続々・拾ったものは大切に大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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帰ってきた愛し子

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 ポーレット公爵邸のリビングでは、子供達の矢継ぎ早な話をイオリがニコニコと聞いていた。

 ふとした時にイオリは右目に手をやった。

「痛むのか?」

 心配そうな顔で覗き込んできたのはヴァルトだった。

「いいえ。
 まだ、この眼帯が慣れないだけです。」

 柔かに話すイオリには、嘗てと大きいく違う事があった。


 美しかった青い右目は失われ、強靭的だった身体能力もなくなった。

 以前手放す事なかったスナイパーライフルと2丁の拳銃、そして便利だった腰バックのインベントリや収納していた道具まで消失したのだ。

 その理由をイオリは「リュオン様に返した。」と何でもない事の様に皆に伝えた。

「まぁ、有難い事に体自体は以前と変わりなくて問題ないんですけど、流石に今までの様に魔獣を相手に出来ないし、大きな荷物を運ぶ事も難しいですね。」

 驚く周囲に反して、イオリはどこ吹く風のようにゼンを撫でた。

 そう、そのゼンまでもがフェンリルとしての能力を失い。
 白い子狼として戯れついている。
 
 大きく変化する事もないし、風魔法や水魔法を操る事もない。
 何よりも話す事すら出来ずにいる。

 イオリに言わせれば分かった上で全てを手放したという。
 絶対神の恩恵を失っても尚、ダークエルフと対峙したイオリにテオルド以下、ポーレット公爵家の面々は頭が下がる思いだった。

 ついには「役に立たないからSランク冒険者の資格も返上する。」と言う始末のイオリに悲しんだものだった。
 
 そんな彼等を救ったのは子供達だった。
 力を失ったイオリに対しても変わらぬ愛情を示した子供達は、イオリが働けないのなら自分達が働くと言い。
 楽しそうに笑ったのだ。

 彼等にとってイオリは兄であり親であった。
 これまでも互いに足りない事は助け合ってきたし、それはこれからも変わる事はない。

 今までイオリに支えられてきた分、今度は自分達がイオリを支えるの事など彼等にとって当たり前の事だった。

 大人達の心配を飛び越える子供達は相変わらずだった。

 そして、それはイオリも同じだった。

「冒険者をやめる気はないですよ。
 やれる事をやります。
 体の能力は無くなっても、解体作業は出来るし、料理だって出来ますから。
 何とでもなりますよ。
 この世界に来て、俺が手に入れたのはリュオン様が与えてくれた恩恵ばかりじゃない。
 人として生きるのに必要なものは揃っています。」

 イオリは5年前と変わらぬニコっと笑顔で周囲に安心を与えた。

「その為には、もう少しリハビリが必要ですけどね。」


 あの時と同じように、失った瞳を摩るイオリにヴァルトは優しく微笑んだ。

 弟の様に可愛がっている男の第二の人生をヴァルトは静かに見守ると誓った。

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