拾ったものは大切にしましょう～子狼に気に入られた男の転移物語～

帰還 〜ポーレット〜

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「何！？王都へ行く？」

「はい。以前から王様から召喚状が届いていたらしいです。
　今回の件の為に利用して登城しようって、テオさんの護衛依頼を受けました。」

　夕飯の席で家族に説明すると、子供達は喜びヒューゴは驚いた。

「そう言えば、ヒューゴさんは都合悪いですか？」

「貴族だった話ならば、見知った者がいてもおかしくないが・・・。
　15で家を飛び出してから関係なく生きてきたからな。
　風貌も違うし気付かれないんじゃないか？しかし、愚父の悪行は有名らしいから面倒に巻き込まれる可能性もある。

　俺はイオリが行くならついて行くが、迷惑かけるかもしれないぞ？」

　ヒューゴが眉間にしわを寄せて話すのを聞くとイオリは頷いた。

「迷惑は良いんです。嫌じゃないなら、行きましょう。
　折角です。みんなも王都を楽しもうよ。」

「「「「やったー！」」」」

　その日、子供達は王都とはどうなところか。
　王城とは？王様ってどんな人だろうと想像しながら眠りについていた。




　商人ギルドのギルドマスター・ゲーザと会ったのは二日たった日の事だった。
　場所はグラトニー商会・ホワイトキャビン・バートの仕事場だった。

　一足先に現れたゲーザとサブマス・ヘミング、そしてゲーザの秘書をしているジェイミーはバートの机に高く積み上げられた書類に目を奪われていた。

「急がしいところに、お邪魔して申し訳ないね。」

「いいえ。狭くてすみません。
　どうぞ、お座り下さい。イオリさんも暫くしたらいらっしゃると思いますから。」

　ゲーザとバートの挨拶が終わると、側にいたハンスがそれぞれに紅茶と茶菓子を出していった。

「ところで、バートさん。
　イオリ様はどんなお方です？お若いっていうのは知っていますが・・・。」

　サブマス・ヘミングは伺う様にバートに聞いた。

「そうですね・・・。
　気さくな人ですよ。
　でも、隠しきれない聡明さをお持ちです。
　大叔父が一目で気に入って力になりたいと言い出したんですから凄いでしょう？」

　膝の上で手を組むバートはニコニコとしていた。

「しかし、最近のグラトニー商会の盛り上がりの影にSランク冒険者がいるとはね・・・。」

　話の隙をつきたいゲーザは嫌味の一つも付きたくなった。
　それにはバートはニコニコと応対すると首を横に振った。

「いやー。報告してませんでした？　
　グラトニー商会とホワイトキャビンは完全に切り離されているんですよ。
　場所は借りてますんで、賃貸料も払っていますしグラトニー商会がホワイトキャビンの商品を扱うときは購入して貰ってますよ。

　恩恵どころか、未だお荷物の状態です。」

　それはないだろう！と思わず声に出そうとした時だった。
　廊下の方から賑やかな声がしたかと思えば扉がノックされ、支部長であるブルーノが顔を出した。

「イオリ様がお着きです。
　大旦那様も同席されるそうなので、ご案内いたします。」

　そういうと、扉が大きく開かれアーベル・グラトニーと青年が2人、そして白い狼が1匹が入ってきた。

　金髪の青年は壁際にいるハンスの隣に立ち、黒髪の青年はアーベルについていきニッコリと会釈をした。

「初めまして！商人ギルド・ギルマスのゲーザさんとサブマス・ヘミングさん。
　それから、秘書さんのジェイミーさんですね？
　イオリです。御足労ありがとう御座います。
　お話があるとか？どうぞ、何でも聞いて下さい。」

　出鼻を挫かれた様に戸惑った3人はこの若い青年の青い瞳がギラついているのに気付いていなかった。

　自分達が冒険者の罠にかかったと知ったのは随分と後の事だった。