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王都 〜王城・デーゾルドの行方〜
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闘技場の舞台へ続く扉を開き、中に入ったイオリ達は辺りを見回した。
「気持ちの良い風景じゃないな。」
ポーレット公爵家騎士団の団長であるアイザックは周囲から見られる不快感を想像し言葉にした。
イオリの目には倒れているブラックパンサーとブラックベアの子供達にしか向けられていない。
ピョンっとイオリの懐から真っ白な毛糸玉が飛び出した。
真っ白な毛糸玉がピョコピョコと走り出すと、イオリも足早に魔獣の子供達の元へ走り寄った。
「ぐぅぅ・・・テメーら。
このまま、ただで済むと思うなよ。」
最初にイオリに額を撃ち抜かれた男が痛みを堪えながら騎士であるアイザックを睨み付けた。
「黙れっ!
国王陛下のお膝元で違法賭博をしていた者達の言葉などを恐れると思うな。」
アイザックが男に怒鳴りつけると、ヒューゴがイオリの後を追うように歩き出し、ついでとばかりに上半身だけを起き上がらせた男の顎を蹴り上げた。
「グアァッ!」
見事気絶した男はアレックスとロジャーが縄で厳重に縛り上げていく。
「さっきの男の証言が本当なら、コイツは比較的責任のある立場のようです。
此処の事を喋らせるのに利用しましょう。」
アレックスの提案にアイザックは頷いた。
そして、一掃されていく闘技場を見渡し苦渋な顔をした。
「馬鹿共の処理は終えたとはいえ・・・。
問題はあっちだな。」
アイザックの視線の先にはしゃがむイオリの姿があった。
少し離れて倒れていたブラックパンサーとワイルドベアの子供達を並べると、イオリは2匹の頬を優しく撫でた。
「遅くなって、ごめんね。」
「クゥ~ン。」
イオリの言葉に真っ白で小さな狼のゼンが悲しそうに2匹の頭をペロペロと舐めた。
「・・・イオリ。」
ヒューゴが声を掛けるとイオリは首をブンブンと横に振った。
「ソルが・・ソルがいてくれたら・・・この子達の痛みなんて直ぐに取り除いてくれるのに。
俺じゃ・・・俺じゃこの子達を助けられない。
こんなに気づいてるのに。
こんなに頑張って生きているのに!」
イオリは分かっていた。
今、回復の魔法が使える者を連れてきたとしても、目の前の小さな魔獣の命を救える可能性は少ない。
特にブラックパンサーの子供は虫の息だ。
「連れて帰るって約束したのに・・・。」
悲しむイオリの背をヒューゴは見つめるだけだった。
何処の誰が魔獣の命が散る瞬間に涙を流す事があるのだろう。
人間と魔獣は互いに相入れない存在だ。
捕食するものとされる者。
討伐する者とされるもの。
イオリとて魔獣の命を狩る。
だが、イオリにとって全ての命が自然の中で育まれたものであり無情に排除されて良いものではなかった。
目の前の小さな命は自然世界で弱肉強食の摂理の上で負けたのか?
いいや、人間の娯楽という不条理に付き合わされて尽きようとしているのだ。
「ごめん。ごめん。ごめん。」
「イオリ。
えっ・・・イオリ?」
謝り続けるイオリにかける言葉がなく佇むヒューゴは自分の目を疑う事になる。
悲しみに暮れるイオリの胸が真っ赤な炎を灯った。
「気持ちの良い風景じゃないな。」
ポーレット公爵家騎士団の団長であるアイザックは周囲から見られる不快感を想像し言葉にした。
イオリの目には倒れているブラックパンサーとブラックベアの子供達にしか向けられていない。
ピョンっとイオリの懐から真っ白な毛糸玉が飛び出した。
真っ白な毛糸玉がピョコピョコと走り出すと、イオリも足早に魔獣の子供達の元へ走り寄った。
「ぐぅぅ・・・テメーら。
このまま、ただで済むと思うなよ。」
最初にイオリに額を撃ち抜かれた男が痛みを堪えながら騎士であるアイザックを睨み付けた。
「黙れっ!
国王陛下のお膝元で違法賭博をしていた者達の言葉などを恐れると思うな。」
アイザックが男に怒鳴りつけると、ヒューゴがイオリの後を追うように歩き出し、ついでとばかりに上半身だけを起き上がらせた男の顎を蹴り上げた。
「グアァッ!」
見事気絶した男はアレックスとロジャーが縄で厳重に縛り上げていく。
「さっきの男の証言が本当なら、コイツは比較的責任のある立場のようです。
此処の事を喋らせるのに利用しましょう。」
アレックスの提案にアイザックは頷いた。
そして、一掃されていく闘技場を見渡し苦渋な顔をした。
「馬鹿共の処理は終えたとはいえ・・・。
問題はあっちだな。」
アイザックの視線の先にはしゃがむイオリの姿があった。
少し離れて倒れていたブラックパンサーとワイルドベアの子供達を並べると、イオリは2匹の頬を優しく撫でた。
「遅くなって、ごめんね。」
「クゥ~ン。」
イオリの言葉に真っ白で小さな狼のゼンが悲しそうに2匹の頭をペロペロと舐めた。
「・・・イオリ。」
ヒューゴが声を掛けるとイオリは首をブンブンと横に振った。
「ソルが・・ソルがいてくれたら・・・この子達の痛みなんて直ぐに取り除いてくれるのに。
俺じゃ・・・俺じゃこの子達を助けられない。
こんなに気づいてるのに。
こんなに頑張って生きているのに!」
イオリは分かっていた。
今、回復の魔法が使える者を連れてきたとしても、目の前の小さな魔獣の命を救える可能性は少ない。
特にブラックパンサーの子供は虫の息だ。
「連れて帰るって約束したのに・・・。」
悲しむイオリの背をヒューゴは見つめるだけだった。
何処の誰が魔獣の命が散る瞬間に涙を流す事があるのだろう。
人間と魔獣は互いに相入れない存在だ。
捕食するものとされる者。
討伐する者とされるもの。
イオリとて魔獣の命を狩る。
だが、イオリにとって全ての命が自然の中で育まれたものであり無情に排除されて良いものではなかった。
目の前の小さな命は自然世界で弱肉強食の摂理の上で負けたのか?
いいや、人間の娯楽という不条理に付き合わされて尽きようとしているのだ。
「ごめん。ごめん。ごめん。」
「イオリ。
えっ・・・イオリ?」
謝り続けるイオリにかける言葉がなく佇むヒューゴは自分の目を疑う事になる。
悲しみに暮れるイオリの胸が真っ赤な炎を灯った。
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