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旅路〜王都〜
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「面白いものを見せてもらった。
子供達の成長には自信をつけさせる事も大切だからな。」
グラトニー商会・会頭ロスは楽しそうに荷物整理をしている子供達を見つめた。
「俺じゃなくてヒューゴさんの考えですけどね。」
クスクス笑うイオリにヒューゴが肩を竦めた。
「でも、楽しそうだから良いだろう?」
「そうですね。
・・・お2人が冒険者ギルドにいらっしゃるとは思いませんでした。
後程、ご挨拶に行こうと思っていたんです。」
イオリの言葉にロスは微笑んだ。
「宰相様から連絡があってな。
こちらに来たんだ。
どうやら、宰相様は一度に用事を済ませてイオリに早く王都を発ってもらいたいようだ。
貴族の中でイオリに接触を試みる者達がいるようでな。
王城から出た今、彼らが自由に手を伸ばしてくる可能性がある事を危惧されているのだろう。」
「だから、教会のディマルコ枢機卿も待っていてくれたんですね。
気を遣わせてしまいましたね。
すみません。」
「いいや、私もそれで良いと思っている。
チョコレートの事は感謝する。
王族の皆様もお気に召したとか?
使節団にはグラトニーも同行することになった。
私も“デザリア”に向かう。」
「会頭自らですか?」
「国相手の商売は最初が肝心だ。
会頭が赴き話を纏めるのが早い。
その後は他の者に任せて帰国するよ。」
ロスの考えにイオリは納得したように頷いた。
「では、ダグスクでお会いできますね。
船旅も初めてなんです。
楽しみです。」
「あぁ、使節団とは国を挙げての旅団と同じだ。
安全である事は間違いないが海は何があるか分からない。
でも君たちがいるのなら安心だよ。」
イオリとロスの会話に周りの者は黙って聞いていた。
「コホンッ」とギルドマスター・ハンターが咳払いをした。
「こちらも良いかな?
まずはオンリールの件です。
新しい領主が戻られ、宰相殿の肝入りの役人を代官に置き領地運営を再開されたそうです。
冒険者ギルドも新たにギルドマスターを置き、以前のギルマスを含め悪事に加担していた者達は王都へ輸送されてくる予定です。
とりあえず、目下の問題は解決となります。
後は私たちにまかせて下さい。」
「良かったです。
アマンド・オンリール前伯爵もお戻りになれば、お孫さんも安心されるでしょうね。」
イオリは一足先に王都を旅立った老貴族を思い出した。
最後までイオリを愛し子として敬愛の意を示していったアマンドの無事の旅路をイオリは祈った。
「商人ギルドも同じような動きをしたようだ。
我々グラトニーの者達も辛酸を舐めていたようだから、張り切って立て直しをしているよ。
なぁ、リロイ。」
晴れ晴れとした顔のロスにリロイは同意の笑みを見せた。
「はい。
グラトニーが貴族や商人ギルドの言いなりになるはずがございません。
オンリールの支店の者達も意地になり抵抗していたようで、今や生き生きとした報告書を送ってきます。
新しい領主に期待したいところです。」
この部屋にいるのは冒険者ギルドのギルドマスターにアースガイルで1番であるグラトニー商会のNo.1とNo.2だ。
それにしても、真実を知らされていないのか前領主の老いを理由の交代劇として受け止めているらしかった。
安堵すると共に王城の話が市民に知らされない機密さも感心した。
「それじゃ、そろそろ出発するかい?
早めに出発する方が良いんだろう?
表門も空いてきた頃だろうからね。」
壁にもたれかかっていたアレックスが声をかけるとイオリは頷いた。
「そうですね。
行きましょうか。」
子供達も準備ができたのか、アレックスと握手を交わしている。
「それじゃ、皆さん。
また会いましょう。」
イオリ達は扉を開けて冒険者ギルドを後にするのだった。
子供達の成長には自信をつけさせる事も大切だからな。」
グラトニー商会・会頭ロスは楽しそうに荷物整理をしている子供達を見つめた。
「俺じゃなくてヒューゴさんの考えですけどね。」
クスクス笑うイオリにヒューゴが肩を竦めた。
「でも、楽しそうだから良いだろう?」
「そうですね。
・・・お2人が冒険者ギルドにいらっしゃるとは思いませんでした。
後程、ご挨拶に行こうと思っていたんです。」
イオリの言葉にロスは微笑んだ。
「宰相様から連絡があってな。
こちらに来たんだ。
どうやら、宰相様は一度に用事を済ませてイオリに早く王都を発ってもらいたいようだ。
貴族の中でイオリに接触を試みる者達がいるようでな。
王城から出た今、彼らが自由に手を伸ばしてくる可能性がある事を危惧されているのだろう。」
「だから、教会のディマルコ枢機卿も待っていてくれたんですね。
気を遣わせてしまいましたね。
すみません。」
「いいや、私もそれで良いと思っている。
チョコレートの事は感謝する。
王族の皆様もお気に召したとか?
使節団にはグラトニーも同行することになった。
私も“デザリア”に向かう。」
「会頭自らですか?」
「国相手の商売は最初が肝心だ。
会頭が赴き話を纏めるのが早い。
その後は他の者に任せて帰国するよ。」
ロスの考えにイオリは納得したように頷いた。
「では、ダグスクでお会いできますね。
船旅も初めてなんです。
楽しみです。」
「あぁ、使節団とは国を挙げての旅団と同じだ。
安全である事は間違いないが海は何があるか分からない。
でも君たちがいるのなら安心だよ。」
イオリとロスの会話に周りの者は黙って聞いていた。
「コホンッ」とギルドマスター・ハンターが咳払いをした。
「こちらも良いかな?
まずはオンリールの件です。
新しい領主が戻られ、宰相殿の肝入りの役人を代官に置き領地運営を再開されたそうです。
冒険者ギルドも新たにギルドマスターを置き、以前のギルマスを含め悪事に加担していた者達は王都へ輸送されてくる予定です。
とりあえず、目下の問題は解決となります。
後は私たちにまかせて下さい。」
「良かったです。
アマンド・オンリール前伯爵もお戻りになれば、お孫さんも安心されるでしょうね。」
イオリは一足先に王都を旅立った老貴族を思い出した。
最後までイオリを愛し子として敬愛の意を示していったアマンドの無事の旅路をイオリは祈った。
「商人ギルドも同じような動きをしたようだ。
我々グラトニーの者達も辛酸を舐めていたようだから、張り切って立て直しをしているよ。
なぁ、リロイ。」
晴れ晴れとした顔のロスにリロイは同意の笑みを見せた。
「はい。
グラトニーが貴族や商人ギルドの言いなりになるはずがございません。
オンリールの支店の者達も意地になり抵抗していたようで、今や生き生きとした報告書を送ってきます。
新しい領主に期待したいところです。」
この部屋にいるのは冒険者ギルドのギルドマスターにアースガイルで1番であるグラトニー商会のNo.1とNo.2だ。
それにしても、真実を知らされていないのか前領主の老いを理由の交代劇として受け止めているらしかった。
安堵すると共に王城の話が市民に知らされない機密さも感心した。
「それじゃ、そろそろ出発するかい?
早めに出発する方が良いんだろう?
表門も空いてきた頃だろうからね。」
壁にもたれかかっていたアレックスが声をかけるとイオリは頷いた。
「そうですね。
行きましょうか。」
子供達も準備ができたのか、アレックスと握手を交わしている。
「それじゃ、皆さん。
また会いましょう。」
イオリ達は扉を開けて冒険者ギルドを後にするのだった。
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