拾ったものは大切にしましょう～子狼に気に入られた男の転移物語～

新たな旅 ー王都ー

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　奥にあるサロンに通されるとハミルトンは紅茶の準備をさせた。

「ポーレットからの長旅、ご苦労様でございました。
　王都でのご滞在中の全てを任されております。
　どうぞ、何なりとお申し付け下さい。」

「ハミルトンなら安心だ。イオリ、紹介しよう。
　ハミルトンは国王陛下に使える執事の1人だ。そして、クリストフの弟でもある。
　ちなみに筆頭執事は長男のランドルフが勤めている。
　王都での事なら相談するといい。」

　にこやかに頷くハミルトンにイオリは立ち上がってお辞儀をした。

「お世話になります。ハミルトンさん。
　そして、ザックス・ヒル将軍。
　先程はご挨拶の折に失礼しました。

　ポーレット公爵家専属冒険者を務めます。イオリと申します。
　こちらにいるのは家族でありパーティーです。
　従魔のゼン・アウラ・ソル。
　双子のスコル・パティ
　エルフのナギとヒューゴとニナの兄妹です。
　何かとお世話になります。よろしくお願いします。」

「「「「よろしくお願いします！！」」」」

「おう！よろしくな！
　さっきは心配したが、何だしっかりした奴じゃないか！」

　ソファーにドカッと座るザックスに微笑むイオリにハミルトンもお辞儀をして挨拶をした。

「イオリ様達の事は聞き及んでおります。
　どうぞ、滞在中はお頼り下さいませ。
　皆様もお過ごしやすいように努めます。」

「どうぞ、お気遣いなくイオリと呼んで下さい。」

　顔を赤くして照れるイオリにハミルトンは好印象を持ったのであった。

「後ほど、陛下との謁見がございます。
　皆さまのご準備もございますでしょうからご案内いたしましょう。」

　ハミルトンが声をかけるとメイドや使用人がやって来た。

「今日の謁見は我々だけで行う。
　イオリ達には休んでもらってくれ。

　で？お前はいつまでいるんだ？」

　テオルドはガブガブと紅茶を煽るザックスを呆れた顔で見た。

「大丈夫だ！久々の友との再会に時間など関係あるか！」

「ありますよ？」

　ブリザードの如く冷えた風が入って来たと思えば入り口に軍服を纏った若き女性が仁王立ちしていた。
　胸に数々の勲章を身につけているその女性は凍てつくような目でザックスに近寄り頭を鷲掴みにすると立ち上がらせた。

「いててててててててて！やめろ！オーブリー！」

「お久しぶりにございます。ポーレット公爵閣下。
　長旅お疲れのところ、訪問の伝もなく押し掛けました事。平にご容赦を
　ご到着のお忙しいところでございましょうが、このデカブツを連れて帰る失礼をお許し願いたい。」

「オーブリー久しいな。相変わらず迷惑男を相手に忙しそうだな。
　ああ、連れて帰ってくれ。
　時間ができたら茶でもしよう。」

　オーブリーは眉を下げて微笑むと頭を下げた。

「はい。ありがとうございます。
　奥方様もご到着早々に騒がしくいたしまして、申し訳もなく・・・。」

「いいえ。こんなに早く貴方に会えたのだもの将軍に感謝だわ。
　また来てね。」

　手を振るオルガ夫人に頭を下げてザックスの頭を手から離さずにオーブリーは歩き出した。

「いててて！離せオーブリー！
　じゃあな！テオ！オルガ！
　イオリもまた手合わせしよう！イタタたた。オーブリー！ハゲるぞ！」

「一向に構いません！忙しんですから、執務室で座ってるくらいしてください！」

　そう話すオーブリーは出ていく時にイオリの存在を確認して呟いた。

「あれが、専属冒険者・・・。」

「面白いだろ？興味出たか？」

　ニヤニヤ笑うザックスにオーブリーは苛立ち、頭を握る手を強めた。