続々・拾ったものは大切に大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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イオリと薬師の交友録

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 今回、イオリが披露したのは唐辛子、オレガノ、クミン、ガーリックをベースに数種類のスパイスを組み合わせたチリパウダーだった。
 忘れていけないのは乾燥させた赤パプリカを粉々にして混ぜ込んだ事だ。

 種類もバラバラに売られ、必要があれば自ら粉末にするのが当たり前となっているスパイスが既に粉末にされて組み合わされた状態で商品となるのは画期的な事だった。

「まったく!
 イオリさんはっ!
 貴方、石鹸や保湿剤に集中していたんじゃないんですかっ!?
 何でいきなり“チリパウダー”なんて商品を思い付くんです?」

 そう文句を言っていたのは“ホワイトキャビン”のバートだった。

「しかも、人前で軽々しく披露して!
 今日までの間に、どれだけの問い合わせが来たと思ってるんです?
 商品自体ないのに対応するこちらの身にもなって下さいよ!」

 ヘラヘラと笑うイオリに怒るバート。
 いつもの光景に周囲の者達は苦笑した。

「因みに、同じような商品だったらカレーの粉末なんかも良いんじゃないですか?」

「ちょっと!!次から次へと面白い話を持ってこないで下さいよ!」

 儲けがあれば飛びつく商人の中において、バートのセリフはよっぽど商人らしくない。

 “ホワイトキャビン”と名付けられた商会を預かるバート。

 イオリから湧き出る品や考えに感銘を受けて、代理で商会を運営する彼の仕事は表に出ている以上に多忙だった。
 
 イオリが生み出した物を商品化させるには製造から生産の過程の管理もしなけらばいけない。
 それだけなら良いが、売り上げの殆どを公共事業に回すと公言している“ホワイトキャビン”の利益を狙う者達は後を経たない。

 イオリが齎す金の卵にあやかろうとする者の対処もバートの仕事の内だ。

 ポーレットでは商人ギルドの協力を得られているが、他領との仕事となれば妨害行為や偽商品の排除にも動かなければいけない。

 今では世界中で“ホワイトキャビン”の旅団が動いている。
 その管理だって簡単ではないのだ。
 
 面倒事を自分に放り投げてくる当人が目の前にいると思えば彼の愚痴も可愛いものだった。

「バートさん。毎度すみません。」

 ニコニコと謝る人たらしのイオリの笑顔にバートは顔を引き攣らせた。

「せめて人前でお披露目しなくても・・・。」

 バートの言葉も最もだった。
 が、あの日のイオリは時間を忘れ、子供達を腹ペコにさせてしまったという負目があった。
 少しは良い所を見せなければと気を早めてしまったのだ。

 バートに申し訳ないと思いながらも、あの日の子供達の笑顔を見れば面目は立ったと満足するイオリだった。

「だから、一番大変なのは私ですよっ!」

 バートの悲鳴はまだまだ終わりそうもない。
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