拾ったものは大切にしましょう～子狼に気に入られた男の転移物語～

帰還 ー王都ー

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　久しぶりに会ったオーウェン・ダグスク侯爵は以前と比べて、逞しくなっていた。
　
　イオリ達が玄関で出迎えると嬉しそうに手を振っていた。

「初めまして、私はオーウェン。ダグスクと申します。
　唐突なお手紙を差し上げまして申し訳ありません。
　イオリさんに以前お世話になったばかりか、塩生産の運営に助力頂き有り難うございます。
　その後はポーレット公爵領との取引で我が領も立て治りつつあります。
　突然の夜会で王都へ来る事になり、こんな時でないとポーレット公爵に直接御礼も言えないと不躾と知りながらも面会を望んだ次第です。
　多大なご助力に感謝いたします。
　未だに未熟なれど、これからもご指導いただければ幸いです。」

　ポーレット公爵テオルドの目をしっかりと見て話すオーウェンにイオリは成長を感じていた。
　
「丁寧な挨拶に悼みいる。
　私がポーレット公爵テオルドだ。
　ダグスク侯爵の事はこちらのイオリから聞いている。
　若いのに難しい時期に跡を取ってしまったな。
　しかし、今日会って聞いていた印象よりも自信に満ちていて安心した。
　いつでも手紙をくれ。力になれる事があれば相談に乗ろう。
　良いな、イオリ。」

　テオルドは後ろに控えるイオリに振り返ると優しい目を向けた。

「はい。ありがとうございます。
　お久しぶりです。オーウェンさん。お元気そうで何よりです。
　会いに来ていただいて有り難うございます。　
　嬉しいです。」

　オーウェンはニッコリとするとイオリの手をギュッと握り、隣に立つ女性に目をやった。

「紹介させてください。
　彼女は私の婚約者のリサ・ベーカー伯爵令嬢です。
　ベーカー家は我がダグスク領では歴史が浅いですが、海外貿易において尽力をしてくれているのです。
　リサ嬢とも幼い頃からの知り合いでして、仕事を通じて仲を深めてきました。
　是非、イオリさんに報告したかったのです。」

「ポーレット侯爵様、イオリ様。
　初めてお目に掛かります。
　ベーカー伯爵家が次女リサと申します。」

　リサ嬢はカーテシーで挨拶をすると愛らしい顔で微笑んだ。
　彼女の瞳はダグスクの海のように鮮やかな青色だった。

「よく、王都まで来られたリサ嬢。
　そして、2人とも婚約おめでとう。
　無事、結婚の日を迎え末長く幸せな家庭を築く事を願う。」

「おめでとうございます。
　オーウェンさんの変化にはリサさんの存在が大きかったのですね。
　納得しました。
　俺はダグスクの街が好きなので、2人に会いにまた行きますね。」

「有り難うございます。」

　微笑む2人をテオルドは屋敷の中に招いた。

　部屋にはオルガ夫人を筆頭にニコライやヴァルト、そしてイオリの家族達が総出で待っていた。
　暖かく迎え入れられ、2人は感激しっぱなしであった。
　オーウェンの結婚には子供達が大喜びで一生懸命にお菓子を渡して祝っていた。

「良かったですね。レイナードさん。」

　ずっとオーウェンの後ろに控えていたダグスク騎士団長のレイナードにイオリは声をかけた。

「お久しぶりです。イオリ殿。
　その節は大変に世話になりました。

　有り難い事です。
　イオリ殿がダグスクを去られた後、オーウェン様は人が変わられたように貴族達と話し合われるようになりました。
　そんなオーウェン様の想いに皆も気づき、手を貸してくれる様になったのです。
　あの時、イオリ殿に出会ったからこそ貴族の領主として心構えが変化したように思います。
　リサ様との婚約も積極的に望まれまして、ベーカー伯爵を始め、貴族との関係も良くなって来ました。」

　嬉しそうに話すレイナードにイオリも微笑んだ。
　
「ソフィアンヌさんやブルックさん達もお元気ですか？」

「ええ、元気です。
　街が活気に溢れ返り始めたので、冒険者ギルドの仕事も増えましてね。
　忙しいと毎日、文句を言っていますよ。
　イオリさんが旅立ってすぐに息子達が帰ってきたので、今ではこき使われています。
　いつか紹介させて下さい。」

「楽しみです。
　レイナードさんもお菓子どうぞ。」

　イオリはレイナードを連れてテーブルに行くとヒューゴが嬉しそうに皿を差し出した。

「お久しぶりです。」

「元気そうで何よりだ。」

　王都での再会にイオリ達は大いに喜んだのであった。