346 / 780
旅路〜デザリア・ガレー〜
354
しおりを挟む
突然にアースガイル国王と会話する事になったジュード・ガレーは疲弊していた。
数年分の緊張を使い切ったようだ。
「・・・イオリ殿。
連絡するなら初めに言っておいてくれ。」
「あれ?
アースガイルに連絡するって言いましたよね?」
キョトンとするイオリにジュード・ガレーは脱力する。
「御相手がアースガイル国王とは誰も思わんだろう。
せめてポーレット公爵殿かと思っていたのだ。」
「あぁ。
テオさんでも良かったですね。
それじゃ、テオさんにも・・・。」
「よい!
もう良い!」
慌てている主をサポートするべく、ウムラがイオリにフルーツの盛り合わせを差し出した。
「どうぞ、イオリ様。
一度お休み下さい。」
「うわ。
美味しそうですね。
有難うございます。」
連絡するのをやめて、イオリは嬉しそうにフルーツに手を伸ばした。
「ウフフ。
相変わらず、イオリ様は豪胆ですね。」
リルラが笑いながら戻ってくると、タージ・ラバンは冷や汗を拭いながら小声で問いかけた。
「今の、本当にアースガイル国王なの?」
「そうですよ。
本物のアルフレッド・アースガイル国王と宰相グレン・ターナー侯爵閣下です。
あの指輪で会話できる人間は限られています。
国王とポーレット公爵閣下のみです。」
楽しげに話すリルラをタージ・ラバンは伺うように見上げた。
「それをなんでリルラさんが知ってるの?
しかも、あちらも君を知ってるようだったけど。」
疑問に思うのは当然の事だった。
「イオリ様の下にいると、あり得ない事が当たり前の様に降りかかってくるのですよ。
・・・これ、序の口ですよ?」
気遣うようなリルラにタージ・ラバンはギョッとしてよろけた。
「旦那様。
まだ、侯爵様の御前です。
倒れるのは屋敷を後にしてからにしてください。」
背中を支えるユーフの声にタージ・ラバンはハッとして姿勢を正した。
「後で詳しく!」
顔を歪めて声を落としたタージ・ラバンにリルラは澄まし顔で微笑んで首を傾げた。
「これ以上、特別話す事もないですけど。」
「そんな事あるか!
そりゃ、グラトニーが放っておかない訳だわ・・・。」
領主と商人達の面会はとんでもない方向に転がっていた。
「・・・ふう。
それでは、これで“カズブール”への采配は私に任された訳だが、ラバンよ。
何か希望はあるのか?」
気持ちを立て直したジュード・ガレーは控えるタージ・ラバンに問いかけた。
「はい。
商人には商人の道理がございます。
“カズブール”は私が対処致します。」
「・・・私には商人ギルドを抑えろというのだな?」
「願いますれば。」
目に力を宿したタージ・ラバンを見つめ、ジュード・ガレーは頷いた。
「分かった。
タージ・ラバン。
ガレーの領民に平穏を取り戻してくれ。」
「ラバン商会の会頭として、タージ・ラバン。
ガレー侯爵様のお言葉に従います。」
領主の承認を得たタージ・ラバンは目の色を変えて部屋を出て行った。
「私も共に努めましょう。
“ホワイトキャビン”は民の味方。
これからデザリアでも商売をさせて頂くのですから。」
リルラはイオリとジュード・ガレーに頭を下げるとタージ・ラバンの後を追っていった。
「さて、後は我々の仕事か。」
ジュード・ガレーの言葉に執事兼家令であるウムラが楽しそうに頷いた。
「はい。久々に騒がしくなりそうです。」
大人達のやる気の脇で、イオリは静かにフルーツを頬張るのだった。
数年分の緊張を使い切ったようだ。
「・・・イオリ殿。
連絡するなら初めに言っておいてくれ。」
「あれ?
アースガイルに連絡するって言いましたよね?」
キョトンとするイオリにジュード・ガレーは脱力する。
「御相手がアースガイル国王とは誰も思わんだろう。
せめてポーレット公爵殿かと思っていたのだ。」
「あぁ。
テオさんでも良かったですね。
それじゃ、テオさんにも・・・。」
「よい!
もう良い!」
慌てている主をサポートするべく、ウムラがイオリにフルーツの盛り合わせを差し出した。
「どうぞ、イオリ様。
一度お休み下さい。」
「うわ。
美味しそうですね。
有難うございます。」
連絡するのをやめて、イオリは嬉しそうにフルーツに手を伸ばした。
「ウフフ。
相変わらず、イオリ様は豪胆ですね。」
リルラが笑いながら戻ってくると、タージ・ラバンは冷や汗を拭いながら小声で問いかけた。
「今の、本当にアースガイル国王なの?」
「そうですよ。
本物のアルフレッド・アースガイル国王と宰相グレン・ターナー侯爵閣下です。
あの指輪で会話できる人間は限られています。
国王とポーレット公爵閣下のみです。」
楽しげに話すリルラをタージ・ラバンは伺うように見上げた。
「それをなんでリルラさんが知ってるの?
しかも、あちらも君を知ってるようだったけど。」
疑問に思うのは当然の事だった。
「イオリ様の下にいると、あり得ない事が当たり前の様に降りかかってくるのですよ。
・・・これ、序の口ですよ?」
気遣うようなリルラにタージ・ラバンはギョッとしてよろけた。
「旦那様。
まだ、侯爵様の御前です。
倒れるのは屋敷を後にしてからにしてください。」
背中を支えるユーフの声にタージ・ラバンはハッとして姿勢を正した。
「後で詳しく!」
顔を歪めて声を落としたタージ・ラバンにリルラは澄まし顔で微笑んで首を傾げた。
「これ以上、特別話す事もないですけど。」
「そんな事あるか!
そりゃ、グラトニーが放っておかない訳だわ・・・。」
領主と商人達の面会はとんでもない方向に転がっていた。
「・・・ふう。
それでは、これで“カズブール”への采配は私に任された訳だが、ラバンよ。
何か希望はあるのか?」
気持ちを立て直したジュード・ガレーは控えるタージ・ラバンに問いかけた。
「はい。
商人には商人の道理がございます。
“カズブール”は私が対処致します。」
「・・・私には商人ギルドを抑えろというのだな?」
「願いますれば。」
目に力を宿したタージ・ラバンを見つめ、ジュード・ガレーは頷いた。
「分かった。
タージ・ラバン。
ガレーの領民に平穏を取り戻してくれ。」
「ラバン商会の会頭として、タージ・ラバン。
ガレー侯爵様のお言葉に従います。」
領主の承認を得たタージ・ラバンは目の色を変えて部屋を出て行った。
「私も共に努めましょう。
“ホワイトキャビン”は民の味方。
これからデザリアでも商売をさせて頂くのですから。」
リルラはイオリとジュード・ガレーに頭を下げるとタージ・ラバンの後を追っていった。
「さて、後は我々の仕事か。」
ジュード・ガレーの言葉に執事兼家令であるウムラが楽しそうに頷いた。
「はい。久々に騒がしくなりそうです。」
大人達のやる気の脇で、イオリは静かにフルーツを頬張るのだった。
応援ありがとうございます!
97
お気に入りに追加
9,840
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる