続々・拾ったものは大切に大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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ダグスク 〜出発までの〜

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 当主であるオーウェン・ダグスクの背後には騎士団長であるレイナードが立ち、右側には冒険者ギルドのギルドマスター・ソフィアンヌ、その隣にサブマスター・ブルックがゆったりとした椅子に座っていた。

 向かいの左側、オーウェンにもっとも近い位置には初めて見る男性がおり、商人ギルドのギルドマスターのベントレーと名乗った。
 そして、その隣にはグラトニー商会の支部長であるカイ・グラトニーがメガネをクィッと上げて笑顔で会釈をしてくれた。

「イオリさんから昨日聞いた話を皆に共有したんですよ。」

 ダグスク侯爵邸に集まったのは、オーウェンの治世を共に守ために協力してメンバーだそうだ。

「革命軍の情報ですね?」

 事は民間にも影響を及ぼすのだ。
 ここに集められたメンバーほど、情報には敏感なのだろう。

「恐らく、冒険者の中にも革命軍に身を置く者がいるのでしょうね。
 これほど、他国で動きやすい肩書きはないもの。」

 淑女らしからぬ舌打ちをするソフィアンヌに夫であるレイナードが苦笑している。

「それは商人も同じでしょう。
 エナ婆さんの所のトッツとやらも、その為に声をかけられたのでしょうから。」

 仕事をして、身の保障のある者達ほど信用されて様々な場所に行きやすい。
 
 商人ギルドのベントレーは険しい顔で唸っている。

 他人の信用を利用しようとしているやり方に腹が据えかねる。

 そう言いたいようだ。

「一度、冒険者ギルドでも商人ギルドでも洗い流した方が良いでしょうか?」

 問いかけるベントレーにオーウェンは首をゆっくりと振った。

「そうなれば、周囲は疑心暗鬼になって騒ぎも大きくなるでしょう。
 隣にいる者を信頼出来ないなんて事態が起こればダグスクのみならずアースガイル国が混乱に陥ります。
 幸いな事に現在はアースガイル国内は革命軍の標的になっていません。
 疑うよりも、例え革命軍が紛れていようと働く彼等をサポートした方が結果的に問題も起こりずらいのはないでしょうか。」

 オーウェンの言葉にベントレーは頷いた。

「ただし、他国からやって来た者達の情報はこれまで以上に細やかに願います。
 このダグスクは海に面す貿易の要。
 我々が乱れる訳にはいきません。」

 これには冒険者・商人の両ギルドマスターが了承した。

「で?
 俺達が呼ばれたのは何でかな?」

 大人達の話を興味なさげに聞いていたロジャーが手を上げて問いかける。

 空気を読もうとすらすないニコニコ顔のロジャーにアレックスが肘で小突くが当の本人は笑うばかりだ。

「イオリさん達と一緒にデザリアを目指してほしい。」

 そう言うオーウェンは口元は微笑んでいても目は笑っていなかった。

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