続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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愛し子の帰還

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「イオリ!!」

 叫ぶ声がして、人混みを探すと“日暮れの暖炉”のダンとローズが手を振っていた。
 気づいた治安維持隊のポルトスが人をかき分け2人を通りしている。

「間に合った!
 これ、途中で食べてね。
 ガーリックチキンとスープよ。
 みんな気をつけて行くのよ?
 良い?危なかったら逃げなさいね。」

 馬車から身を出す子供達に包みを押し付けるとローズは心配そうにニナの頭を抱きしめた。

「ありがとう!!嬉しい!
 大丈夫!
 オレ達、逃げるの得意なんだ。」

 スコルが言うと子供達は大笑いした。

「朝早くから、ありがとうございます。
 ベルちゃんも、またね。」

 ダンが抱える小さなベルをイオリが抱き上げるとゼンが小さな頬をペロッと舐めた。
 キャッキャと笑うベルに子供達も微笑んだ。

「いつ帰ってきても良いように、店を開けとくからな。
 帰ってくるんだぞ?いいな?」

「はい。ご心配おかけします。
 行ってきます。」

 念を押すダンに苦笑したイオリであったが、ベルまでもが

「いい?」

 と言うものだから、しっかりと頷いて見せた。

「はい。無事に帰ってくるよ。」

 ベルをダンに返すといよいよ出発となった。
 人の群れの中に知った顔がちらほら見え、手を振る彼らに挨拶をするとイオリはニコライとヴァルトに頷いてみせた。

「それじゃ、行きます。
 テオさんとオルガ夫人、屋敷の皆さんに宜しくお伝え下さい。
 また会いましょう。」

「あぁ、行ってこい。」
「楽しんでこいよ。」

「「「「行ってきまーす。バイバーイ。」」」」

 子供達の声をきっかけにヒューゴが合図を送るとアウラは走り出した。 

 手を振る子供達とイオリがあっという間に見えなくなると壁門にいた人達は、今のは誰だと噂をし出した。

「知らないのか?“黒狼”さ。
 もう1人は新しくSランクに昇格した冒険者だよ。」

 誇らしげに言うポルトスに1人の男が聞いた。

「へー。“黒狼”の相棒ですかい?」

「相棒?・・・“黒狼”の相棒は白い狼さ。
 そうだな。彼らは家族だよ。」

「二つ名はなんなんで?」

「二つ名?・・・んー。いや・・
 うーん。」

 悩むポルトスに苦笑するとニコライが呟いた。

「イルミナーレ・・・照らす者だ。」

 兄の言葉にヴァルトは静かに微笑えんだ。

「良い二つ名ですね。
 本人に聞けば嫌がるでしょうが、ヒューゴにはピッタリです。
 アイツは自分自身ではなく他人を輝かせる男ですからね。」

 そんな貴族の若者の話をそばで聞いていた男は訳もわからず頷いた。

「イルミナーレ・・・へぇ。
 そりゃ、カミさんに教えてやらなきゃな。」

 新しいSランク冒険者の話は瞬く間に広まった。

ーーーーーー
 黒狼に次いでSランクが出たらしい、ポーレット公爵の専任にもなったってよ。
 どんなやつだって?
 黒狼よりデカい奴だったよ。
 なんて言ったかな?とにかくデカイ剣を使うらしい。
 “照らす者イルミナーレってんだってよ。
 意味は知らねーが、ポーレットじゃお祭り騒ぎさ。
 その黒狼とイルミナーレが家族だとよ。
 凄いもんじゃねーか!
ーーーーーー

 そんな事になってるとはつゆ知らず、小さな馬車は平原を走っていた。

「はい。兄様。
 ガーリックチキンよ。
 イオリがパンに挟んでくれたから、運転席にいても食べられるって。」

 ニナは兄の身に嬉しい事が起こったと分かっている。
 移動中にも関わらず、ヒューゴの隣にやってきては一緒になってパンを頬張り始めた。

「ありがとう。ニナ。
 やっぱりダンさんのガーリックチキンは美味いな。」

 荷台から2人を微笑んで見ている家族に気づかずに、兄妹は太陽が上がる方角に笑顔で進んでいった。
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