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束の間のポーレット
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『ルミエールが成人を迎えた日。
エルフの里は世界に向けて宣戦布告をしたのです。』
リュオン様の悲しげな顔が一層深まるとイオリは溜息をついた。
『当初、世間は本気にしていませんでした。
自然を愛するエルフ達が武器を手に襲ってくるなど、どの種族も考えていなかったからです。
しかし、ルミエールの指揮の元に動き出したエルフの里の戦士達の戦闘力は無視できるものでは無くなっていきます。
人族の集落。獣人の集落。ドワーフ、魔獣やドラゴンに至るまでエルフ達は攻撃をやめませんでした。
それにより他の種族は共通の敵を倒すために手を取り合うようになったのです。
後の世に“大戦争”と呼ばれるようになった、この戦いは300年も続きました。
長命なエルフとは違い人間などは何度も世代交代をしています。
いつしか彼は“ダークエルフ”と言われるようになっていました。
長き苦しい戦いでした。
最終的にはドラゴン種を攻撃の要とした連合が勝利を収め、深傷をおったルミエールはエルフの里の戦士達に庇われながらも辛くも里に帰りました。
その後はルミエールの身柄を求める連合と里の光を守ろうとするエルフの里の住人達との話し合いがもたれるようになりました。
結果、ルミエールが所持し戦いに使われていた剣を没収し永久にエルフの里から出ることを禁じる事で話がまとまりました。
そうです・・・私が剣を与えたのです。
本来なら、連合はその場で首でも落として戦争の後始末をつけたいところだった。
しかし、エルフの里の求心力であるルミエールを殺害すればエルフの里の戦士達が戦いを継続し戦争は長引いでいたでしょう。
戦争が終わらなければ犠牲が増え続ける。
当時の種族の長達は危険を冒すのを止めルミエールの愛刀を没収し不可侵の条約を結ぶ事で大戦争に終止符を打ったのです。』
戦争のあらましを効いたイオリは深い深い息を吐いた。
『最後まで静かに聞いてくれましたね。
聞きたい事がおありでしょう。
どうぞ。答えましょう。』
リュオン様の微笑みに背を押され、イオリは頷いた。
「最初にリュオン様の前に現れた時、彼の本質を知る事はできなかったのですか?」
その事にリュオン様は悲しみを帯びた顔をした。
『最初から彼は私を信じてなどいなかった。
人はどんなに無神論者であろうとも、心の何処かに祈りを持っています。
いざと言う時には縋るのです。
しかし、彼はそれすらも捨てたのでしょう。
私には彼の真髄を読み取れていなかった・・・。
私は上部の平和で自由な世界という夢物語に惹かれてしまったのです。』
神をも騙したルミエール。
イオリは寒気がした。
「彼の起こした事で世界が壊れそうだった。
だから・・・愛し子を送るようになったのですね?」
イオリの問いにリュオン様は頷いた。
『と言っても、戦闘に特化して力を授けるのは考えものでした。私は過ちを犯していますからね。
中には戦闘の力はなくとも、高い知識で畑の育成に尽力した人もいれば、鍛冶職人として名工になった人もいます。
戦闘力が高いのは十蔵と相澤さんくらいなものです。
ルミエールと十蔵・イオリさんの違いは分かりますか?』
今度はリュオン様がイオリに聞いてきた。
イオリは首を横に振ると考え込んだ。
『貴方が私と最初に会った時に願ったのは《お世話になった人から自分の記憶を消す事》、そして《亡くなったご家族への言伝》です。
十蔵はひたすらに家族と友の幸せを願っていました。
一方、ルミエールは《何ものにも怯える事のない強さ》を求めたのです。
ルミエールの失敗を繰り返さない為に私は、自分の欲を優先する者を選びません。』
真っ直ぐなリュオンの言葉はイオリの胸を貫いた。
「最後にもう1つ、お聞きします。
ダークエルフ・ルミエールは・・・まだ、生きているのですか?」
イオリの問いに絶対神リュオン様は小さく横に振った。
「そうであって、そうでない。
しかし、確実に言えるのは私の知っているルミエールはもういないという事です。」
エルフの里は世界に向けて宣戦布告をしたのです。』
リュオン様の悲しげな顔が一層深まるとイオリは溜息をついた。
『当初、世間は本気にしていませんでした。
自然を愛するエルフ達が武器を手に襲ってくるなど、どの種族も考えていなかったからです。
しかし、ルミエールの指揮の元に動き出したエルフの里の戦士達の戦闘力は無視できるものでは無くなっていきます。
人族の集落。獣人の集落。ドワーフ、魔獣やドラゴンに至るまでエルフ達は攻撃をやめませんでした。
それにより他の種族は共通の敵を倒すために手を取り合うようになったのです。
後の世に“大戦争”と呼ばれるようになった、この戦いは300年も続きました。
長命なエルフとは違い人間などは何度も世代交代をしています。
いつしか彼は“ダークエルフ”と言われるようになっていました。
長き苦しい戦いでした。
最終的にはドラゴン種を攻撃の要とした連合が勝利を収め、深傷をおったルミエールはエルフの里の戦士達に庇われながらも辛くも里に帰りました。
その後はルミエールの身柄を求める連合と里の光を守ろうとするエルフの里の住人達との話し合いがもたれるようになりました。
結果、ルミエールが所持し戦いに使われていた剣を没収し永久にエルフの里から出ることを禁じる事で話がまとまりました。
そうです・・・私が剣を与えたのです。
本来なら、連合はその場で首でも落として戦争の後始末をつけたいところだった。
しかし、エルフの里の求心力であるルミエールを殺害すればエルフの里の戦士達が戦いを継続し戦争は長引いでいたでしょう。
戦争が終わらなければ犠牲が増え続ける。
当時の種族の長達は危険を冒すのを止めルミエールの愛刀を没収し不可侵の条約を結ぶ事で大戦争に終止符を打ったのです。』
戦争のあらましを効いたイオリは深い深い息を吐いた。
『最後まで静かに聞いてくれましたね。
聞きたい事がおありでしょう。
どうぞ。答えましょう。』
リュオン様の微笑みに背を押され、イオリは頷いた。
「最初にリュオン様の前に現れた時、彼の本質を知る事はできなかったのですか?」
その事にリュオン様は悲しみを帯びた顔をした。
『最初から彼は私を信じてなどいなかった。
人はどんなに無神論者であろうとも、心の何処かに祈りを持っています。
いざと言う時には縋るのです。
しかし、彼はそれすらも捨てたのでしょう。
私には彼の真髄を読み取れていなかった・・・。
私は上部の平和で自由な世界という夢物語に惹かれてしまったのです。』
神をも騙したルミエール。
イオリは寒気がした。
「彼の起こした事で世界が壊れそうだった。
だから・・・愛し子を送るようになったのですね?」
イオリの問いにリュオン様は頷いた。
『と言っても、戦闘に特化して力を授けるのは考えものでした。私は過ちを犯していますからね。
中には戦闘の力はなくとも、高い知識で畑の育成に尽力した人もいれば、鍛冶職人として名工になった人もいます。
戦闘力が高いのは十蔵と相澤さんくらいなものです。
ルミエールと十蔵・イオリさんの違いは分かりますか?』
今度はリュオン様がイオリに聞いてきた。
イオリは首を横に振ると考え込んだ。
『貴方が私と最初に会った時に願ったのは《お世話になった人から自分の記憶を消す事》、そして《亡くなったご家族への言伝》です。
十蔵はひたすらに家族と友の幸せを願っていました。
一方、ルミエールは《何ものにも怯える事のない強さ》を求めたのです。
ルミエールの失敗を繰り返さない為に私は、自分の欲を優先する者を選びません。』
真っ直ぐなリュオンの言葉はイオリの胸を貫いた。
「最後にもう1つ、お聞きします。
ダークエルフ・ルミエールは・・・まだ、生きているのですか?」
イオリの問いに絶対神リュオン様は小さく横に振った。
「そうであって、そうでない。
しかし、確実に言えるのは私の知っているルミエールはもういないという事です。」
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