続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜パライソの森⒉〜

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 討ち取られた“エルフの里の戦士”は膝をついて倒れた。

「ハァハァハァ。」

 全身で息をするハルラスの肩をヒューゴが叩いて労う。

「見事だ。」

 倒れた“エルフの里の戦士”を覗き込み辛うじて息をしている事を確認したスコルとパティがヒューゴに親指を立てた。
 
「悪人とは言え、子供に人殺しはさせられない。
 アイツは手当をして拘束する。
 ルーシュピケで手が負えなければ、デザリアに連絡すれば何とかしてくれるはずだ。」

 “エルフの里の戦士”をツンツンとしている双子の獣人の子供を見て、ハルラスは頷いた。

「君達のお陰で倒せたんだ。
 従うよ。
 にしても、まさかシールドを壁扱いするとは思わなかったよ。」

 ハルラスの感想にヒューゴはニヤリとした。

「シールドなんて敵にしたら透明な壁だろう?
 って、事で。」

 ヒューゴは大剣を掴むと、我関せずと木にもたれ掛かっていた、もう1人の“エルフの里の戦士”をギョロッと睨んだ。
 少し離れた場所には獣人2人のガーディアンが倒れているのが確認できる。

「今の戦い、体を張ってなくて体力が余ってるんだ。
 相手してくれよ。」

 ヒューゴの殺気に当てられたのだろう、“エルフの里の戦士”は剣を構えた。

「ヒューゴ!」
「パティも!」

 駆け寄ってくる双子との間にヒューゴはシールドを張った。

「アイツの相手は俺がする。
 お前らは、向こうの怪我を負ったガーディアンを助けてやれ。
 アンタも、奥さんに顔を見せてやれよ。」

 ハルラスはヒューゴの底知れない強さを感じていたが、“エルフの里の戦士”の能力の高さも知っていた。
 
「1人で戦うのか?」

「あぁ、俺は自分の力量を知っているんでね。
 勝てない相手じゃない。」

 ヒューゴは振り返ると双子に拳を突きつけた。

「負けない?」

 スコルの問いかけにヒューゴはニカっと笑った。

「あぁ。
 俺だって大丈夫さ。」

「分かった。
 パティ、行こう。
 エルフのおじさんも手伝って。」

 スコルとパティは倒れているガーディアンの元に向かった。
 慌てたのはハルラスだった。

「ほっ本当に大丈夫なのかい?」

「うん、ヒューゴが大丈夫って言ったから大丈夫。」

 淡々としているスコルにハルラスは戸惑っている。
 すると、珍しくパティが気を遣った。

「みんなイオリにばかり期待するけど、ヒューゴも強いの。
 だって、Sランクの冒険者だもん。
 ・・・ルーシュピケに冒険者ギルドないから分からない?」

 心配そうに眉を寄せるパティの頭をハルラスは撫でた。

「いいや、私も別の国に冒険者をしてた事があるから分かるよ。
 ・・・そうか、Sランク冒険者だったのか。
 野暮だったな。」

 双子は顔を見合わせてニコッと笑った。

「いつも、オレ達を庇って戦うから欲求不満なんじゃない?
 ヒューゴを信じてよ。」

「分かったよ。
 仲間を助けてくれて有難う。」

 走っていく3人を見送ると、ヒューゴは剣を構えたままの“エルフの里の戦士”を見据えた。

「待ってくれたのか?
 それとも、怖くて体が動かないか?」

 ヒューゴが1歩1歩近づくと、“エルフの里の戦士”が剣を握る手に力を込めるのが分かる。

「お前達は仲間と共闘する事もなければ、倒れても心配する事も無いんだってな。」

 “エルフの里の戦士”は拘束されている同胞に視線を向けると、うんざりした顔で唾を吐いた。

「脆弱なお前達に負ける未熟者は我らが光、ダークエルフ・ルミエール様の一助にもならん邪魔者だ。
 役立たずに心配は無用だ。」

 それを聞いたヒューゴの顔に憤怒の表情が浮かんだ。

「・・・命の重さも知ろうとしない蛆虫野郎が。」

 パライソの森におけるヒューゴの戦いが始まる。
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