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ぽん

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男が指輪を手にした時

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 アルデバラン家の2人の兄弟が初めての茶会を終えた。

 ダチュラに住む貴族達は引きこもっていた領主の息子達を確認した事で話題が尽きなかった。

 息子達の評判も上々な事に気を良くした父であるゼス・アルデバランは様々な集いに2人を連れ出した。

 噂は輪をかけて盛り上がり、益々2人への招待状が増えていった。

 

 ・・・当然。エラ・アルデバラン・・・クロスの母の耳にも入り屋敷では癇癪を起こしていた。

 歪んだ心を隠し出席した茶会での事だった。

「先日、御子息様方とご挨拶させて頂きました。
 御二方ともご立派で夫人も鼻が高いでしょう。
 御長男のクロス様は勿論、御次男のサムエル様も若い娘達に人気ですのよ。」

「私もお聞きしました。
 何でも剣術も強く、難しい航海歴史も詳しいとか。」

「今でさえ人気ですもの。
 成人したら社交会への招待も増えるのでしょうね。」

「「「羨ましいわぁぁぁ。」」」

 こわばった表情を隠すようにエラは微笑んだ。

「幼い頃から2人で過ごしていましたからね。
 あの子もクロスと共に学んだのでしょう。」

 集まった貴族夫人達は拳が震えているエラに気づかずにサムエルを褒め称えている。

 クロスも褒められているのものの、エラの耳にはサムエルへの称賛しか耳に入らないのである。

 我慢が出来なかった。
 自分の息子よりも褒められている事が・・・。

 2人が屋敷を出る事が増え、喜ぶ使用人達により明るさが出てきた屋敷も気に食わなかった。

 気づけば、手に触れるものを投げつけて気分を発散させていた。

が!
 アレが優秀なわけがない!!
 認めない!私のクロスの方が断然優秀なのよ!!
 はっ・・・!
 もしかして、あのは私とクロスの居場所を取ろうとしているのかもしれない。
 そうよ!
 あの卑しいドブネズミが全てを狂わす!
 私の物を・・・。」

 エラの歪んだ考えは、こうして膨らんでいった。




 一方、クロスとサムエルの2人の兄弟はリゲル伯爵家次男チェイスを窓口に着々と友人を増やしていた。
 シリウス伯爵家の嫡男ロウ
 プロキオン伯爵家の兄妹ペインとナディア
 ポルックス子爵家の若き当主カミロとその姉ソニア
 マリエッタの兄姉であるカペラ子爵家嫡男ウィリアムと姉のエステル
 基本的に同世代と顔を合わせて交流を始めた。

 それぞれ、一癖も二癖もある面子であったがクロスは満足だった。
 クロスとサムエル以外の者達は大体が幼い頃からの顔見知りで慣れ親しんでいた。
 ただ、最近ではリゲル家長男のピートの横柄な態度には辟易していたらしく先日叩きのめしたサムエルは友好的に受け取られていた。

「それで?一体何故、2人は屋敷から出なかったんだい?
 流石に大事にされすぎじゃないか?」

 シリウス伯爵家のロスが首を傾げて疑問を口にした。

「滅多な事は言う物じゃないわ。
 御当主のお考えでしょう。」

 ポルックス子爵家の現当主の姉エステルが呆れたように首を振った。

 今日はシリウス家の催で人の数も制限されていた。
 大人達は屋敷の中で昼から酒を嗜み、子供達はガーデンで茶会をしていた。

「皆には私達の事や家は、どのように聞いている?」

 気心が知れてきても、クロスの問いかけに気まずそうに子息女達は顔を見合わせた。
 するとリゲル伯爵家のチェイスが代表して口を開いた。

「ダチュラの盟主アルデバラン家。
 当主ゼス・アルデバランはで領地を守る義務は怠らない。
 奥方、エラ・アルデバランは茶会などに参加し貴族の夫人の鏡としての勤めを果たしている。
 貴族夫人の中でも彼女の人気は上々だ。
  
 しかし、私生活は正反対。
 派手な遊びを好む公爵と比べ、奥方は屋敷で慎みをもって過ごしている。
 2人の息子の事は誰も知らない。
 両親の愛情ゆえに屋敷から出る事が無い息子達は大切にされているか、本当に存在するのか疑わしい。
 勿論、探りを入れる者もいたが使用人をはじめ口を閉ざす物が多く全く情報が掴めなかった。」

「そこに我々が現れた。
 当初は本物か疑いもしたが、母の顔に似た私と父の髪と瞳を持った弟に納得した・・・。
 そんなところかな。」

「そうだね。」

 クロスはチェイスが伝えた事に頷いて納得した。

「実際には複雑な話ではない。
 “閉じ込められていた”
 それだけだ。」

 子息女は目を見開き驚いた顔をした。

「閉じ込められていた?!
 どう言うこと?」

 クロスと目があったサムエルは肩を竦めた。

「私の事はお気になさらず。」

 クロスは集まった友人達を見渡した。

「チェイスは派手な手腕といったが父の領地の運営には思う事があって、幼い頃からサムエルと一緒に調べ上げていた。
 屋敷を出る事はできなかったが、するべき事は沢山あった。
 私達2人は、そうやって生きてきた。
 
 私は・・・私たちの時代こそ、このダチュラの変革の時だと思っている。
 それには皆の力が必要なんだ。
 だから君達には嘘は付かない。
 それを誓うよ。」

 クロスの言葉に同世代の子息女達は息を呑んだ。
 続いてクロスの口から2人の生い立ちを聞かされた話は壮絶なものだった。
 
 良家に生まれた為に、甘やかされて育ったと誰もが思っていた。
 世間知らずな頼りない坊ちゃん・・・それが領民達が考えていた2人の想像だった。

「サムエルが母と血が繋がっていない事は、承知のはず・・・ピートもそう言っていたからね。
 しかし、私にとって弟こそが唯一の家族だ。」

 そんなクロスに気を使ってかロウ・シリウスが話を変えた。

「領地の未来について聞かせてくれよ。
 何を考えているんだい?」

 そんな質問にクロスは、これからの領地の展望を話して聞かせた。
 随分と突飛なクロスの案に最後に聞いていた者は笑い出していた。

「面白そうじゃないか!
 私は乗るよ!」

 最初にチェイス・リゲルが手を挙げ立ち上がった。

「普通の領地では味わえないスリリングな政策だね。」

 ペイン・プロキオンもクスクスしながらも立ち上がった。

「もう、お兄様!
 通常、スリリングな領地など誉められた物ではありませんのよ?」

 ナディア・プロキオンは呆れたように兄に追随した。

「冷静な話し相手が必要だろう?
 私も仲間に入った方が良いだろう。」

 ロス・シリウスは静かに立ち上がるも顔は楽しそうに笑っていた。

「全く・・・この中で唯一、すでに家を継いでいる者にも話は通してくれ。
 同世代の下級貴族を纏めるのに力を貸そう。」

 カミロ・ポルックスが苦笑しながらも賛同した。

「面白いって大切よ。
 私は結婚せずに商売をするつもりですの。
 そうだわ。ホテルでも建てようかしら・・・。
 役に立つでしょう??」

 ソニア・ポルックスは扇子で仰ぎながらも優雅な笑みを浮かべた。

「やれやれ、それじゃ私も手を挙げるしかないじゃないか。
 しがない下級貴族は餌にでもなりましょうかね。」

 ウィリアム・カペラは太々しい笑顔で立ち上がった。

「それなら私もお兄様を支えなくてはね。」

 エステル・カペラは立ち上がると妹に手を伸ばした。

「みんな・・みんな馬鹿じゃないの?
 何言ってんのよ。
 
 それが領の為になるって言うの?
 どうかしてるわ・・・。ふふふ。」

 マリエッタ・カペラは悪態をつくと姉の手を握って立ち上がった。

 一同は立ち上がるとチェイスに習いクロスに片膝をついた。

「我が血にかけてダチュラの発展にを向かい入れる貴方を守ると誓いましょう。
 そして我ら一同、次期ダチュラ当主クロス・アルデバラン様に忠誠と友情を。」

 それを聞いたサムエルは微笑むとチェイスの隣に行き片膝をつき首を垂れた。

「私も一同に誓う。
 私が選択した未来に光は無い。
 それを受け入れてくれた皆に私の命を捧げよう。
 何かあった時、私の命1つで事をおさめろ。
 それは、その未来を決めた私の責任である。
 高い壁に遮られていた私達兄弟を友と呼んでくれる君達に感謝する。」

 チェイスは立ち上がるとティーカップを持ち上げた。

「地獄を生き抜いてきたアルデバラン兄弟に乾杯!」

「「「「「「「「「乾杯!」」」」」」」」」

 ここに秘密を共有する友人達の集まりが出来た。
 それはシリウス家の庭で結成された事から可の家の愛犬からとって『ディアマンの庭』と名付けられた。
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