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旅路〜パライソの森⒉〜
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夫が敵を仕留めたのを見届けたエフェリアは喜び、安堵していた。
体力も回復してきたのを確認し自分も戦いに戻ろうとした。
「坊や達。
有難う。
私は夫の元に向かうわ。」
ナギに声をかけたエフェリアは再び、小瓶を差し出された。
「向こうに怪我人がいたら飲ませてあげて下さい。」
「・・・何から何まで有難う。」
エフェリアはナギに礼を言った。
「良いんです。
イオリなら同じ事をするから。」
ニコッと笑うナギを見つめて、エフェリアは未だに木の上にいる真っ黒な人族の青年に目をやった。
ーーー彼は戦わないのかしら?
疑問に思っていると、「あっ。兄様。」という少女の声に反応して振り返った。
大きなシールドの空間を作り出す小さい身の内に、どれほどの魔力を溜め込んでいるのだろうかと、恐れるほどに驚かされていたエフェリアはニナの視線の先を見つめた。
そこには人族の若者が1人で敵と対峙していた。
「えっ・・・彼が貴方の兄なの?」
驚いいるエフェリアにニナはニッコリとした。
「はい。ニナの兄様です。」
ーーー人族が1人でなんて危険だわ!
助けに行かないと!
慌てるエフェリアに対して子供達は余裕があるようだった。
「大丈夫です。
ヒューゴも強いから。」
ナギは負傷した獣人を連れてくる双子を確認して手を振っている。
「でも・・・。」
戸惑うエフェリアの前で最悪な光景が繰り広げられた。
“エルフの里の戦士”が剣に火を纏い、膨大になった火の塊で人族の若者に襲いかかったのだ。
「ダメよ!!
逃げなさい!」
思わず叫んだエフェリアの声にも虚しく、若者は火に包まれてしまった。
「なんて事!
助け出さなきゃ!」
それを、猫の獣人の少年であるラックが止めた。
「ニナとナギが慌ててないから、大丈夫。
それよりも巻き込まれたら怪我しちゃうよ。」
飄々と火の塊を見つめるラックにエフェリアは驚いた。
「・・・でも。
・・・えっ?」
エフェリアは信じらなかった。
火だるまになったはずの若者が光を放っていた。
「ヒューゴはポーレットでSランクの称号を得た冒険者です。
二つ名は“イルミナーレ”照らす者。
火属性を持ち、シールドのスキルを持ったヒューゴが火の塊に負けるはずがない。」
得意気に話すナギの言葉を体現するかのように、光り輝く金色の鎧を身に纏ったヒューゴは悠然と立っていた。
消し炭にするつもりで攻撃を繰り出した“エルフの里の戦士”は唖然としている。
「悪いな。
お前がどんなに魔法が得意でも、どこぞのドワーフの職人が作った、この鎧はビクともしないらしい。」
鎧の中でニヤリと笑うヒューゴに“エルフの里の戦士”は憤怒した。
「・・・ドワーフ如きに我が負けたと言うのか?
笑わせるな!
我らこそが、最強の種族!
全ての生命は我らに傅くべき、弱き存在だ。
多少、我の攻撃に耐えたと言って偉そうに・・・脆弱な人族が!!」
“エルフの里の戦士”が耐えられないとばかりに剣を振り回し、鎧ごとヒューゴを貫くべき走り込んできた。
「・・・阿呆が。」
ヒューゴは瞬時に鎧を解くと“エルフの里の戦士”に手を掲げた。
「仲間の戦いを見ていないから、気にしていないから、敵の特性を理解せずに戦うんだ。
さっきから、俺の得意分野を見せていたぞ。
シールド!!」
声を張り上げると、ヒューゴのシールドが“エルフの里の戦士”を包み込んだ。
「俺のシールドは仲間を守るだけじゃない。
お前みたいな敵を弾く障壁だ。
囲い込んでしまえば、お前の動きを止めることなんて訳ないさ。」
四角いシールドに囲まれた“エルフの里の戦士”は自身が囚われた状況に、やっと気づくのだった。
体力も回復してきたのを確認し自分も戦いに戻ろうとした。
「坊や達。
有難う。
私は夫の元に向かうわ。」
ナギに声をかけたエフェリアは再び、小瓶を差し出された。
「向こうに怪我人がいたら飲ませてあげて下さい。」
「・・・何から何まで有難う。」
エフェリアはナギに礼を言った。
「良いんです。
イオリなら同じ事をするから。」
ニコッと笑うナギを見つめて、エフェリアは未だに木の上にいる真っ黒な人族の青年に目をやった。
ーーー彼は戦わないのかしら?
疑問に思っていると、「あっ。兄様。」という少女の声に反応して振り返った。
大きなシールドの空間を作り出す小さい身の内に、どれほどの魔力を溜め込んでいるのだろうかと、恐れるほどに驚かされていたエフェリアはニナの視線の先を見つめた。
そこには人族の若者が1人で敵と対峙していた。
「えっ・・・彼が貴方の兄なの?」
驚いいるエフェリアにニナはニッコリとした。
「はい。ニナの兄様です。」
ーーー人族が1人でなんて危険だわ!
助けに行かないと!
慌てるエフェリアに対して子供達は余裕があるようだった。
「大丈夫です。
ヒューゴも強いから。」
ナギは負傷した獣人を連れてくる双子を確認して手を振っている。
「でも・・・。」
戸惑うエフェリアの前で最悪な光景が繰り広げられた。
“エルフの里の戦士”が剣に火を纏い、膨大になった火の塊で人族の若者に襲いかかったのだ。
「ダメよ!!
逃げなさい!」
思わず叫んだエフェリアの声にも虚しく、若者は火に包まれてしまった。
「なんて事!
助け出さなきゃ!」
それを、猫の獣人の少年であるラックが止めた。
「ニナとナギが慌ててないから、大丈夫。
それよりも巻き込まれたら怪我しちゃうよ。」
飄々と火の塊を見つめるラックにエフェリアは驚いた。
「・・・でも。
・・・えっ?」
エフェリアは信じらなかった。
火だるまになったはずの若者が光を放っていた。
「ヒューゴはポーレットでSランクの称号を得た冒険者です。
二つ名は“イルミナーレ”照らす者。
火属性を持ち、シールドのスキルを持ったヒューゴが火の塊に負けるはずがない。」
得意気に話すナギの言葉を体現するかのように、光り輝く金色の鎧を身に纏ったヒューゴは悠然と立っていた。
消し炭にするつもりで攻撃を繰り出した“エルフの里の戦士”は唖然としている。
「悪いな。
お前がどんなに魔法が得意でも、どこぞのドワーフの職人が作った、この鎧はビクともしないらしい。」
鎧の中でニヤリと笑うヒューゴに“エルフの里の戦士”は憤怒した。
「・・・ドワーフ如きに我が負けたと言うのか?
笑わせるな!
我らこそが、最強の種族!
全ての生命は我らに傅くべき、弱き存在だ。
多少、我の攻撃に耐えたと言って偉そうに・・・脆弱な人族が!!」
“エルフの里の戦士”が耐えられないとばかりに剣を振り回し、鎧ごとヒューゴを貫くべき走り込んできた。
「・・・阿呆が。」
ヒューゴは瞬時に鎧を解くと“エルフの里の戦士”に手を掲げた。
「仲間の戦いを見ていないから、気にしていないから、敵の特性を理解せずに戦うんだ。
さっきから、俺の得意分野を見せていたぞ。
シールド!!」
声を張り上げると、ヒューゴのシールドが“エルフの里の戦士”を包み込んだ。
「俺のシールドは仲間を守るだけじゃない。
お前みたいな敵を弾く障壁だ。
囲い込んでしまえば、お前の動きを止めることなんて訳ないさ。」
四角いシールドに囲まれた“エルフの里の戦士”は自身が囚われた状況に、やっと気づくのだった。
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