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束の間のポーレット
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『“愛し子”・・・いいえ。正確に言うと違います。
何と言えばいいのでしょう・・・“迷い子”とでも言いましょうか。
死するべきでなかった人間が私の元へと現れたのです。』
リュオンはいつもの柔らかい笑顔とは違う悲しそうな顔を見せていた。
『あの子が現れたのは十蔵よりも遥か昔の事でした。
私の前に初めて現れた“迷える魂”です。
死ぬべきではなかった魂は《天国》の扉を拒みました。
もちろん《地獄》の扉も・・・。』
あの子と呼んだ魂を思い出すようにリュオン様は目を細めた。
『現れた時、小さな魂は弱々しく脆かった。
しかしながら震えながらも、はっきりとした《生きたい!》という意思は強く感じました。
私は小さな魂と語らいました。
《弱き者が気兼ねなく暮らせる世界で生きたい。
怯える事なく自由に生きたい。》
だから・・・私は転生をするかと問うたのです。
転生を選んだ弱々しい魂に何を望むかと聞くと迷う事なく《何ものにも怯える事のない強さ》と答えました。
だから私は《強さ》を与え、私の世界に送り出したのです。』
リュオン様は己の過去を悔いていた。
『生きる事に貪欲な、その魂は長寿であるエルフの夫婦の子に転生し光を意味する“ルミエール”と名付けられました。
優しく穏やかな夫婦とは違い、その子は成長する度に冷淡な表情をするようになっていきます。
自然のエネルギーを魔法の糧とし狩猟や栽培で生活していた争いを好まないエルフの中で、格別異質な存在だったのです。
当時の長を始め、ルミエールを危険しする者が増える中、彼は着々と準備を進めていた。
自分と同世代の者達を中心に穏やかな生活こそ、生きる上で危険な考えであると思想を広めていったのです。
《強き者が弱き者を支配する。エルフこそ、至高な存在である》
その思想はエルフの社会で破竹の勢いで広まっていきました。
ルミエールは私の授けた力で武力を持って平和の世界を作り上げようとしたのです。
彼が選んだのは実に残虐で恐ろしい方法でした。
私は気づいていなかった・・・。
弱き者が気兼ねなく暮らせる世界はルミエール自身が怯える事なく自由に生きる世界だったのです。
生きとし生けるもの全ての頂点に立つ野望。
私は怪物を世に送り出した・・・。』
森羅万象を愛するリュオン様は怪物であろうと愛し見守る・・・。
イオリはリュオン様の博愛の覚悟を理解していた。
「自らの手でルミエールを処断する事ができなかったのですね?
例え・・・世界が崩壊するとしても・・・。」
リュオン様は首をカクンとし頷いた。
所詮、世界は生きる者たちの物。
絶対神は英雄を産みもすれば、災害を起こす魔獣も産み出す。
チェス盤に駒は並べるが動くのは駒達自身という事だ。
それが絶対神の役目であり、生きる者達の自由の重みでもあった。
『ルミエールが長を始め自分と意見がぶつかる者たちを処刑し始めると、エルフ達は恐怖の世界に陥っていきました。
ルミエールに心酔し身も心も捧げる者達。怯え従う者達。里を出て生き方を違う者達。
ルミエールは数年の内に軍を結成し鍛え始めました。
厳しい訓練の中、生き残っていった者達こそ“エルフの里の戦士”達の始まりです。
そして、ルミエールが成人を迎えた日。
エルフの里は世界に向けて宣戦布告をしたのです。』
何と言えばいいのでしょう・・・“迷い子”とでも言いましょうか。
死するべきでなかった人間が私の元へと現れたのです。』
リュオンはいつもの柔らかい笑顔とは違う悲しそうな顔を見せていた。
『あの子が現れたのは十蔵よりも遥か昔の事でした。
私の前に初めて現れた“迷える魂”です。
死ぬべきではなかった魂は《天国》の扉を拒みました。
もちろん《地獄》の扉も・・・。』
あの子と呼んだ魂を思い出すようにリュオン様は目を細めた。
『現れた時、小さな魂は弱々しく脆かった。
しかしながら震えながらも、はっきりとした《生きたい!》という意思は強く感じました。
私は小さな魂と語らいました。
《弱き者が気兼ねなく暮らせる世界で生きたい。
怯える事なく自由に生きたい。》
だから・・・私は転生をするかと問うたのです。
転生を選んだ弱々しい魂に何を望むかと聞くと迷う事なく《何ものにも怯える事のない強さ》と答えました。
だから私は《強さ》を与え、私の世界に送り出したのです。』
リュオン様は己の過去を悔いていた。
『生きる事に貪欲な、その魂は長寿であるエルフの夫婦の子に転生し光を意味する“ルミエール”と名付けられました。
優しく穏やかな夫婦とは違い、その子は成長する度に冷淡な表情をするようになっていきます。
自然のエネルギーを魔法の糧とし狩猟や栽培で生活していた争いを好まないエルフの中で、格別異質な存在だったのです。
当時の長を始め、ルミエールを危険しする者が増える中、彼は着々と準備を進めていた。
自分と同世代の者達を中心に穏やかな生活こそ、生きる上で危険な考えであると思想を広めていったのです。
《強き者が弱き者を支配する。エルフこそ、至高な存在である》
その思想はエルフの社会で破竹の勢いで広まっていきました。
ルミエールは私の授けた力で武力を持って平和の世界を作り上げようとしたのです。
彼が選んだのは実に残虐で恐ろしい方法でした。
私は気づいていなかった・・・。
弱き者が気兼ねなく暮らせる世界はルミエール自身が怯える事なく自由に生きる世界だったのです。
生きとし生けるもの全ての頂点に立つ野望。
私は怪物を世に送り出した・・・。』
森羅万象を愛するリュオン様は怪物であろうと愛し見守る・・・。
イオリはリュオン様の博愛の覚悟を理解していた。
「自らの手でルミエールを処断する事ができなかったのですね?
例え・・・世界が崩壊するとしても・・・。」
リュオン様は首をカクンとし頷いた。
所詮、世界は生きる者たちの物。
絶対神は英雄を産みもすれば、災害を起こす魔獣も産み出す。
チェス盤に駒は並べるが動くのは駒達自身という事だ。
それが絶対神の役目であり、生きる者達の自由の重みでもあった。
『ルミエールが長を始め自分と意見がぶつかる者たちを処刑し始めると、エルフ達は恐怖の世界に陥っていきました。
ルミエールに心酔し身も心も捧げる者達。怯え従う者達。里を出て生き方を違う者達。
ルミエールは数年の内に軍を結成し鍛え始めました。
厳しい訓練の中、生き残っていった者達こそ“エルフの里の戦士”達の始まりです。
そして、ルミエールが成人を迎えた日。
エルフの里は世界に向けて宣戦布告をしたのです。』
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