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旅路〜デザリア・ダンジョン〜
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驚いていたのは魔法のエルフだけではない。
一帯に土壁を作っていた“デザリア”の筆頭魔法使いシモン・ヤティムも目の前の光景に驚愕していた1人だった。
「・・・“純白のフェンリル”。」
先程まで、イオリに甘えていた白い狼の正体を信じられずにいた。
《アースガイルはとんでもない戦力を隠し持っていたのか・・・?
・・・いや、違う。》
シモン・ヤティムは咄嗟に自分の考えを否定した。
イオリを紹介したディビット王子の笑顔を思い出したのだ。
《恐らく・・・恐らく、アースガイルはイオリ殿を縛っているのではない。
そういえば・・・数年前にアチラの大陸のミズガルドの内乱で純白のフェンリルとドラゴンが現れたと聞く。
眉唾な報告だと思っていたが、もしやイオリ殿の従魔であったのか?
だとしたら、ドラゴンとは・・・。》
今になって、イオリの実力をアースガイルの王家が買っている意味を理解し始めた筆頭魔法使いは、口元に笑みを見せた。
《なんとかなるかもしれん!》
余裕を見せ始めたシモン・ヤティムであったが、それも魔法のエルフが作り出した巨大な火の玉を見て驚愕で顔を歪めた。
「イオリ殿ーーー!!」
悲鳴をあげるシモン・ヤティムの目の前でイオリが炎に包まれていった・・・。
____________
怒りに任せたとは言え、魔法のエルフは自分が繰り出した火魔法が若者に激突すると満足するように“純白のフェンリル”に対峙した。
「お前の主は死んだ。
伝説の“純白のフェンリル”と出会えるとは運が良い。
お前は里に連れて帰る。
我らが光のお側に仕えるのだ。」
ジリジリと下がりながら威嚇してくるフェンリルを力でねじ伏せようと手をかざした。
「・・・我に従え。」
従魔契約を強行しようとした時だった。
「俺の家族に手を出すな。」
ドガッ!ズササッー!!
後頭部に衝撃が走ったと思ったら顔面から転がった魔法のエルフを今度はフェンリルが踏みつけた。
「グッ・・・ナゼ・・・。」
背中から押しつけられる力が息の道を潰していく。
「ウチの子に炎と友達な子がいるんですよ。」
死んだと思っていた若者・・・イオリは自分の肩に乗る真っ赤な小鳥の喉を優しく撫でた。
小鳥は気持ちよさそうに目を細めて、歌うように喉を「クルクル」と鳴らした。
『僕はイオリと共に生きるの!
イオリと離れないの!
お前達なんて大嫌いだ!』
「ガルルルル!!」
怒りで魔法のエルフを踏みつける力が強くなるゼンをイオリが宥める。
「ゼン。
死んじゃうよ。
力を弱めてあげな。」
『でも!
コイツ、イオリが死んだって言った!
僕はイオリと一緒にいるのに!
それに、力弱めると逃げ出すよ?』
「逃げ出せば、何度でも捕まえるさ。
俺の相棒を奪おうとしたんだ。
逃がすはずがないだろう。」
一歩、一歩近づいてくるイオリを魔法のエルフは恨み睨んだ。
息苦しく気が遠くなる中、男の耳にイオリの声が聞こえていた。
《我を何度でも捕まえる?
逃がすはずがないだと・・・。
逃げるわけがあるまい!
我は誇り高きダークエルフ様の血を引く崇高な一族。
お前らのような下等生物が、我をどうするというのだぁぁぁぁぁ!》
魔法のエルフは怒りを込めてゼンに踏まれている背中に熱を集めた。
『熱ッ!』
思わず足を外したゼンから逃れると即座にステルス魔法で姿を消す。
『あぁぁー!逃げたぁぁ!』
ガッカリするゼンは地団駄を踏んで悔しがった。
『もう、逃さないんだから!』
ゼンはお尻をフリフリして魔法のエルフの匂いを追いかける。
そんな鼻息を荒くするゼンをイオリは苦笑するのだった。
一帯に土壁を作っていた“デザリア”の筆頭魔法使いシモン・ヤティムも目の前の光景に驚愕していた1人だった。
「・・・“純白のフェンリル”。」
先程まで、イオリに甘えていた白い狼の正体を信じられずにいた。
《アースガイルはとんでもない戦力を隠し持っていたのか・・・?
・・・いや、違う。》
シモン・ヤティムは咄嗟に自分の考えを否定した。
イオリを紹介したディビット王子の笑顔を思い出したのだ。
《恐らく・・・恐らく、アースガイルはイオリ殿を縛っているのではない。
そういえば・・・数年前にアチラの大陸のミズガルドの内乱で純白のフェンリルとドラゴンが現れたと聞く。
眉唾な報告だと思っていたが、もしやイオリ殿の従魔であったのか?
だとしたら、ドラゴンとは・・・。》
今になって、イオリの実力をアースガイルの王家が買っている意味を理解し始めた筆頭魔法使いは、口元に笑みを見せた。
《なんとかなるかもしれん!》
余裕を見せ始めたシモン・ヤティムであったが、それも魔法のエルフが作り出した巨大な火の玉を見て驚愕で顔を歪めた。
「イオリ殿ーーー!!」
悲鳴をあげるシモン・ヤティムの目の前でイオリが炎に包まれていった・・・。
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怒りに任せたとは言え、魔法のエルフは自分が繰り出した火魔法が若者に激突すると満足するように“純白のフェンリル”に対峙した。
「お前の主は死んだ。
伝説の“純白のフェンリル”と出会えるとは運が良い。
お前は里に連れて帰る。
我らが光のお側に仕えるのだ。」
ジリジリと下がりながら威嚇してくるフェンリルを力でねじ伏せようと手をかざした。
「・・・我に従え。」
従魔契約を強行しようとした時だった。
「俺の家族に手を出すな。」
ドガッ!ズササッー!!
後頭部に衝撃が走ったと思ったら顔面から転がった魔法のエルフを今度はフェンリルが踏みつけた。
「グッ・・・ナゼ・・・。」
背中から押しつけられる力が息の道を潰していく。
「ウチの子に炎と友達な子がいるんですよ。」
死んだと思っていた若者・・・イオリは自分の肩に乗る真っ赤な小鳥の喉を優しく撫でた。
小鳥は気持ちよさそうに目を細めて、歌うように喉を「クルクル」と鳴らした。
『僕はイオリと共に生きるの!
イオリと離れないの!
お前達なんて大嫌いだ!』
「ガルルルル!!」
怒りで魔法のエルフを踏みつける力が強くなるゼンをイオリが宥める。
「ゼン。
死んじゃうよ。
力を弱めてあげな。」
『でも!
コイツ、イオリが死んだって言った!
僕はイオリと一緒にいるのに!
それに、力弱めると逃げ出すよ?』
「逃げ出せば、何度でも捕まえるさ。
俺の相棒を奪おうとしたんだ。
逃がすはずがないだろう。」
一歩、一歩近づいてくるイオリを魔法のエルフは恨み睨んだ。
息苦しく気が遠くなる中、男の耳にイオリの声が聞こえていた。
《我を何度でも捕まえる?
逃がすはずがないだと・・・。
逃げるわけがあるまい!
我は誇り高きダークエルフ様の血を引く崇高な一族。
お前らのような下等生物が、我をどうするというのだぁぁぁぁぁ!》
魔法のエルフは怒りを込めてゼンに踏まれている背中に熱を集めた。
『熱ッ!』
思わず足を外したゼンから逃れると即座にステルス魔法で姿を消す。
『あぁぁー!逃げたぁぁ!』
ガッカリするゼンは地団駄を踏んで悔しがった。
『もう、逃さないんだから!』
ゼンはお尻をフリフリして魔法のエルフの匂いを追いかける。
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