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旅路〜デザリア・ガレー〜

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 突然にアースガイル国王と会話する事になったジュード・ガレーは疲弊していた。
 数年分の緊張を使い切ったようだ。

「・・・イオリ殿。
 連絡するなら初めに言っておいてくれ。」

「あれ?
 アースガイルに連絡するって言いましたよね?」

 キョトンとするイオリにジュード・ガレーは脱力する。

「御相手がアースガイル国王とは誰も思わんだろう。
 せめてポーレット公爵殿かと思っていたのだ。」

「あぁ。
 テオさんでも良かったですね。
 それじゃ、テオさんにも・・・。」

「よい!
 もう良い!」

 慌てている主をサポートするべく、ウムラがイオリにフルーツの盛り合わせを差し出した。

「どうぞ、イオリ様。
 一度お休み下さい。」

「うわ。
 美味しそうですね。
 有難うございます。」

 連絡するのをやめて、イオリは嬉しそうにフルーツに手を伸ばした。

「ウフフ。
 相変わらず、イオリ様は豪胆ですね。」

 リルラが笑いながら戻ってくると、タージ・ラバンは冷や汗を拭いながら小声で問いかけた。

「今の、本当にアースガイル国王なの?」

「そうですよ。
 本物のアルフレッド・アースガイル国王と宰相グレン・ターナー侯爵閣下です。
 あの指輪で会話できる人間は限られています。
 国王とポーレット公爵閣下のみです。」

 楽しげに話すリルラをタージ・ラバンは伺うように見上げた。

「それをなんでリルラさんが知ってるの?
 しかも、あちらも君を知ってるようだったけど。」

 疑問に思うのは当然の事だった。

「イオリ様の下にいると、あり得ない事が当たり前の様に降りかかってくるのですよ。
 ・・・これ、序の口ですよ?」

 気遣うようなリルラにタージ・ラバンはギョッとしてよろけた。

「旦那様。
 まだ、侯爵様の御前です。
 倒れるのは屋敷を後にしてからにしてください。」

 背中を支えるユーフの声にタージ・ラバンはハッとして姿勢を正した。

「後で詳しく!」

 顔を歪めて声を落としたタージ・ラバンにリルラは澄まし顔で微笑んで首を傾げた。

「これ以上、特別話す事もないですけど。」

「そんな事あるか!
 そりゃ、グラトニーが放っておかない訳だわ・・・。」

 領主と商人達の面会はとんでもない方向に転がっていた。

「・・・ふう。
 それでは、これで“カズブール”への采配は私に任された訳だが、ラバンよ。
 何か希望はあるのか?」

 気持ちを立て直したジュード・ガレーは控えるタージ・ラバンに問いかけた。

「はい。
 商人には商人の道理がございます。
 “カズブール”は私が対処致します。」

「・・・私には商人ギルドを抑えろというのだな?」

「願いますれば。」

 目に力を宿したタージ・ラバンを見つめ、ジュード・ガレーは頷いた。

「分かった。
 タージ・ラバン。
 ガレーの領民に平穏を取り戻してくれ。」
  
「ラバン商会の会頭として、タージ・ラバン。
 ガレー侯爵様のお言葉に従います。」

 領主の承認を得たタージ・ラバンは目の色を変えて部屋を出て行った。

「私も共に努めましょう。
 “ホワイトキャビン”は民の味方。
 これからデザリアでも商売をさせて頂くのですから。」

 リルラはイオリとジュード・ガレーに頭を下げるとタージ・ラバンの後を追っていった。

「さて、後は我々の仕事か。」

 ジュード・ガレーの言葉に執事兼家令であるウムラが楽しそうに頷いた。

「はい。久々に騒がしくなりそうです。」

 大人達のやる気の脇で、イオリは静かにフルーツを頬張るのだった。
 
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