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束の間のポーレット
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乳屋の次男・カッチェが営むのは“牧場の恵み”と名付けられた小さい飯屋は開店と同時に満席となる。
牛乳やチーズの広まりはポーレットの食生活に革命を起こし、今では当たり前に利用されるようになった。
それでも“牧場の恵み”で出される料理達の魅力は人一倍高く。
貴族や商人のみならず、多くの旅人や市民にも喜ばれている。
この日もカッチェはシチューやグラタンなどの仕込みを終え、店を開店させた。
グラトニー商会から紹介された従業員は3人は、よく働くし、悩むと相談に乗ってくれる頼もしい存在だ。
「全席満席でーす。
12番席、シチューセット3つにグラタンセット1つです!」
「はいよ。5番席の出来てるものから、ドンドン持っていってくれ。」
「お客様のお帰りでーす!」
「ありがとうございました!!」
声が飛び交う店内は楽しげな笑い声が聞こえていた。
一番混む時間帯が過ぎ、一度店を閉めて休憩でもと思っていた時だった。
騒がしい一団が店内へ入ってきた。
「カッチェさん。こんにちわ。」
「「いい匂い!お腹減っちゃった。」」
「ナギも!」
「ニナも!」
「ほら、もう少しの我慢だ。」
カッチェは厨房から顔を出すと、訪問者に満面の笑みを浮かべた。
「旦那!!来てくれたんすね?
いらっしゃい!」
店主の喜びに従業員も重要な人物であると認識したらしい。
何故なら、イオリの後にはホワイトキャビンのバートやハンス、メルロスまでもが同行していたのだ。
もっとも、バートに至っては昼食を抜く気でいたためにブツブツと文句を言っているが、ハンスから「食べないと、頭も働きませんよ。」と嗜められていた。
「お久しぶりですね。
繁盛してるって聞きましたよ。良かったですね?
親父さんやスヴェンさんはお元気ですか?」
「元気ですよ。
時より聞く旦那の噂にヤキモキしてましたよ。
旦那が送ってくれた冷蔵庫や保温庫のおかげで、随分と効率が良くなりました。
ヨーグルトも一定数の生産が出来るようになって、ポーレット公爵家をはじめとした貴族様方にお売りしてます。」
話に夢中なカッチェのエプロンを双子は引っ張り、見上げた。
「カッチェさん、シチューまだある?」
「お腹減った・・・。」
カッチェは顔を綻ばせると、従業員にテーブルの案内を任せ急いで厨房に向かって行った。
「待ってな!今、用意してやるよ。
グラタンも食うだろ?
取り分け皿を出すから、好きなだけ食ってけよ。」
フラフラのバートを気にしつつ、従業員はテーブルへと案内した。
2つのテーブルで大きなテーブルを作ると、みんなで一緒に食べられると子供達は喜んだ。
運ばれてきたシチューは甘い匂いを漂わせていて、しっかりと胡椒の有無を選ぶ事ができる。
子供達とメルロスは要らないと伝え、イオリや他の大人達は胡椒を頼んだ。
「うーん。美味しい!
以前よりコクがあって、まろやかに仕上がっていますね。
出汁の種類を変えたんですね?」
「さすが旦那だ!そうなんです。
野菜の分量を変えて、煮込み時間も長くしたんです。」
イオリに褒められて嬉しいのかカッチェは高揚していた。
夢中に食べ進める子供達と、仕事の合間の食事にホッとする大人達。
食べ方1つで求めている事が違うのだ。
「そうだ。旦那。
実は相談があるんです。
夕方からは酒も出してて、チーズをツマミにしてるんですけどね。
客の反応がイマイチなんですよ。チーズで他の食べ方がないかって研究してるんですけど、旦那なら、どうします?」
乳の料理に対して探究心の高いカッチェが真剣な顔でイオリに頼ってきた。
「チーズのおツマミ・・・?」
しばらく考えたイオリはニヤリとすると言った。
「燻製なんてどうですか?」
牛乳やチーズの広まりはポーレットの食生活に革命を起こし、今では当たり前に利用されるようになった。
それでも“牧場の恵み”で出される料理達の魅力は人一倍高く。
貴族や商人のみならず、多くの旅人や市民にも喜ばれている。
この日もカッチェはシチューやグラタンなどの仕込みを終え、店を開店させた。
グラトニー商会から紹介された従業員は3人は、よく働くし、悩むと相談に乗ってくれる頼もしい存在だ。
「全席満席でーす。
12番席、シチューセット3つにグラタンセット1つです!」
「はいよ。5番席の出来てるものから、ドンドン持っていってくれ。」
「お客様のお帰りでーす!」
「ありがとうございました!!」
声が飛び交う店内は楽しげな笑い声が聞こえていた。
一番混む時間帯が過ぎ、一度店を閉めて休憩でもと思っていた時だった。
騒がしい一団が店内へ入ってきた。
「カッチェさん。こんにちわ。」
「「いい匂い!お腹減っちゃった。」」
「ナギも!」
「ニナも!」
「ほら、もう少しの我慢だ。」
カッチェは厨房から顔を出すと、訪問者に満面の笑みを浮かべた。
「旦那!!来てくれたんすね?
いらっしゃい!」
店主の喜びに従業員も重要な人物であると認識したらしい。
何故なら、イオリの後にはホワイトキャビンのバートやハンス、メルロスまでもが同行していたのだ。
もっとも、バートに至っては昼食を抜く気でいたためにブツブツと文句を言っているが、ハンスから「食べないと、頭も働きませんよ。」と嗜められていた。
「お久しぶりですね。
繁盛してるって聞きましたよ。良かったですね?
親父さんやスヴェンさんはお元気ですか?」
「元気ですよ。
時より聞く旦那の噂にヤキモキしてましたよ。
旦那が送ってくれた冷蔵庫や保温庫のおかげで、随分と効率が良くなりました。
ヨーグルトも一定数の生産が出来るようになって、ポーレット公爵家をはじめとした貴族様方にお売りしてます。」
話に夢中なカッチェのエプロンを双子は引っ張り、見上げた。
「カッチェさん、シチューまだある?」
「お腹減った・・・。」
カッチェは顔を綻ばせると、従業員にテーブルの案内を任せ急いで厨房に向かって行った。
「待ってな!今、用意してやるよ。
グラタンも食うだろ?
取り分け皿を出すから、好きなだけ食ってけよ。」
フラフラのバートを気にしつつ、従業員はテーブルへと案内した。
2つのテーブルで大きなテーブルを作ると、みんなで一緒に食べられると子供達は喜んだ。
運ばれてきたシチューは甘い匂いを漂わせていて、しっかりと胡椒の有無を選ぶ事ができる。
子供達とメルロスは要らないと伝え、イオリや他の大人達は胡椒を頼んだ。
「うーん。美味しい!
以前よりコクがあって、まろやかに仕上がっていますね。
出汁の種類を変えたんですね?」
「さすが旦那だ!そうなんです。
野菜の分量を変えて、煮込み時間も長くしたんです。」
イオリに褒められて嬉しいのかカッチェは高揚していた。
夢中に食べ進める子供達と、仕事の合間の食事にホッとする大人達。
食べ方1つで求めている事が違うのだ。
「そうだ。旦那。
実は相談があるんです。
夕方からは酒も出してて、チーズをツマミにしてるんですけどね。
客の反応がイマイチなんですよ。チーズで他の食べ方がないかって研究してるんですけど、旦那なら、どうします?」
乳の料理に対して探究心の高いカッチェが真剣な顔でイオリに頼ってきた。
「チーズのおツマミ・・・?」
しばらく考えたイオリはニヤリとすると言った。
「燻製なんてどうですか?」
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