続々・拾ったものは大切に大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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王都 〜王城・側妃騒動〜

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「ようこそ。」
 
 シェイムレス伯爵夫婦を迎え入れたのは国王ではなく王妃シシリアだった。

「お初にお目にかかります。
 セルパン・シェイムレスに御座います。
 こちらは妻のヘーゼルです。」

 夫が最上級の挨拶をすると、妻ヘーゼルは恭しくカーテシーをする。

「初めましてシェイムレス伯爵。
 ようこそ、夫人。
 どうぞ、大掛になって。
 ターナー侯爵が申しました通り、陛下は暫くしたら参ります。
 お待たせして御免なさいね。」

 王妃シシリアからの謝罪にシェイムレス伯爵は笑顔で首を横に振った。

「国王陛下が国の為にお忙しくされているのは承知しています。
 お気になされませんように。」

「そう言って頂けて良かった。」

 王妃シシリアが微笑むと、まるで周囲に花弁が舞っているかのようだ。

 こんな美しい人にシェイムレス伯爵夫婦は会った事がなかった。

 目尻を下げる伯爵と比べて、心穏やかでなかったのは伯爵夫人であるヘーゼルだった。

 若き頃から評判の美しさを持ち、今でさえ領地に戻れば賛辞を一身に受けるヘーゼルだ。

 しかし、王都には美貌の持ち主など他にも沢山いる。
 社交界で持て囃されるのは桁違いの美貌の持ち主と爵位と財力だった。

 目の前に座る王妃シシリアこそ、その最たる者でありヘーゼルの虚栄心をチクチクと刺激してくる。

「いやはや、こうやって王妃様を間近でお目にかかれる機会に恵まれますとは・・・。
 本当に美しいですな。」

 この夫の空々しい言葉もヘーゼルの勘に触った。

「まぁ、有難う。
 シェイムレス伯爵夫人のお美しさも夜会で耳にしていましたよ。」

 微笑む王妃シシリアの言葉に一瞬嬉しさが込み上げる。
 しかし、目の前の完璧なまでの女性に慰み程度の褒め言葉を貰ってもとヘーゼルの醜い心が疼いている。

 こんな感情すら不敬である事にも気付かない程にヘーゼルは追い込まれていた。

 それもこれも・・・。

「あの、娘は?」

 娘と引き離され、不安定な心はイライラを募らせている。

「あぁ、心配なさらないで。
 庭園で息子達とお茶を楽しんでいる事でしょう。」

 王妃シシリアの優しい微笑みに隣に立っていた宰相グレン・ターナーも礼儀正しく腰を折った。

「はい。
 皇太子殿下、婚約者オーブリー様。
 そして、第二王子殿下ディービット様、婚約者ココ様がお待ちの奥の庭園にご案内しました。」

「まぁ、楽しそう。」

 少女の様にパチパチと手を叩く王妃シシリアと違った反応を見せたのはシェイムレス伯爵夫人であるヘーゼルだった。

「なんて事っ!
 オーブリー様がいらっしゃるのですか?!」

 思わず立ち上がった妻をシェイムレス伯爵が慌てて座らせた。

「声を荒げるな!失礼だぞ。
 落ち着きなさい。」

「でも、貴方・・・。
 私のプティが酷い目にあっているのに!」

 そう叫んだヘーゼルは一瞬で氷漬けにされた様に体を硬直された。

「誰が誰を酷い目にあわせるのです?」

 シェイムレス夫婦が怯えながら見つめる先で、今まで朗らかに優しい笑み浮かべてたのが嘘の様に王妃シシリアが冷え冷えとした表情していた。
 

 
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