溜息だって吐きたくなるわっ!〜100賢人仕込みの龍姫は万年反抗期〜

ぽん

文字の大きさ
14 / 473
皇帝の弟殿下の大いなる溜息

13

しおりを挟む
コツコツコツ  

 聞こえるのは神殿内を歩く3人の足音だけ・・・。

 外の自然の中も静かだったが、神殿の中はもっと静かに感じられた。
 光が届かぬ神殿中は少々薄暗いが困るという程でもない。
 床はタイル張りで歩きやすく、何本もの柱で支えられた天井は想像以上に高かった。

「ここは石畳よりも遥か昔、龍が人との関係を断つ前から存在すると言われています。
 いつ、誰が、どの様に建てたのか私は知りません。
 神殿と呼ばれていますが、言わば龍王様の寝床です。
 他の龍達も滅多には近付きません。」

 アリスに言われてディミトリオ・ハクヤは改めて思い出した。

「そう言えばだが、龍の島だと言うのに龍を此処まで見かけなかったな。」

 ずっと胸にあった疑問を口にするとアリスは頷いた。

「龍王との目通りこそが1番最初にしなければならない事です。
 龍は、そこまで序列を重んじる訳ではありませんが、力関係にはある程度のルールがあります。
 その中でも龍王は別格であり、何よりも優先される存在です。
 ・・・でも、此処まで来るのに龍の目は確かに貴方達に向いていましたよ。
 イタズラ好きの龍達の中にはちょっかいを出したくて堪らない者もいるのです。」

「ならば、外に残してきた3人が危ないのではないか?」

 心配そうなディミトリオ・ハクヤにアリスは首を傾げた。

「・・・大丈夫でしょう。
 それに今頃・・・まぁ、続きは後にしましょう。」

 何とも不安を煽る言葉を最後に残し、アリスはディミトリオ・ハクヤに道を譲った。
 1番前を歩いていたコテツが振り返るとコクンと頷く。

「龍王様の玉座の間に到着した。」

 辿り着いた扉は大きな楕円を描き、龍が円形の取手を咥えている。

 心臓の鼓動が激しく打つ間にノック無しに力一杯に扉を開くコテツにギョッとしたディミトリオ・ハクヤであったが、眩い光が差し込むと慌てていた事すらも忘れて唖然とするしかなかった。

 案内された広々とした部屋には大きな大きな金色と銀色の2匹の龍が鎮座していた。
 
 今や、ロンサンティエ帝国では幻・・・龍など存在しないとまで言われている中、圧倒的な存在感を放つ2匹の龍はキラキラした光の輝きに覆われ、その瞳に写ったディミトリオ・ハクヤを逃そうとしていない。

 アリスだろう。
 ディミトリオ・ハクヤは、後ろから背中を押される力を利用して1歩1歩前に進み出た。
 帝国の王族である気骨からか、次第に心を落ち着かせ自分の力で歩き始めた。

 膝を付き首を垂れるディミトリオ・ハクヤは2匹の龍が目を細めて微笑んだ事に気づかなかった。
 コテツの声が広間に響き割った。

「金龍様。銀龍様。
 ロンサンティエの血筋をお連れしました。
 ディミトリオ・ハクヤ殿。
 こちらに座す金龍様と銀龍様こそが龍族の頂点である龍王様でござします。」

 この日、この時こそが、500年ぶりに龍と人間が合間見えた瞬間だった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【 完 結 】スキル無しで婚約破棄されたけれど、実は特殊スキル持ちですから!

しずもり
ファンタジー
この国オーガスタの国民は6歳になると女神様からスキルを授かる。 けれど、第一王子レオンハルト殿下の婚約者であるマリエッタ・ルーデンブルグ公爵令嬢は『スキル無し』判定を受けたと言われ、第一王子の婚約者という妬みや僻みもあり嘲笑されている。 そしてある理由で第一王子から蔑ろにされている事も令嬢たちから見下される原因にもなっていた。 そして王家主催の夜会で事は起こった。 第一王子が『スキル無し』を理由に婚約破棄を婚約者に言い渡したのだ。 そして彼は8歳の頃に出会い、学園で再会したという初恋の人ルナティアと婚約するのだと宣言した。 しかし『スキル無し』の筈のマリエッタは本当はスキル持ちであり、実は彼女のスキルは、、、、。 全12話 ご都合主義のゆるゆる設定です。 言葉遣いや言葉は現代風の部分もあります。 登場人物へのざまぁはほぼ無いです。 魔法、スキルの内容については独自設定になっています。 誤字脱字、言葉間違いなどあると思います。見つかり次第、修正していますがご容赦下さいませ。

側妃に追放された王太子

基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」 正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。 そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。 王の代理が側妃など異例の出来事だ。 「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」 王太子は息を吐いた。 「それが国のためなら」 貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。 無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

聖女を怒らせたら・・・

朝山みどり
ファンタジー
ある国が聖樹を浄化して貰うために聖女を召喚した。仕事を終わらせれば帰れるならと聖女は浄化の旅に出た。浄化の旅は辛く、聖樹の浄化も大変だったが聖女は頑張った。聖女のそばでは王子も励ました。やがて二人はお互いに心惹かれるようになったが・・・

処理中です...