続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

文字の大きさ
454 / 784
旅路〜パライソの森⒉〜

462

しおりを挟む
「クソッ!
 出せ!
 あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 シールドの中で暴れる“エルフの里の戦士”をヒューゴはつまらなそうに見つめていた。

「出せと言われて出す奴がいるか。」

 怒りで顔を歪ませる“エルフの里の戦士”に近づき、勝負はついたとニヤリと笑った。

「汚い手を使いよって!
 この脆弱な人族がぁぁ!」

 唾を飛ばしながら罵詈雑言を並べる敵にヒューゴは面倒臭そうに頭をかいた。

「自分の得意を使って何が悪い。
 随分と優しい相手と戦ってきたんだな。
 そろそろ、子供達の教育に悪いな。
 耳障りだ。」

 “エルフの里の戦士”は眉間に皺を寄せた。

 ーーー奴とて、シールド内の我に攻撃を仕掛けらないはず。
    ならば、シールドが外れた一瞬を狙えば・・・。

 反撃の隙間がある事に内心笑っていた“エルフの里の戦士”の考えを、ヒューゴはすぐに破る事になる。

「考えてる事は分かるが、残念だな。
 俺のシールドは俺の自在に作り出される。
 だから、敵は閉じ込めても俺の大剣は弾かれないんだよ。」

 ヒューゴが振り上げた大剣が“エルフの里の戦士”の視界を覆った。

「クソッ!
 クソッ!
 クソッ!
 我はダークエルフ・ルミエール様の恩恵を得た戦士!
 こんな所で・・・人族なんぞに・・・やられる訳がないのだぁぁぁ!」

「残念だが、おやすみの時間だ。」

ドガーーーン!

 ヒューゴの大剣をモロに喰らった“エルフの里の戦士”は苦しげな顔で意識を失った。

「終わったな。」

 敵が目を覚さないのを確認したヒューゴはシールドの膜を外した。

「1人で冒険者をしていた時はシールドの使い方なんて考えもしなかったな。
 ・・・アイツらのお陰で俺も視野が広がったって事かな。」

 ヒューゴは自分の勝利を喜んでいる妹や双子やナギを見て微笑んだ。


_________

「ヒューゴさんの方は終わったみたいだね。」

 振り返って、頷くヒューゴにイオリは手を上げて微笑んだ。
 すると、別働していたゼンの声がした。
 
『イオリ。イオリ。
 捕まえていい?』

「まーだ。
 こっちが騒がしいからね。」

『じゃあ、早く終わらせてよ。』

 急かしてくるゼンにイオリは苦笑した。

 イオリは今だに木の上で戦いの行方を見つめていた。

 ガーディアン“サバト”も始めこそ“エフルの里の戦士”の急襲に態勢を崩していたが、数人で1人を相手する事でバランスをとっている。
 
 加えて、イドリアル達“ペンプティ”が合流した事で残りの4人の“エルフの里の戦士”を追い詰めている。

 しかし、イオリは知っていた。
 
 追い詰められた“エルフの里の戦士”が最終手段をとる事を・・・。

「もう、好きにはさせないさ。」

 イオリはスナイパーライフルを構えると銃口を戦いで雑踏としている集団に狙いを定めた。




 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

異世界でトラック運送屋を始めました! ◆お手紙ひとつからベヒーモスまで、なんでもどこにでも安全に運びます! 多分!◆

八神 凪
ファンタジー
   日野 玖虎(ひの ひさとら)は長距離トラック運転手で生計を立てる26歳。    そんな彼の学生時代は荒れており、父の居ない家庭でテンプレのように母親に苦労ばかりかけていたことがあった。  しかし母親が心労と働きづめで倒れてからは真面目になり、高校に通いながらバイトをして家計を助けると誓う。  高校を卒業後は母に償いをするため、自分に出来ることと言えば族時代にならした運転くらいだと長距離トラック運転手として仕事に励む。    確実かつ時間通りに荷物を届け、ミスをしない奇跡の配達員として異名を馳せるようになり、かつての荒れていた玖虎はもうどこにも居なかった。  だがある日、彼が夜の町を走っていると若者が飛び出してきたのだ。  まずいと思いブレーキを踏むが間に合わず、トラックは若者を跳ね飛ばす。  ――はずだったが、気づけば見知らぬ森に囲まれた場所に、居た。  先ほどまで住宅街を走っていたはずなのにと困惑する中、備え付けのカーナビが光り出して画面にはとてつもない美人が映し出される。    そして女性は信じられないことを口にする。  ここはあなたの居た世界ではない、と――  かくして、異世界への扉を叩く羽目になった玖虎は気を取り直して異世界で生きていくことを決意。  そして今日も彼はトラックのアクセルを踏むのだった。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!

ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。 ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!? 「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」 理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。 これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!

ボクは転生者!塩だけの世界で料理&領地開拓!

あんり
ファンタジー
20歳で事故に遭った下門快斗は、目を覚ますとなんと塩だけの世界に転生していた! そこで生まれたのは、前世の記憶を持ったカイト・ブラウン・マーシュ。 塩だけの世界に、少しずつ調味料を足して…沖縄風の料理を考えたり、仲間たちと領地を発展させたり、毎日が小さな冒険でいっぱい! でも、5歳の誕生日には王都でびっくりするような出来事が待っている。 300年前の“稀人”との出会い、王太子妃のちょっと怖い陰謀、森の魔獣たちとの出会い…ドキドキも、笑いも、ちょっぴり不思議な奇跡も、ぜんぶ一緒に味わえる異世界ローファンタジー! 家族や周りの人達に愛されながら育っていくカイト。そんなカイトの周りには、家族を中心に愛が溢れ、笑いあり、ほっこりあり、ちょっとワクワクする“グルメ&ファンタジーライフ”が今、始まる!

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

処理中です...