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帰還  〜ポーレット〜

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 ヴァルトは自分の執務室でクロムスにゲシゲシと蹴られながらも仕事をこなしていた。

「しょうがないだろ・・・。
 これ終わらせないと遊びになんて行けないんだ。
 イオリ達だって帰ってきたばかりでお前と遊んでばかりいられないさ。」

 そう聞きシュンとするクロムスだったが

「さっき庭で子供達が走り回ってたぞ。」
 
 と言うマルクルの言葉に再びヴァルトをゲシゲシと蹴り始めた。

「まぁ、毎日の様に壁門まで行ってイオリの帰還の確認をして、サボっていたんですから仕方がないですね。
 
 はい。次、コレに目を通してサインをお願いします。」

 容赦なく書類を積み上げていくトゥーレを恨みがましい顔で睨むとヴァルトは黙々と書類に目を通した。

 トゥーレはむくれるヴァルトとクロムスに溜息を吐くと呟いた。

「後ほど、ギルドとホワイトキャビンに行かれるそうなのでイオリ達も忙しいはずです。
 夕飯は一緒に取れるのではないですか?
 それに、これを全て片付ければお休みが取れますよ。」

 その言葉に目をキラキラさせてヴァルトは机に向かうと、諦めたクロムスも大人しくキャビネットで目を瞑っていた母・ルチアの元で丸くなった。



 ヴァルトの部屋がそんな事になっている事も知らずにイオリはガセボで公爵夫婦を前に天空のダンジョンで手に入れた宝石を出していた。

「まぁまぁまぁ、何て美しい宝石なの??
 これ全てダンジョンで?」

「はい。俺が欲しい魔石やらは冷蔵庫とかこの腕輪とかに使っちゃったんで、コレらはオルガ夫人へのお土産です。
 どうぞ。」

 目を丸くしたオルガは一つ一つを手に取りマジマジと見た。

「良いのかい?金貨に換えれば、大金だぞ?
 私が買い取るが?」

 テオルドは出された宝石の質の高さに注視しイオリに提案した。

「良いんです。俺にとっては単なる綺麗な石ですよ。
 元々、お土産のつもりで持ち帰ったんです。
 価値が分かり、大切に身に付ける人に使って欲しいです。」

「それなら、私ね!」

 ニヤリとするオルガにイオリは笑いながら頷いた。

「魔石は腕輪と言っていたが、子供達もつけているな。」

  久々に会った庭師・ボーと一緒に花壇を覗いている子供達の腕にキラリとした腕輪がはめられているのをテオルドは目で追った。

「はい。アンティティラでそれぞれの特性に合わせた魔石で腕輪を作ってもらいました。
 ニナには腕輪は早いと思ってぬいぐるみの首輪にしたんですよ。ゼンがモデルです。」

「あの背中にいる子ね?ふふふ。本当に可愛いわ。」

 微笑むオルガはニナを手招きするとテトテトやってくるニナを待った。

「背中面にあるお腹のポケットはマジックボックスなので荷物も入るようになっているんですよ。」

 そう言うイオリの言葉に反応したようにニナが背中を向けて自慢気に見せる。

「ゼンちゃん2号って呼んでるんだ。
 ニナも大好きなんだって。」

 後ろから着いてきたナギがニナの代わりに公爵夫婦に言うと2人はナギの能力に驚いた様だった。

「ナギはニナの心の声が聞こえるんです。
 まあ、今ではニナの表情でみんな理解出来るようになりましたけどね。」

「そうか・・・。ナギも旅で自分にできる事が増えたのだったな。」

 眉を下げて微笑む公爵を見てナギは腰バックからライアーを取り出すとポロンっポロンっ♪と弾き出した。

「おぉ・・・。」

 感動する公爵は目を閉じて、しばらく聞き入っていた。
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