜魔紋の熱が全身を駆け巡るのを感じた。
視界が冴え渡り、敵の動きが透けて見える。
「うおおおっ!」
一気に斬り込み、兵を吹き飛ばす。
しかし、仮面の男が迫ると、その力は圧倒的だった。
竜魔紋が暴走しかけ、リュオムは膝をつきそうになる。
「……やっぱり、お前も鎖から逃げられない」
仮面の男の嘲笑が耳を打つ。
その時。
ミラが叫び声を上げ、短剣を振りかざして仮面の男に飛びかかった。
「私はもう売られない! 縛られない!」
刃が仮面の肩を裂き、わずかな隙が生まれる。
リュオムは立ち上がり、その隙を突いて仮面の男を押し返した。
「……よう言うたのう、ミラ!」
三人はそのまま必死に駆け、追っ手の包囲を振り切った。
崖上にたどり着き、息を切らして立ち止まる。
夜風が吹き抜け、遠くには帝国の旗が揺れていた。
ミラは震える声で言う。
「……あたしも……親分の隊に入る。もう、誰にも鎖をつけさせない」
リュオムは笑い、シンも静かに頷いた。
三人の目に映る空には、竜を象るような雲が流れていた。
「これでえい。わしらの志は一つぜよ」
海援隊の灯が、確かにともった瞬間だった。
リュオムは錆びた窓枠に手をかけ、遠い空を見上げる。
星は消えつつあるが、胸の竜魔紋はまだかすかに熱を帯びていた。
「……この世界でも、維新を成すきに」
小さな声で呟いた言葉は、誰よりも自分自身に向けられていた。
背後から足音。振り返ると、獣耳の少女――ミラが腕を組み、不機嫌そうに睨んでいた。
「維新? そんなもん無理だよ。人間が奴隷から抜け出せるわけない」
「できんことをやるが維新じゃろう」
リュオムは笑って返す。
その笑みが余計に癪に障るのか、ミラは舌打ちをした。
だが、その耳はわずかに震えていた。
昼下がり。三人は人目を避け、廃屋を出て市の外れに向かっていた。
食糧を調達するためだ。
シン=トナリは僧衣を整え、落ち着いた眼差しで周囲を見守る。
ミラは街路に近づくと耳を動かし、気配を探った。
しかし、その瞬間――聞き覚えのある声が響いた。
「おい……この獣耳は逃げた奴隷だ!」
奴隷商が現れた。
脂ぎった顔を歪め、ミラの首筋を指差す。そこには刻印のような痕が浮かんでいた。
「この印が証拠だ。お前は売り物、所有物だ!」
ミラの顔色が青ざめる。
その瞳には「どうせ逃げられない」という諦めが滲んでいた。
「おまん、よう聞け」
リュオムが一歩前に出る。
「人は物やない。鎖で縛られとっても、志までは奪えん」
奴隷商は鼻で笑った。
「戯言を。お前もすぐに市場に戻るんだよ」
だが、そのやり取りを遮るように、冷たい声が降りた。
「竜魔紋を持つ者……帝国に従え」
黒衣の仮面の男が、部下の兵を率いて現れた。
観客席からリュオムを見下ろしていた影――今度は目の前に立っている。
「おまえの力は、この世界の秩序を揺るがす。魔王の器となりうる者……」
「魔王? わしはそんなもんになる気はさらさらないぜよ」
リュオムは笑い飛ばした。
仮面の男が片手を掲げると、兵士たちが剣を抜き、三人を囲む。
戦闘が始まった。
シン=トナリが数珠を掲げ、光の結界を展開。敵の刃を受け止める。
リュオムは木剣を振り、竜魔紋の熱が全身を駆け巡るのを感じた。
視界が冴え渡り、敵の動きが透けて見える。
「うおおおっ!」
一気に斬り込み、兵を吹き飛ばす。
しかし、仮面の男が迫ると、その力は圧倒的だった。
竜魔紋が暴走しかけ、リュオムは膝をつきそうになる。
「……やっぱり、お前も鎖から逃げられない」
仮面の男の嘲笑が耳を打つ。
その時。
ミラが叫び声を上げ、短剣を振りかざして仮面の男に飛びかかった。
「私はもう売られない! 縛られない!」
刃が仮面の肩を裂き、わずかな隙が生まれる。
リュオムは立ち上がり、その隙を突いて仮面の男を押し返した。
「……よう言うたのう、ミラ!」
三人はそのまま必死に駆け、追っ手の包囲を振り切った。
崖上にたどり着き、息を切らして立ち止まる。
夜風が吹き抜け、遠くには帝国の旗が揺れていた。
ミラは震える声で言う。
「……あたしも……親分の隊に入る。もう、誰にも鎖をつけさせない」
リュオムは笑い、シンも静かに頷いた。
三人の目に映る空には、竜を象るような雲が流れていた。
「これでえい。わしらの志は一つぜよ」
海援隊の灯が、確かにともった瞬間だった。
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