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帰ってきた愛し子
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「聞いてくださいよ。
ギルマスは諦めが悪いんです。」
不貞腐れるイオリにヴァルトとヒューゴは苦笑した。
目覚めた時に宣言したようにイオリは本当にSランク冒険者の資格を返上しようとした。
しかしそれは冒険者ギルドのマスターであるヨルマにアッサリと拒否されたのだ。
「Sランクの称号は悪事を働いた以外は返上できない。
引退した老獪も、その栄誉を持ったまま生きているのだから、お前もそのまま持っていろ。」
それがギルマスの言い分である。
世界を救った英雄のクセに国を挙げての栄誉を賜る気のないイオリに対する、彼なりの感謝なのだろうが、当のイオリにとっては面倒な称号である。
ギルマスとて、そんなイオリの心情は知っている上で身を守る為に必要だと言って憚らないのだ。
会う度に巻き起こる論争はギルドの職員達の笑いの種になっている事に2人は気づいていない。
「まぁ、ギルマスもお前を想っての事だろう?
Sランクの称号があれば、様々な恩恵が得られるんだ。
これから、皆での旅が再開されれば大いなる助けになるさ。」
ヴァルトの正論にイオリは顔を顰めた。
「それは分かってるんですけど・・・。」
「見合った仕事が出来ていない心苦しさがあるんだろう。
分からなくもないが、今までの功績の褒美と思えばいい。」
変なところで真面目を発揮するイオリの心情を慮って伝えるヒューゴにイオリはコクンと頷いた。
まだ不満そうなイオリにヒューゴは苦笑しながらイオリの斜めにかけ鞄を指差した。
「それ、カサドさんがくれたって?」
今まで愛用していたリュオンから送られた腰バックは手元にもうない。
必要だろうと用意してくれたのは武防具屋のカサドだった。
「これ、インベントリ機能がついてて便利なんですよ。」
不機嫌そうだった顔を笑顔に変えてイオリは斜め掛け鞄を撫でた。
そんなイオリにヒューゴは優しく微笑んだ。
ヒューゴもカサドが『俺は武防具専門なんだがな。』とブツクサ言いながら、頼まれもしないのにイオリに必要な道具を作っては鍛冶場に篭っているのを知っている。
イオリの右目を覆っている眼帯もカサドの作品だ。
体力を失ったイオリが少しでも身を守れる様にと防護の加護を付与したと聞いている。
失われた視力の代わりとなる魔道具を開発しようとしている事も知っているが、完成するまでイオリには内緒だと約束させられている。
何だかんだとイオリを気に入り、面倒見の良いカサドはイオリを放っておく事が出来ないのだろう。
この街には、そんな人達が沢山いる。
今では、多くの者がイオリを街の良き若者として見守ってるのだ。
ギルマスは諦めが悪いんです。」
不貞腐れるイオリにヴァルトとヒューゴは苦笑した。
目覚めた時に宣言したようにイオリは本当にSランク冒険者の資格を返上しようとした。
しかしそれは冒険者ギルドのマスターであるヨルマにアッサリと拒否されたのだ。
「Sランクの称号は悪事を働いた以外は返上できない。
引退した老獪も、その栄誉を持ったまま生きているのだから、お前もそのまま持っていろ。」
それがギルマスの言い分である。
世界を救った英雄のクセに国を挙げての栄誉を賜る気のないイオリに対する、彼なりの感謝なのだろうが、当のイオリにとっては面倒な称号である。
ギルマスとて、そんなイオリの心情は知っている上で身を守る為に必要だと言って憚らないのだ。
会う度に巻き起こる論争はギルドの職員達の笑いの種になっている事に2人は気づいていない。
「まぁ、ギルマスもお前を想っての事だろう?
Sランクの称号があれば、様々な恩恵が得られるんだ。
これから、皆での旅が再開されれば大いなる助けになるさ。」
ヴァルトの正論にイオリは顔を顰めた。
「それは分かってるんですけど・・・。」
「見合った仕事が出来ていない心苦しさがあるんだろう。
分からなくもないが、今までの功績の褒美と思えばいい。」
変なところで真面目を発揮するイオリの心情を慮って伝えるヒューゴにイオリはコクンと頷いた。
まだ不満そうなイオリにヒューゴは苦笑しながらイオリの斜めにかけ鞄を指差した。
「それ、カサドさんがくれたって?」
今まで愛用していたリュオンから送られた腰バックは手元にもうない。
必要だろうと用意してくれたのは武防具屋のカサドだった。
「これ、インベントリ機能がついてて便利なんですよ。」
不機嫌そうだった顔を笑顔に変えてイオリは斜め掛け鞄を撫でた。
そんなイオリにヒューゴは優しく微笑んだ。
ヒューゴもカサドが『俺は武防具専門なんだがな。』とブツクサ言いながら、頼まれもしないのにイオリに必要な道具を作っては鍛冶場に篭っているのを知っている。
イオリの右目を覆っている眼帯もカサドの作品だ。
体力を失ったイオリが少しでも身を守れる様にと防護の加護を付与したと聞いている。
失われた視力の代わりとなる魔道具を開発しようとしている事も知っているが、完成するまでイオリには内緒だと約束させられている。
何だかんだとイオリを気に入り、面倒見の良いカサドはイオリを放っておく事が出来ないのだろう。
この街には、そんな人達が沢山いる。
今では、多くの者がイオリを街の良き若者として見守ってるのだ。
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