続々・拾ったものは大切に大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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言葉無き者たちの怒り

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 人間が魔獣の赤ちゃんを連れ去っている。

 イオリは動物や魔獣を狩る。
 その事実は変わらない。

 自分達が生きる為に犠牲にした自然から得る命に敬意を持つ。
 それは、祖父母から受け継いだイオリの覚悟だ。

 それでも彼の中で絶対的なルールがいくつかあった。

 基本的に獲物は食べる分・・・必要な分だけを狩り、依頼以外の戦闘は襲ってきた魔獣だけを相手にする。

 全ての命を刈る・・・即ち絶滅まで追い込めば生態系は変わり魔の森に大きな変化が出来てしまう。
 しれが、どのような形で人間にも不幸が舞い込むかも分からない。

 次世代を生きる子供の魔獣は命を紡ぐ重要な存在だ。
 その貴重な命を狙うなど、イオリにとって信じられない事だった。
 
 イオリはトロールの痛みを理解した。

 ずっとずっと・・・人間がこの地に街を作るより以前から明けない魔の森を見守ってきたトロールだ。

 心優しいトロールが生態系に大きな影響を与えているという事ではない。
 
 ウサギやリスといった小動物との交流を楽しみ、荒ぶる魔獣達の喧嘩を心配そうに見つめ、時には迷い込んだ人間を出口に誘う。

 多くの命が、この明けない魔の森で誕生し、そして多くの命が失われていく。
 その全てを見守ってきたトロールがわざわざイオリに問い掛けているのだ。

 理由なく魔獣が蹂躙され、子供達が攫われているこの現状は正しいのかと。
 
 当然答えは否だった。

 抑え付けられているクラウンを見下ろすイオリの顔は表情を失い、いつもの穏やかな彼とはかけ離れていた。

「動物や魔獣は言葉を発しません。
 自分の感情を伝える為に、彼等は全身で表現してくれます。
 愛おしい。喜び。美味しい。驚き。
 楽しい事。びっくりした事。
 皆さんが思っているよりも、動物や魔獣って感情豊かなんですよ。
 今、ここに集まっている魔獣達の感情が分かりますか?」

 指差すイオリに誘われ、ガンツの仲間がクラウン達の顔を無理やり魔獣達へ向けた。

「俺には怒り、悲しみ、絶望、嫌悪や恐怖が感じ取れます。
 それを生み出したのは貴方達ですか?」

 思わず魔獣達を見た冒険者達にも、不思議と魔獣達の感情が読み取れた。
 もろに視線を受けているクラウン達にはもっと刺激的な感情がブツけられている様だ。
 
 クラウンの仲間の中には耐えられないと泣き出し嘔吐する者までいた。

「俺は些細な不愉快な事などは耳に入らない不精者なんです。
 でも、家族が傷つけられたら絶対に対抗します。
 それこそどんな力を使ってもね。
 それは魔獣達も同じだと思うんです。
 立場や利害関係もないから、彼等の方がシンプルに報復だけを遂行するでしょうね。
 残念だけど、今の貴方達を相手に俺はそれを止める事はないでしょう。
 彼等の家族を奪ったんだ。
 この森の未来を奪ったんだ。
 貴方達に、その覚悟があったのですか?」

「・・・覚悟?」

 押さえつけられ苦しい中、何とか言葉を発したクラウンをイオリは見下ろす。

「命を奪われる覚悟です。」

 イオリは悲しそうに眉を下げると、ギルマスに頷いた。

「放り出せ。」

 ギルマスの無情な言葉にクラウン達は絶望した。
 
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