【メモリーバンク】記憶ゼロの俺が、量子の魔法で世界を変える ~封じられた過去が今、再構築をはじめる~

カイワレ大根

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第2章

第26話 襲撃作戦、罠・連携・奇襲

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 リュークたちは、罠の準備を終え、慎重にゴブリンの巣へと向かっていた。

 満月の光が、木々の隙間から細く差し込み、ぼんやりと地面を照らしている。
 森は静寂に包まれ、かすかな風のざわめきと、遠くで響く獣の鳴き声だけが耳に届く。

「この先に……ゴブリンの巣がある」

 リュークは低く囁きながら、周囲に鋭い視線を走らせた。
 進むにつれて、獣臭と腐肉のような不快な匂いが、鼻を突く。

 それは紛れもなく、ゴブリンたちが棲みついている証だった。

「この匂い……いるな」

 ガルドが唸るように呟く。
 シャドウファングも鼻をひくつかせ、前方の空気を鋭く嗅ぎ取っていた。

 その視線の先、闇にぽっかりと開いた小さな洞穴がある。

「ここだね……」

 リーナが魔法の灯りを抑えながら、小さく声を落とす。
 リュークはその場にしゃがみ込み、手早く仲間たちに合図を送った。

「……作戦通りに行くぞ」

 ガルド、リーナ、ザックが、無言で力強く頷く。
 満月の光を背に、静かに、しかし確かな意志を宿した影たちが動き出した。

 ◆ 作戦開始!ゴブリンの巣を襲撃
 第一段階:罠の発動
 リュークは、仕掛けておいた足止めトラップの位置を、頭の中で正確に思い描いた。

(この距離、この角度……誘導さえできれば、一気に……)
 手にしたスリングに小石をセットし、静かに息を整える。

「……今だ」

 シュッ――!

 小石が勢いよく飛び、洞窟の岩壁にカチンッと音を立てて跳ね返った。

「ガキィィィッ!」

 甲高い悲鳴とともに、奥から獣じみた気配が一斉にあふれ出す。

「来るぞ!」

 ガルドが大剣を構えながら声を上げた。
 数秒後、五体のゴブリンが洞窟の口から飛び出してくる。

「ギィ……ギシャアア!」

 目を血走らせ、狂乱気味に地を蹴る足音がズザッ、ズズッと連なった。
 彼らは警戒しつつも、焦りと興奮に突き動かされていた。

(罠の存在には――まだ気づいていない)

 その瞬間だった。
 先頭のゴブリンが、わずかに足を滑らせる。

(――かわした!?)

 リュークの目がかすかに見開かれる。だが――

 ガクンッ!

 足元の土が崩れ、隠されていたロープが**ギチッ!**と音を立てて絡みついた。
 バランスを崩したゴブリンの身体がズシャッと前のめりに倒れ込む。

「ギギィッ!? ギャアア!」

 ズシャッ! ゴブリンの爪が地をかくも虚しく、重い体が勢いのまま前のめりに崩れ落ちる。
 転倒の拍子に、後続のゴブリンたちが次々ともつれ合うように倒れ込んだ。

「ギャア!」「(どけっ!)」「ギギィィ!」

 混乱した叫びが響き、罠に掛かった者たちが互いにぶつかり、**ドゴッ! バキッ!**と鈍い音が連続する。

 牙を剥いた一体が巻き込まれる形で顔面から叩きつけられ、口元から血と砕けた歯が飛び散った。

(……完全に崩れた!)

「かかったな!」

 リュークの声が鋭く夜気を裂く。

 その直後――

「今です!」

 リーナが指を突き出し、風の魔法を詠唱する。

「ウィンド・ブラスト!」

 炸裂した風が罠に絡まったゴブリンたちを一気に吹き飛ばした。

「ゴギッ!」

 ボグン! ズンッ!

 鈍く骨が軋むような音と共に、ゴブリンたちは壁や地面へと叩きつけられる。

 土煙が巻き上がり、視界をかすませる中、痙攣しながら動かなくなる者もいた。
 崩れ落ちたその光景は、まさに陣形の完全崩壊だった。

 ◆第二段階:遠距離攻撃

「畳みかけるぞ!」

 ザックが短剣を逆手に構え、軽く旋回させながら一歩踏み出す。
 その動きは鋭く、無駄がない。

 短剣が空を裂き、一直線にゴブリンの胸元を射抜く。

「ギャアッ!!」

 グシャッ――ッ!

 骨を砕き、肉を裂く濁音と共に、ゴブリンの体が強張り、口から血と泡を吐き出す。
 目を見開きながら激しく痙攣し、そのまま膝から崩れ落ちて動かなくなった。

 その間すら惜しまぬように――

「行くぞ!」

 すかさずガルドが前線へと踏み込む。

「邪魔だ……消えろッ!!」

 低く唸るような声と共に、重厚な大剣が空気を裂いて振り抜かれる。

 ――ゴガアアッ!!

 凄まじい破砕音と共に、大剣がゴブリンの首を一閃する。
 斬られた首は鮮血を噴き上げ、くるくると回転しながら宙を舞った。

「ギギッ……ギャァ……」

 断末魔は途中で途切れ、斬り飛ばされた首が地面にゴリリッと鈍い音を立てて落ちる。
 胴体は膝から崩れるようにドサリと倒れ、地に広がる血だまりがじわじわと染みていく。

(すごい……わずか数秒で、次々と――)

 リュークはその連携の鮮やかさと、畳みかけるような一撃の嵐に、息を呑んだ。
 戦場は、ほんの一瞬のうちに制圧されつつあった。

 ◆第三段階:奇襲と決着
 その混乱の背後――

 リュークとシャドウファングは、すでに静かに裏へと回り込んでいた。
(暗がりはゴブリンに有利……なら、こちらもその目を奪ってやる)

 リュークは腰のポーチから、事前に用意しておいた即席の煙幕玉を取り出す。
 枯れ葉と乾燥した苔を布で包んだ、簡易式の煙玉――

 火をつければ、視界を奪う白い煙が瞬く間に広がるはずだ。

「……行くぞ」

 小声で合図を送りながら、リュークは火打石を素早く打ち、着火する。

 パチパチッ……モウッ!

 布の中から煙が立ち上がり、瞬く間に空気を濁らせていく。

「ギャッ!?」「ギィィ……!」

 煙に包まれたゴブリンたちは、視界を奪われ、互いに叫びながら動揺し始める。
(今だ――視界が死角になったこの瞬間に決める!)

「シャドウファング、いけ」
「グルル……」

 黒狼が低く唸り、次の瞬間――空気が一瞬、張り詰める。
 影そのものが飛び出したかのように、シャドウファングの黒い体が闇を切り裂く。

「ガウッ!!」

 ズンッ!

 重く鈍い衝撃とともに、獣の塊がゴブリンの胴を押し倒すように叩きつける。
 凶悪な牙が、ゴブリンの喉元に食い込んだ。

「ギィ……ギギッ……!」

 ゴギッ!!――生々しく骨が砕ける音。

 喉を裂かれたゴブリンは、喉奥から血泡を漏らし、全身をピクピクッと痙攣させる。
 断末魔を吐き出す前に、体は崩れ落ちて沈黙した。

 直後――
 煙の中で、次なる敵の気配。

 リュークの肌がそれを感じ取るより先に、反射が先に動く。

(来る!)

 リュークは迷いなく身体を捻り、短剣を逆手に構えた。

 ズブリ。

 刃は正確にゴブリンの肩口から突き入り、骨を砕く感触が手に伝わる。

(重い――だが、貫け)

 ゴブリンの体がびくりと跳ね、血混じりの呻きと共に力なく崩れ落ちた。
 煙が晴れ始めたころには、戦場はほぼ静まり返っていた。

 背後では、ガルドたちが最後の一体を斬り伏せ、剣を収めるところだった。
 まさに完璧な連携だった。

 後衛の魔法、前衛の突撃、囮と奇襲――全てが噛み合い、敵は瞬く間に制圧された。
 最後の一体が絶命した瞬間、張り詰めた空気がふっと緩み、周囲に静寂が戻る。

 ◆洞窟内部の探索へ向けて

「よし……終わったな」

 リュークは肩で荒く息を整えながら、剣を軽く振って血の飛沫を払い落とす。
 鈍く光る刃の縁から、赤黒い雫が地面にぽたりと落ちた。

 あれだけ騒がしかった戦闘が嘘のように、あたりは耳が痛くなるほど静かだった。
 土と血の混ざった匂いが、重たく淀んでいる。

 傍らでは、シャドウファングが鼻をひくつかせながら、まだ張りつめた様子で周囲を警戒していた。

「お疲れ、リューク。なかなかやるじゃない」

 リーナが軽く笑みを浮かべて肩をぽんと叩く。

「まあまあ、だったな!」

 ザックが肩を竦めるようにして呟くと、リュークは小さく苦笑し、軽く頷いて返した。

(……それでも、終わった……のか?)

 リュークは手の中の短剣を握り直しながら、奥へと続く闇をじっと見据える。

「……まだ、巣の奥に何かいるかもしれない。警戒して進もう」

 リーナの声が、空気の温度を引き締める。
 ガルドは大剣を持ち直しながら、冗談めかした口調で言う。

「この先、ゴブリンじゃなくてトロールでも出てきたら、泣くしかねぇな」

「やめてよ、そんなこと言うと本当に出てきそうじゃない」

 リーナが苦笑混じりに返し、ガルドも小さく笑った。

 だが、リュークの胸中には、妙な引っかかりが残っていた。

(……これは、ただの前哨戦かもしれない)

 倒したゴブリンたちはあくまで「迎撃側」。
 この先、もっと大きな群れや、より危険な存在が待っている可能性は高い。

「……分かった。気を引き締めて行こう」

 リュークは短剣を再び握り直し、決意を込めて仲間たちを見渡した。

 だが、この仲間たちとなら、きっと乗り越えられる。
 そう確信しながら、リュークたちは慎重に、洞窟のさらに奥へと歩みを進めた。

 次回: ゴブリンの巣深部!(前編)異形の影、チーフ覚醒
 予告: 影が這い、毒が侵す。支配者の咆哮が、理性を引き裂く
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