【メモリーバンク】記憶ゼロの俺が、量子の魔法で世界を変える ~封じられた過去が今、再構築をはじめる~

カイワレ大根

文字の大きさ
48 / 118
第3章

第47話 ギルドへの帰還、報告

しおりを挟む
 地下水道の出口から外に出た瞬間、リュークは湿った空気を深く吸い込んだ。冷たい夜風が熱を帯びた体を包み込み、心地よい安堵感をもたらす。

「やっと終わったか……」

 ガルドが剣を鞘に収め、大きく息を吐いた。

「けど、あれ……本当に封じられたの?」

 リーナが不安げにリュークを見た。彼は手の中の魔物核を見下ろしながら、ゆっくりと頷く。

 核は依然として紫の光を淡く放ち、その奥に闇の名残が渦巻いているようだった。

「完全に消えたとは言えない。でも、ひとまず地下水道に影響はないはずだ」

 リュークはシャドウファングの首元を優しく撫でた。黒狼は喉を鳴らしながらリュークに寄り添う。

「さぁ、ギルドに報告しようぜ。報酬もらわねぇとやってられねぇよ」

 ザックが肩を竦め、先を歩き出す。その背中を追い、リュークたちはギルドへと向かった。

 ◆ギルド:報告と対策
 ギルドの扉を開くと、夜遅いにもかかわらず、カウンターにはエリナが座っていた。彼女はリュークたちの姿を見つけ、驚きと安堵の表情を浮かべる。

「リュークさん!皆さんも無事だったんですね!」
「ああ、何とかね。依頼は達成したよ」

 リュークは魔物核を取り出し、エリナに手渡した。紫の光を放つそれを見た瞬間、彼女の顔色が変わった。

「これが……?」
「地下水道に潜む影の残滓だ。完全に消せたわけじゃないが、これでひとまず封印はできたはずだ」

 つづいて術式の書いた紙をリーナが手渡す。

 エリナは魔物核を慎重に扱いながら、奥の部屋へと向かう。その背中を見送った後、リュークたちはギルドホールのテーブルに腰を下ろした。

「お疲れ様、リューク。今日のは本当に危なかったな」

 ガルドが渋い顔で言うと、リーナが深く頷いた。

「封印術がなかったら危なかったわ。リューク、よくやったわね」
「いや、みんながいたからこそだよ。ありがとう」

 リュークは仲間たちに感謝を述べつつも、胸の奥では拭いきれない不安を抱えていた。

 ――本当に、あの影は消えたのか。あるいは……またどこかで目を覚ますのではないか。

 そんな時、ギルドの奥から重い足取りでギルドマスター・ヴォルグが現れた。
 手には、あの戦いの中で使った魔物核が握られている。

「よくやった、リューク。そして、ガルド、リーナ、ザック……お前たちもな」

 ヴォルグは労いの言葉とともに魔物核をテーブルに置いた。

 だが、その顔に浮かぶ表情は、決して晴れやかなものではなかった。

「……だが正直言って、楽観はできん。封印はあくまで“応急処置”に過ぎない可能性が高い」

 リュークは眉をひそめる。

「それは……どういう意味ですか?」

 ヴォルグは核をじっと見つめ、低く答えた。

「この魔物核に残っている闇の力……おそらく、もっと深い何かの“端末”のようなものだろう。放っておけば、いずれまた“目”を覚ますやもしれん」

 リュークは拳を固く握りしめた。

 再び、あの影と向き合わなければならない時が来る。そう思うと、胸の奥に静かな決意が芽生えた。

「……俺に、できることはありますか?」

 ヴォルグはしばし考え、やがてゆっくりと頷く。

「今は、休むことだ。力を蓄えろ。いずれ必ず、お前にも“役目”が巡ってくる。その時が来るまでな」

 そう告げると、ヴォルグは背を向けた。

「報酬は、整理して明日渡す。ゆっくり休め」

 リュークは深く頷き、ギルドを後にしようとした――が。

「少し休んでいこうぜ」

 ガルドの提案に、リュークたちはギルド内の酒場スペースへと足を向けた。
 簡素な木のテーブルに腰掛け、木製のジョッキに注がれた麦酒を手に取る。

「とりあえず……無事に戻れた祝いだな」

 ガルドがにやりと笑い、リーナもそれに優しく微笑みながらジョッキを合わせた。

 リュークも自然と笑みをこぼし、二人に続いて乾杯した。
 冷たい麦酒が喉を滑り落ちる。張り詰めていた緊張が、ほんの少しだけほどけていくのがわかった。

 ──そんな穏やかなひとときの中、不意に隣のテーブルから賑やかな声が耳に飛び込んできた。

「聞いたか? 北方鉱山で“幻の鉱石”が発見されたらしいぜ」
「嘘だろ? あれは伝説級の……」

 思わず耳を傾けるリューク。

「マジだって。今、ギルドでも調査隊を編成する話が出てるらしい」

 また別のテーブルでは、新人らしき冒険者たちが顔を寄せ合って囁きあっていた。

「なあ、遺跡周辺で光る目を見たって噂、ほんとかよ……」
「やめろよ……夜眠れなくなるだろ……」

 リュークは、静かに麦酒を口に運びながら考える。

 幻の鉱石、地下に蠢く闇。どちらも、まだ自分には縁遠い話のようでいて、どこかで繋がっている気もした。

(……いずれ、ああいう話にも関わることになるかもしれない)

 シャドウファングがリュークの足元で静かに座り、尻尾を小さく振った。
 それを見て、リュークはふっと口元を緩めた。

「さて、そろそろ行こうか」

 リュークたちは席を立ち、ギルドを後にした。
 冷たい夜風が彼の頬を撫でる。

(まだ、やるべきことがあるんだ……)
 シャドウファングが静かに寄り添い、夜の闇に溶けていった。

 ──静かに、しかし確かに、彼らの旅は続いていた。

 次回:静寂の街で誓う決意
 予告:戦闘の余韻、そして鍛錬
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

72時間ワンオペ死した元球児、女神の『ボッタクリ』通販と『絶対破壊不能』のノートPCで異世界最強のコンビニ・スローライフを始める

月神世一
ファンタジー
「剣? 魔法? いいえ、俺の武器は『鈍器になるノートPC』と『時速160kmの剛速球』です」 ​あらすじ ブラックコンビニで72時間連続勤務の末、過労死した元甲子園優勝投手・赤木大地。 目覚めた彼を待っていたのは、コタツでソシャゲ三昧のダメ女神・ルチアナだった。 ​「手違いで死なせちゃった☆ 詫び石代わりにこれあげる」 ​渡されたのは、地球のAmazonもGoogleも使える『絶対破壊不能』のノートPC。 ただし、購入レートは定価の10倍という超ボッタクリ仕様!? ​「ふざけんな! 俺は静かに暮らしたいんだよ!」 ​ブラック労働はもうこりごり。大地は異世界の緩衝地帯「ポポロ村」で、地球の物資とコンビニ知識、そして「うなる右腕(ジャイロボール)」を武器に、悠々自適なスローライフを目指す! ​……はずが、可愛い月兎族の村長を助けたり、腹ペコのエルフ王女を餌付けしたり、気づけば村の英雄に!? ​元球児が投げる「紅蓮の魔球」が唸り、女神の「ボッタクリ通販」が世界を変える! 異世界コンビニ・コメディ、開店ガラガラ!

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

処理中です...