拾ったものは大切にしましょう～子狼に気に入られた男の転移物語～

帰還 〜ポーレット〜

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「お前達！街中で何をしている！！」

　治安維持隊と冒険者ギルドからサブマス・エルノールがやってくると囲んでいた野次馬達が一斉に声を出した。

「そいつらが、悪い！」

「坊主は手を出してねーぞ！！
　避けてただけだ！」

「そうよ！見てたわ！」

　荒ぶっていた男達は慌てた様に辺りを見回した。

「なっ・・・。」

「俺達は！！・・・ぐふッ！」

　治安維持達によって押さえつけられた男達はジタバタと体をもがいたが、ビクともしなかった。

　エルノールと治安維持隊・隊長・ロディは押さえつけられた男達を立たせると睨みつけた。

「理由がなんであろうと、ポーレットでは許可されてない者が街中で武器を振り回すのは違法だ。
　最悪、街から追放だ。話を聞かせてもらうぞ。」

「冒険者ギルドは貴方達に伝えたはずです。
　街では大人しく。Sランクへ敬意を。

　冒険者が街中で暴れるのを見逃すわけにはいきません。
　治安維持隊の取り調べの後、冒険者ギルドでも話を聞きます。

　治安維持隊は街からの追放で済ましますが、ギルドからも処分があります。
　降格か最悪、カード剥奪を覚悟しなさい。」

　愕然とする男達を引きずって行く治安維持隊を見送ると、ロディとエルノールはイオリ達の元へ来た。

「まったく、お前さんはよー。
　また、目をつけられてたか？
　ハハハ。」

「ロディさん・・・。笑い事ではありませんよ。
　皆さんご無事です・・・ね。
　よく手を出さないでくれました。

　カサドさん。今回の騒動について冒険者ギルドを代表してお詫び申し上げます。
　後ほど、正式な謝罪をさせていただきますが今日は失礼させていただきます。

　不届き者の始末をしてきませんと。」

「あぁ。良いさ。俺は今日は気分が良いんだ。
　全てギルドに任せるよ。
　ギルマスにも宜しく伝えてくれ。」

　カサドの言葉にエルノールは頭を下げるとロディと共に帰って行った。

　それに伴いギャラリーもイオリに声をかけながらも散り散りになっていき静かになった。


「いやー。帰ってきて早々に巻き込まれたな。
　アハハハ。」

「アハハではありませんよ。
　ニコライさん。何してるんですか？」

　デニを腕に抱き上げ撫でてながら近づいてきたニコライは楽しそうだった。

「んー。イオリが旅に出た後に街に変化があっただろう？
　変化には不協和音がつきものだ。
　治安の悪化への対処は私の大切な仕事の一つだからな。見回りをしていた。」

「あー・・・。
　やっぱり、迷惑かけてましたか。」

「いいや。
　ラモン子爵家の破滅から、恩恵を受けていた貴族達が新たな隠蔽工作や我が家への繋ぎと慌ただしくしていたからな。
　市井にも影響は出るものだ。」

　ニコライは呆れた様に首を竦めた。

「落ち着いてきた頃合いだ。
　まだまだ、あんなのもいるさ。」
　
「若い冒険者にケチをつけて、ギルドで箔をつけようとするなんてシケた野郎共だぜ。　
　じゃあな！俺は仕事に戻るぞ。」

　カサドは男達をバカにする様にニヤリとすると、工房へ戻っていった。

「宜しくお願いします！！
　2週間後にお伺いしますね。」

　子供達も手を振ると扉をしめるカサドを見送った。

「さぁ、私達は帰るがお前達はどうする？」

「帰りますよ。夕飯の仕込みもしないといけせんしね。」

　ニコライはイオリの言葉に目を輝かす。

「何を作る？久々にイオリの作る物が食べたい。」

「では、ご招待しましょうね。
　皆さんいらっしゃいますかね？」

「そうだな。ヴァルトは今頃、書類に埋もれているだろう。
　イオリの料理が食べれると分かるとやる気をだすぞ。」

　買い出しを終えてイオリ達一同、公爵邸へ帰宅することになった。