続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜パライソの森⒉〜

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「・・・蛆虫野郎が。」

 とてもじゃないが、妹には聞かせられない言葉だった。 

 ヒューゴの妹のニナは親に見捨てられた可哀想な子供だった。
 家を離れていたヒューゴと出会った時には声を無くしていた小さな妹。
 そのニナも今では笑い声を上げたり、我儘を言ったりもするようになった。
 洗浄魔法使えなかった幼女が今では兄である自分の得意なシールドを魔法で自在に使いこなしている。
 
 苦労を背負い込んでいた妹には綺麗な世界だけを見せてやりたかった。
 優しい世界だけを見せてやりたかった。
 奴隷商品としての部屋ではない、広い世界を知って欲しかった。

 自分達を家族と言ったイオリは特別な男だった。
 イオリと共に旅をしてきた。

「お前達の所為で・・・・。」

 ヒューゴは“エルフの里の戦士”に怒りのままに叫んだ。

「世界が綺麗事だけじゃねーって、妹に知られたじゃねーか!!」

 最早、八つ当たりだった。

 ヒューゴは大剣を構えると薙ぎ払った。

バチンッ!!

 破裂音と共に空気が切り裂かれる。
 その衝撃は“エルフの里の戦士”にも襲いかかった。

 身を守った“エルフの里の戦士”の両腕が切り裂かれた。

「小癪なぁ!」

 痛みなど無視の“エルフの里の戦士”はヒューゴに向かって、突進していく。

 大きな武器は威力こそあれ、スピードが遅い事が弱点だ。
 “エルフの里の戦士”もそれが分かっているのだろう。
 ヒューゴが次のモーションに入る前に攻撃を仕掛けてきたのだ。

「我はダークエルフ・ルミエール様の恩恵を得た戦士!
 脆弱な人族風情が偉そうに我の相手が務まると思うな!」

 “エルフの里の戦士”はヒューゴの首を狙って振りかぶった。

「口を開けば、ダークエルフ、ダークエルフって、お前等それ以外ないのか?
 何百年だか何千年だか前のおっさんが好きな変態か?」

 ヒューゴは“エルフの里の戦士”の腹を蹴り上げると、バランスを崩した敵の頭を抱えて投げ飛ばした。

「グッ!」

 地面に叩きつけられた“エルフの里の戦士”は立ち上がるとカチカチと歯を鳴らした。

「ルミエール様を侮辱し我らを馬鹿にしたな人族がぁ!!」

 それまでとは違い、まるで本能だけが丸出しになった“エルフの里の戦士”にヒューゴは再び大剣を構えた。

「我らの力を見せてやろう。
 我らに比べれば、お前の魔力など微々たるもの。
 我の剣に火を纏えば、森だけじゃではなく、お前も消し炭だ。」

「阿呆が。
 俺のシールドで火は森に回らない。
 そして、お前も同じように燃えるぞ。」

 四角く囲まれたシールドを目にし“エルフの里の戦士”はニヤリと笑った。

「それでもお前は燃える。
 お前の仲間達も殺して、ゆっくりと森を燃やしてやろう。」

 “エルフの里の戦士”は自身の剣に渦のような火を纏わせた。

「朽ちろッ!
 脆弱な人間がぁぁぁ!!」

 剣に纏っていた渦のような火が膨張し、大きな塊となりヒューゴに振り落とされた。

「ダメよ!!
 逃げなさい!」

 背後から悲鳴が聞こえた気がした。
 それでもヒューゴは一歩も引かなかった。

「俺も火属性なんだよ。
 魔力は少なくとも、俺にはコッチがある。」

 ヒューゴは腕に填めていた腕輪を摩るとニヤリとした。


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